惟。










それは他愛も無い会話の中で発覚した、ゾロにとってはかなりの重大事実だった。






夕食が終わった席では、ナミとミラとロビンだけが内緒のデザートを振舞われている。
この船では時折あることで、サンジは上手い事それを食欲魔人の船長から隠していた。


だが男連中の中で、ゾロだけはそれを知っていた。

トレーニング後の水分補給にキッチンに向かったときがちょうどそのデザートタイムで、
ミラたちは申し訳無さそうな顔をしたのだが、サンジに堂々と『野郎には無ぇ!』と宣言されたので、
そうか、とあっさり納得してしまったのだった。






この日もゾロがキッチンに足を入れたとき、女性陣はサンジ特製のクリームプリンを味わっていた。



 「美味そうだな」

 「パパ、はい!」



タオルに首にひっかけたゾロが呟くと、ミラはにこにこと笑ってスプーンにすくったプリンを差し出した。

ゾロとナミの娘・ミラは、小さな体をウソップ特製の椅子にちょこんと乗せて、
父親似の緑色の髪を頭の上で二つ結びにして、母親似の愛らしい顔で「サンジさんには内緒」と言って笑った。




 「優しいわね、ミラちゃん」

 「そりゃそうよロビン、私の娘だもん」



そう言ってナミとロビンは楽しげに笑い、ゾロはこっそりとミラに目をやり肩をすくめる。
それから微笑んで、差し出されたプリンをぱくりと食べてサンキュとミラの頭を優しく撫でた。



 「そういや、コックは?」

 「在庫チェックしに行ってるわ」

 「ふーん」



自分で聞いておいて大して興味の無い返事をして、ゾロはコップに水を注いで飲み干した。





 「ナミ、お前今日は海図完成させるヤツがあるとか言ってなかったか?」

 「あ、そうだ!忘れてた! プリンがあまりに美味しくて」



ナミは慌てて、残っていたプリンを食べるスピードを少し速める。
だが一流コックが腕を振るったデザートを味わうことはやめなかった。



 「サンジさんってすごいね、こんなにおいしいプリンとか、お料理とか作れて」

 「本当ね」

 「それに優しいし、強いし!!」



ミラはゆっくりとプリンを食べながら、頬を染め目を輝かせてそう言った。
その言い方に少しひっかかるものを感じつつ、ゾロはコップをシンクに戻した。

ロビンはそんなミラを優しく微笑みながら見つめ、
プリンを食べ終えたナミはごちそうさまと手を合わせたあと、同じように微笑んだ。



 「ミラはサンジくんが大好きなのね」



そう言って立ち上がり、プリンの容器を持ってゾロの隣へと向かいそれをシンクに置く。



 「ゾロ、先に寝てていいから」

 「おぅ」



じゃあねと3人に手を振って、ナミは部屋へと戻るためキッチンから出て行った。






ナミの後姿を見送って、ふとミラへと視線を戻したゾロは娘の顔を見て固まった。




 「……あら」



同じようにミラの表情に気付いたらしいロビンが、楽しそうにクスクスと笑った。


スプーンを握り締めたままのミラは、頭から湯気が出そうなほどに顔を赤くしていた。




 「本当かわいいわ、ミラちゃん」



ロビンが同意を求めるようにゾロへと顔を向け微笑んだが、ゾロは返事をするどころではなかった。
真っ赤なミラと固まるゾロを交互に見やって、ロビンは面白そうだと内心でワクワクしていた。



 「ミラちゃんだって女の子だものね」

 「わ、私……」

 「おかしなことじゃないわよ、だって彼は本当に素敵な人だし」

 「………うん」



母とも姉とも思える優しい笑みをたたえたロビンにそう言われ、ミラは俯きながら囁くような声で答えた。
その返事にゾロがさらに青ざめ、ロビンは笑いをこらえるのに必死だった。

