悩。
ゾロとナミの小さな愛しい宝、ミラも4ヶ月になった。
クルーたちは毎日その天使のような笑顔に癒されていた。
「カワイイな・・」
「食べちゃいてぇよ・・・」
「てめぇら、汚ぇ手で触んなっつってんだろ!!」
ウソップとサンジが、2階のラウンジに置かれたベビーベッドを覗き込んでいると、
ゾロがやってきて急いで2人を引き剥がした。
「何だよ!おれらが雑菌の塊みてぇに!」
「似たようなモンだ!」
「おれはちゃんと手ぇ洗ってるもんなーあーーこのほっぺがたまらん・・」
「触るな!!てめぇが触ったら妊娠しちまう!!」
「何だとコラ!いくらおれでもそんなんで妊娠させられるか!」
「あーーうるさい・・・・」
キッチンのテーブルで、
ようやく昼寝したミラから解放され、海図をかいていたナミは頭を抱えた。
「バカ3人、ミラが起きちゃうでしょうが!!静かに!!」
「お前の声もでけぇよ」
「つーか全然起きねぇぞ?生きてんのか?」
「ルフィ、嫌なこと言うな!!」
テーブルでおやつを頬張っていたルフィの言葉に、4人は慌ててミラを覗き込む。
「・・・・・よし」
「よし、じゃないわよ!次そんなこと言ったら海に沈めるわよルフィ!!」
「は、はーい・・」
鬼の形相のナミに、ルフィは小さくなって謝る。
「しっかしかわいいなぁ・・・とてもマリモの子とは思えん・・・」
「うるせぇ、正真正銘おれの子だ」
サンジが頬を緩めまくってミラを見つめながら呟いた言葉に、
ゾロは眉間に皺を寄せ答えた。
「まぁ、こんだけ緑ならな」
「遺伝ってのはすげぇな」
「目元とか口元は、ナミさん似だよねー」
「ま、目がコイツに似られたらたまんないわよ」
「何だとコラ」
「自分でも思うでしょ。この子女の子なんだから」
「・・・まぁ、それは似なくてよかったが」
自分の目つきの悪さは自覚しているゾロだった。
麦わらの船に咲いた一輪の小さな花。
クルーの誰もがミラを愛していたし、蝶よ花よと接していた。
だが、ミラに最も熱烈な愛情を注いだのは、
意外にも、ゾロだった。
「お前、子供好きだったんだな」
「あ?別に、そんな好きでもねぇよ」
「ミラにメロメロ〜なくせに」
「こいつは特別だ」
サンジにからかわれても、ゾロは堂々としていた。
そんなゾロを見て、サンジはウソップに肩をすくめてみせ、ウソップも苦笑するしかなかった。
「ほら見ろ、てめぇらのせいで起きちまった」
「お前の声だってデカかったじゃねぇか」
騒がしい一同に案の定目を覚まし、ぐずりだしたミラをゾロは抱き上げ、
ユラユラと体を揺らしながらキッチンから出て行った。
「・・・・似合わないこと、この上ないな」
「まぁ仮にもパパだからな、ああなるのもムリねぇよ」
「・・・まさか、パパでちゅよー?とか言ってないよね、ナミさん・・?」
「はは・・・・」
サンジの発言に、ウソップの顔が引きつる。
「さすがにそこまではね・・・まぁ近いけど」
「え、マジで」
ナミが頬杖をついて、溜息を漏らす。
「ずーーーっとミラに話しかけてんのよ、寝るとき」
「「・・・・うわーー・・・」」
「あの子が寝て、ようやく2人っきりなのに!あの子の話しかしないのよ!!」
「・・・・・・・ナ、ナミさん・・・?」
何かスイッチが入ったらしいナミは、
ペンを折り曲げん勢いで拳を握った。
「買い物に出ても、あの子のモノしか買ってくれないし!」
「まぁ、金も元々ねぇけどなアイツ・・・」
「お風呂だって全然私と入ってくれないし!!!」
「・・・・・」
「夜もね、ミラの隣に布団持ってってるのよ!!私のベッドじゃなくて!!心配だからって!!
