格子へ向かう前、ロビンはナミの部屋へ足を運んだ。
同じように格子へ出ようとしていたナミを止めて、そのまま部屋に入った。
「・・・・もう、出ないと」
「少しくらい遅れたって平気よ。それより・・・話があるの」
「話・・・?」
ロビンはナミの顔をじっと見つめる。
ナミは戸惑って小首をかしげた。
「あなたがここに来て、私の禿になったとき・・・・妹ができたみたいで、私すごく嬉しかった」
「・・・・・・突然、何を・・・?」
「あなたを守ってあげなくちゃ、って思ったのを覚えてるわ」
ロビンは14の時から遊女として働いていた。
16歳でアーロンの店に移ってからあっという間に店の一番人気となった。
ただひたすらに遊女として生きていた中、ナミが現れたのはロビンが18のときだった。
一人で生きると決めたこの世界に、唐突に現れたナミという存在。
女の苦界へ売られてきた哀れな子。
小さな可愛い、私の妹。
守ろうと思った。
この子もきっと、一生を此処で過ごすだろう。
自分のように。
それならば、
せめてそれを支えてあげようと。
そう思っていた。
だけど。
「ナミ・・・・、あなたは出逢えたのよ」
「・・・・・?」
「あなたを救ってくれる男に、あなたは出逢えた」
身分の違いに、あなたは苦しむかもしれない。
ふさわしくないと、これからも悩むかもしれない。
だけど、
あなたには私のようにはなってほしくない。
愛する人を、身分の違いなどで失ってほしくない。
あなたなら、私と違う生き方が出来る。
あの男なら、きっとそれを可能にしてくれる。
あの男の父親には、できなかったことを。
あのときの私には、できなかったことを。
「ロロノアに、会いなさい」
「・・・・・・」
「何も考えなくていいのよ。ただ会いたいと思うなら、会えばいい」
「・・・私は、」
「ナミ、あなたにはその権利がある。
そしてそれを止める権利は、誰にも無い」
「・・・・・でも、ゾロはもう来ない」
「いいえ、・・・来てるわ」
俯いていたナミは、驚いてロビンを見た。
「来てる・・・・今?」
「えぇ、あなたを救うために」
「・・・どういう意味・・・?」
「ナミ、あなたは自由になれる」
ロビンが優しく微笑むのを、ナミはただ目を見開いて見返すだけだった。
「・・・・・だ!早く・・!」
突然、部屋の外が騒がしくなった。
ナミとロビンは立ち上がり、襖を開けて外の様子を伺った。
「アーロンさんが・・!?」
「もう手遅れらしい」
「そんな・・何があったんだ?」
「客に斬られたんだよ」
「客? 誰だよ」
「領主の息子だと。一体何したんだ楼主は・・・」
店の男衆たちが、バタバタと急いで内所へ向かっていく。
ナミは呆然とその様子を見送った。
「・・・・ゾロが・・・・・・?」
「ナミ、行きましょう」
ロビンに背中を押されて、ナミはふらりと足を踏み出した。
2006/01/21 UP
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