逢。














 「きゃああああああああ!!!!!!」





突然の叫び声。

女部屋の異常に、キッチンで朝食準備をしていたサンジはすぐさま駆けつけた。






 「失礼します!どうしましたナミさんロビンちゃん!?」




レディの朝の部屋なので、一応の挨拶をしてから、
サンジは扉を蹴破って中へと降りた。





そこには、ベッドの上で壁を背にへばりついているナミと、
ベッドから体を起こした状態のままで、呆然とナミのベッドを見つめているロビンの姿があった。




 「ななななな」


単語にならない言葉しか口に出せないナミと、無言のロビンの視線を追って、
サンジはそのシーツの中に見慣れた色を見つけた。

途端、血管を浮き上がらせて、シーツを剥ぎ取った。


 「てめぇ!!!何ナミさんに夜這いかけてん・・・・」




豪快にシーツをめくったサンジは、目の前に現れたものに絶句した。
ナミもロビンも、相変わらずそれを凝視している。


 「・・・・これは・・・・・?」






サンジは、ナミのベッドサイドに置いてある、家族の写真に目をやる。

その写真の中に居るのは、ナミの家族と、10歳のナミ。






そして今自分の目の前に居るのは、それと瓜二つの、だが10歳よりは少々幼い少女。


すやすやとナミのベッドで眠る少女が、その写真と唯一違うのは








その子の髪の毛が、見覚えのある緑色であること。













 「ん・・・・・?」


人の動く気配を感じたのか、少女は軽く身をよじって、目を覚ました。

目をこすりながらゆっくり体を起こして、壁にひっついているナミと目を合わせた。



 「・・・・おはよう、ママ」








・・・・・・・ママ・・・・・・・・!!!!??????








さらに固まる一同。


 「ナ・・・ナ・・・ナミさん・・・・」

 「いつの間に産んだの?」

 「しっ、知らない!知らない!何!?誰!?あなた何で私のベッドに居るのよ!!」




朝っぱらから大混乱しているナミは、子供に対するには少々キツイ口調で叫んでしまった。

それを聞いた少女は、当惑したような表情を見せた後、
その大きな瞳を潤ませて、周りを見渡した。


 「お嬢さん、どうしてこんなところにいるんだい?いつこの船に?」


少女とはいえ、レディにはあくまでも優しいサンジ。
腰をかがめて目線を合わせ、にっこりと話しかける。

しかしその発言にすら少女はショックを受けた顔をして、
サンジの脇をすり抜け、そのまま女部屋から飛び出していった。


 「あ!おい!」

 「追いかけましょう、コックさん」


いまだ混乱して動けないナミを残して、サンジとロビンは女部屋から出て行った。








少女はまるでこの船のつくりを知っているかのように、迷うことなく甲板に出て行き、
周りを見渡した後、見張り台を上っていった。


見張り台では、ゾロが高いびきで眠っていた。
それを見た少女は安心したように息を吐き、
しかし次の瞬間には顔をくしゃくしゃに歪ませて、ゾロに飛びついた。







 「パパぁーーーーーーーー!!!!」

 「うおっ!」


突然抱きついて起こされたゾロも、
下で少女の声を聞いたサンジとロビンも、再び呆然とするしかなかった。














一同がキッチンに集まる。

騒ぎに気付いて起きてきた面々も、
サンジとロビンに挟まれてちょこんと椅子に座る少女の姿を見て絶句した。


 「えーと、つまり、君はナミとゾロの子供って事?」


少女を安心させるため、年齢の近いチョッパーが
少女の正面に座って尋ねる。

まだ瞳を潤ませている少女がうなずく。


 「つまり、あの、・・・・未来、から来たってこと、なのかな?」

 「・・わかんない。でもみんな、何か若いよ」





未来から来た子供。
突拍子もないが、ここは”偉大なる航路”。何でもアリだ。




 「すげーな!!ナミにそっくりだ!!髪の毛はまんまゾロだなー!」


相変わらず呑気な船長は叫ぶ。
その声に、少女は少し笑顔を見せる。



 「未来って、どのくらい先なんだ?」

 「・・ウソップさんは今何歳?」

 「17」

 「じゃあ、多分10年後」

 「10年・・・・・」

 「ママは今28で、私はママが21のときの子供」



 「3年後にはママだってよ、ナミ」



ルフィはナミに笑いながら話しかけるが、ナミはそれどころではない。

いまだ混乱する頭で、ナミは少女を見つめながら考える。











確かにこの子は私にそっくりだ。
それに、見ていて・・・・こう、母性本能というか、心の奥で反応する何かがある。

てことは、やっぱりこの子は私の子供?

私とゾロの子供?






私と、・・・・・・ゾロの?