大して距離変わんないじゃないってのよ!ねぇ!?」
ナミの手の中のペンが、ミシリと嫌な音を立てつつあった。
サンジは興奮するナミを宥めるように、ウソップと並んで両手を広げながら言った。
「いやでもナミさん、あいつ今一番楽しいんだよきっと・・・」
「そうそう」
「抱いてもしっかりしてきてるし、よく笑うしな」
「あぁ、見てて飽きねぇもんな」
「最初のころなんて、サルだったもんなー」
ルフィも会話に参加してきて、思い出したかのように笑いながら言った。
「そうそう、グニャーーーっとしてて、首もげそうで怖かったし」
「あいつの馬鹿力じゃ、本当にもいじまいそうだもんな」
「あー、確かに」
男3人でなにやらほのぼの話になりつつある中、
とうとうナミのペンは乾いた音を立てて、哀れな姿となった。
「そんなのはどうでもいいのよ!!!
・・・ていうかさ、母親になったらもう女として見ないの男って?
やっぱ子供が一番になっちゃうわけ?」
「いや別にそういうわけじゃ・・・つーかおれらに聞かれても・・・」
「ミラミラって、ミラの話ばっかり!!ゾロのバカ!!」
きーーっと叫ぶナミから後退りながら、サンジとウソップは顔を寄せる。
「育児ノイローゼってヤツか・・?」
「うーむ・・・チョッパー呼ぶか・・・?」
「おいナミ、イルカだ」
「・・・・何?」
ナミが叫び終わってふーっと息を吐いた頃、
完全に目の覚めてしまったミラを抱いたまま、ゾロが再びキッチンに顔を出した。
「イルカ?」
「あぁ、白イルカの群れだ」
「マジか!!!イルカって美味いかサンジ!?」
「食うな!!」
クルーはゾロの後に続いて、ガヤガヤと甲板に出た。
「ナミ、パス」
「ん」
途中ゾロはミラをナミに抱かせ、うーんと伸びをする。
やはりまだ、赤ん坊を抱くのは緊張するらしい。
「わーー!ほんと、すごい数!!!」
何十頭ものイルカが時折ジャンプしながら、メリー号を先導するかのようにともに海を進んでいた。
「綺麗ね」
船首に立って、ナミはイルカを見つめる。
ミラも大きな目を見開いて、イルカを見ていた。
「ミラ、あれがイルカさんよ」
ナミが優しく声をかけると、ミラはふにゃっと笑った。
ナミもそれを見て微笑む。
ふと、背中に温もりを感じたと思ったら、
ゾロがナミの後ろに立って、そのままナミを包むように手すりに両手をついた。
「寒くねぇか?」
「うん、大丈夫」
「ミラは」
「大丈夫」
ゾロはナミの肩に顎を乗せ、ミラを見下ろす。
「・・・・乳離れって、いつ頃だ?」
「えー?まだまだよ。でもこの子、夜は結構寝てくれるからラクよね」
「ふーん」
ナミの言葉に、ゾロは不満そうに息をもらした。
ナミは横を向いて、ゾロの顔を覗き込む。
「なに、どうしたの?」
「いや・・・・いつ起きるかと思うと・・・・・」
「思うと・・・・?」
「・・・・ヤレねぇよな」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
ナミは頭を横に振って、そのままゾロに頭突きをかます。
「いてぇ!!何すんだ!!」
「うるさい!子供の前でそんなこと言うな!!」
「何言ってんだよ、お前だってそう思うだろ?おれが何ヶ月我慢してると・・・」
「うるさいうるさーい!何よ子煩悩かと思わせといて、頭ん中はエロエロか!!
私の悩みは何だったのよー!!!」
「おい、ミラが泣きそうだぞ」
「え、あっ、ごめんねーミラ、ママは大丈夫よー?」
「豹変だな」
「・・・人のこと言えるの!?」
「・・・・何か、心配する必要なさそうだな・・・・」
「だな・・・・」
「ミラに甘々なゾロにヤキモチ焼くナミ」
11/13に拍手でリクくれた方。
ゾロ、あんまり甘々じゃない・・・・。
ミラちゃんにつきましては、『逢』をお読みください。
ロロノア夫婦は個室になってるということで・・・・。
ロビンちゃん出てこないけど、ちゃんといますよー。
・・どっかに。
2005/11/27
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