そしてそこへちょうど、明日の朝食の仕込みでもするのか籠いっぱいにジャガイモを抱えたサンジが戻ってきた。




 「あれー、ナミさんは?」

 「お仕事ですって」

 「そっか…プリンはお気に召したかな?」

 「しっかり味わってたわよ。とても美味しいわ」

 「ありがとうロビンちゃんvv ミラちゃん、どうだい?美味しい?」



籠をテーブルに置いたサンジは、ミラの顔を覗き込んで微笑んだ。
相変わらず真っ赤なミラはさらに顔を赤くして、ブンブンと頷いた。



 「まだおかわりはあるからね」



サンジはそう言って、ぽんぽんとミラの頭を撫でる。
それからまた籠を抱えなおし、シンクへと向かおうとして、



その前で殺気を飛ばしている魔獣と目が合った。




 「……何だ何だこの物騒な男は。 こんな素敵なレディたちの前でその態度は無いだろうが」



顔をしかめて、サンジはゾロを睨み返す。
だがゾロは凶悪面でサンジを睨み続け、手ぬぐいを頭に巻き始めた。



 「表出ろ…クソコック」

 「は?」

 「今日こそは決着つけてやるよ…」

 「あのなぁおれは明日の仕込みで忙しいんだよ」

 「これは明日のメシよりも重大な要件だ」




ゾロのマジメな返答に、サンジは訳が分からないという顔でロビンを振り返った。
心の中で笑いをこらえつつ、ロビンは微笑み返す。




 「相変わらず罪な男ね、あなたって人は」

 「……それは褒め言葉?」

 「えぇ」



そんな2人の会話など構うものかとばかりにゾロの刀が抜かれるのを感じ取って、
サンジは一瞬で床を蹴り宙を舞って、ゾロの第一撃をかわした。




 「何かよく分かんねぇけど、上等だコルァ!!」




そのまま2人は刀と脚で攻撃を仕掛けかわしながら、キッチンの外へと出て行った。


残されたロビンはミラと顔を見合わせると、腕をクロスさせふわりと手を咲かせた。
体温の低いその手がミラの赤い頬を優しく包む。
火照った頬が冷たい手で冷やされて、ミラは思わず声を上げた。



 「どっちが強いかしらね」

 「………」

 「どっちに勝ってほしい?」

 「………」



その質問に、ミラは赤い顔のまま再び俯いてしまった。

ロビンはクスクスと笑って手を消し、本物の手でミラの頭を優しく撫でる。



 「ごめんなさいね、意地悪な質問して」

 「ううん」



ミラはぶんぶんと首を振って、キッチンの扉を見つめた。
外ではいい年の男2人が大喧嘩している音が激しさを増して響き渡っている。




 「とりあえず今日は、お父さんに特に優しくしてあげてね」

 「うん…? わかった!」



ミラは首をかしげつつも、笑って返事をした。





 「子離れはまだまだできそうもないわね、彼は…」




船の保全のためにもそろそろ航海士を呼ぶ頃だ、と考えつつ、
ロビンはミラの可愛らしい笑顔を見つめてまたよしよしと頭を撫でた。





07/11/06 UP

『ミラの初恋がサンジ、それに一人気付いて対抗心を燃やすゾロ、話の展開についていけず戸惑うサンジ』
そしてほんのりゾロナミ風味、てことで。

…すまん、流れ的にロビンちゃんも気付いてしまった。
そしてゾロナミ色はどこへ?
ミラちゃんは…6歳くらいで。
ちなみにミラちゃん登場作品は原作ベースで『逢。』『悩。』『配。』『嬌。』ですね。
本当は12,3歳にしようかと思ってたんですが…
そうなると、このバージョンの隠れ家ゾロナミはミラに続いて第2子が誕生してるんですよ!!(笑)(『逢。』参照)
色々面倒くさいので6、7歳でお願いします。
ちなみにタイトルは「おもう」です。

かなんさん、何か違うけど許して…。

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