ゾロとの子供だということに今さら考えが到って、ナミはつい嬉しくなってしまった。


 「名前は・・・?」


ナミは少女に聞く。


 「ミラ」

 「ミラちゃんかぁ、ナミさんに似て美人になるだろうなぁvvv」

 「サンジさんって、10年前も変わらないんだね」


へらっと笑うサンジに、ミラも明るく答えた。




それを聞いて、一同は気付いた。



 この子は10年後から来た、
 つまり、10年後のおれたちを知っている。



 「な・・なぁ、おれらって、10年後も一緒にいるのか?」



たまらずウソップが聞いてみる。


 「いるよ、みんな」


それを聞いてちょっと安心する一同。
あなたのことは知らない、とか言われたら、かなりヘコんでしまう。


 「10年後かぁ・・・海賊王の船、になってんのかなぁ」


ウソップの呟きに、ミラは答える。


 「知りたい?」

 「お?おう!そりゃ・・・」

 「ダメだ!!!」


ウソップが聞こうとすると、ルフィが叫んでそれを止めた。



 「10年後だろうといつだろうと、おれは海賊王になるんだ!!」



 「・・・・ルフィはいつでもルフィだね」





自分の居る時も、そして何故か来てしまった10年前のこの時も
変わらないルフィに、ミラは安心したような笑顔を向ける。



 「ま、確かに聞かないほうが、今後の人生楽しいだろうな」


サンジは冷静に言う。
実は聞きたかったのだが。



 「おいゾロ、お前は何か言うことねぇのか?お前の子だぞ?」


ウソップが、腕を組んで入り口に寄りかかったまま
先程から何も言わないゾロに話しかける。



 「・・・お前、剣は使えるか?」

 「うん。ちゃんと毎日練習してるよ」

 「ならよし」

 「それだけかよ!!!」














その日一日、ミラは船のアイドルだった。

3年後に生まれる(予定の)この船の宝。

かわいくて、利発で、しかも(あの2人の子供だというのに)人懐こい性格。
誰もがミラに構いたがり、一日中誰かがミラの傍でミラに話しかけていた。


最近考古学と医学を教えてもらいだした、と言えば、
ロビンに優しく頭を撫でられ、
チョッパーからはダンスを披露された。

料理の腕は大分あがった、と言えば、
サンジに抱きしめられた。
その後サンジはゾロに殴られて、例の如く大喧嘩が始まったが。

共に武器の開発をして、船での戦闘に役立っている、と言えば、
ウソップから10年後でもまだ聞いていない面白い話たくさん聞かせてもらった。

ルフィは、というと、
新しい仲間の登場に張り切って、サンジに宴会を提案していた。
ミラのために!というルフィらしからぬ口車に乗せられたサンジは、結局OKを出してしまった。
その後ルフィはミラと遊びたがったが、
「あんたは乱暴な遊びするからダメ」とナミに止められた。
ふてくされたルフィと目が合ったミラは思わず笑いかける。
それを見てルフィもしししっと笑って、
大人しく釣りをするから、と言ってようやくミラと遊ぶ許可をもらった。







さすがに10年後では毎日顔を合わせている相手だ。
ミラもすぐに打ち解けて、ずっと前から此処に居たかのような落ち着きっぷりだった。
それでもやはり、ナミとゾロの傍に居るのが一番安心するようだ。
たえずどちらかの傍に居る。

母性に目覚めたナミは既に母親の顔になっているし、
朝の混乱っぷりが嘘のようにミラに接している。
ゾロはと言うと、普段とあまり変わらないようだが、
ミラが傍に来ると若干嬉しそうな顔になる。
昼過ぎには、腹の上にミラを乗せて一緒に昼寝をしていた。

ゾロとナミとミラの3人で居るときは、端から見ても立派な親子だった(事実親子だが)。
3人が仲良く手をつないでいるのを見たりしたときには、
他のクルーが逆に何故か照れてしまったくらいだ。









その日の夕食は、サンジとミラで作った。
ルフィのリクエスト通り、宴会仕様だ。
ミラの料理の腕前に、サンジは「あれだな、教え方だな」と自画自賛でこっそり呟いていた。
もちろん「ミラちゃんの才能があってこそだけどね」とレディを敬うのも忘れない。



夜にはゾロとトレーニングをして、
ナミと風呂に入った。
ナミと2人で女部屋へと向かうミラに、ルフィは「3年後にまた逢おう」と挨拶した。
そして朝と同じようにナミの布団に入って、ナミとミラは2人で眠った。












次にミラが目覚めたのは、同じ船の、同じベッドの中だった。

しかし隣には誰も居ない。

急いで飛び起きて、部屋から出て甲板へと走った。


 「ママ!!パパ!!!!」


 「なぁに、どうしたの」


キョロキョロと甲板を見渡していると、ミカン畑から声が返ってきた。


 「ママ!!!」



大きな腹を抱えて、ミカンの手入れをしていたナミの元に、ミラは駆け寄る。



 「ママ!!あのね!昔のママに会ったよ!!」

 「あらそう?」


ふふ、とナミは笑い、ミラの頭を撫でる。


 「若かったよ!」

 「当たり前でしょ?パパはどうだった?」

 「うん!かっこよかった!でも寝てた!!」

 「あはは!!今もまだ寝てるから、起こしに行こうか?」

 「うん!!」


そうして2人は手をつないで、甲板へと降りていった。














いまはまだ見ぬ”いつか”の話。














ちなみにその10年前の世界では、
「子供が欲しい」と「まだ早い」という考えの板ばさみになっているナミの姿があった。


10年後の妄想。
あ、ルフィは一日限りの出会い、と本能で気付いてたということで。

ワンピの最終回では緑頭のナミさん似のベイビーを
ナミさんが抱っこしてるシーンが無いと、最終回とは認めない(笑)。
てか10年後なのにまだメリー号か。規模変わらずか。
それはそれでどうか。
あれだ、母船と言うことで(笑)。
ところで7歳の子供って、どんな感じかよく分かりません。
もう結構大人よね?頭も回るよねそれなりに?

2005/04/13

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