サンジくんが店を持ったのは、
私とゾロが結婚する少し前だった。
高校卒業してすぐに、父親の経営するレストランでコックとして働いていたのだが、
独立し、レストランではなく洋菓子店を開いた。

マンションからも歩いていける距離にあって、
私はちょくちょく顔を出して、
新作ケーキなどを時折こっそりサービスしてもらっている。











 「こんにちは」

 「あ、こんにちはロロノアさん。店長、呼んできましょうか?」

 「うん、おねがい」



既に顔なじみの店員さんが、奥のサンジくんを呼んでくれて、
いつものように顔を崩しまくったサンジくんが登場する。






 「やぁナミさんvv 2日連続で来てくれるなんて嬉しいなーv」

 「ちょっと話があるんだけど、お昼休憩終っちゃった?」



 「話?」

 「うん」

 「んー、ちょっと待ってて」






そう言ってまた奥に引っ込んだサンジくんは、エプロンを外しながらすぐに出てきた。




 「オーケー、今いいよ」

 「いいの?」

 「ナミさんのお話とあらば店長特権フル活用さ〜vv」






そう言いながら、見た目も美しくそして味も期待通りのケーキが並ぶショウケースから、
サンジくんは新作ケーキを2つ取り出して、
隣接するカフェへと案内してくれた。



 「おごり」

 「じゃあ、お言葉に甘えてv いつもありがとサンジくんv」









席につくと、店員の女の子がアイスティーを運んできてくれた。
軽く会釈をすると、向こうもにっこりと返してくれる。



 「・・サンジくん、店の子たち、顔で選んでるでしょ」

 「そんなことないよ!スタイルや内面も含めて総合的な・・・」

 「結局カワイイ子でしょ」

 「・・・・ま、ケーキ屋にはやっぱ可愛い子・格好良い子がいないとね」

 「確かに、ここの店員のレベルは高いわ。さすがサンジくん、見る目ある」

 「店員もケーキも一流でっす!」





この店は男性客も多い。
店全体がシンプルなデザインで入りやすいのもあるのだろうが、
何より、店員の子が揃いも揃って可愛いのだ。

店内にいるのは多分ほとんどバイトの子だろうけど、
女の子も、そして男の子もみんなカワイイ顔をしている。
しかも見た目だけでなく、接客の態度も皆好感が持てる。
それも含めた『総合的な採用』なのだろうけど。

おかげで店員目当てで来る男性客が多い。
そして女性客でももちろん、男前な店員目当てに来ている者もいる。
そういう女性客の大半は、サンジくん目当てなのだが。







 「だって『ハンサムなパティシエ』なんて、卑怯よね」

 「はは、卑怯ときたか。で、話って何?」

 「ハンサムを否定はしないのね。まぁそれはいいんだけど」





お互いに慣れたやりとりのあと、ようやく本題に入る。
身を乗り出して、声を潜めて切り出した。












 「・・・サンジくん、・・・最近、ロビン変じゃない?」



 「・・・変?変ってどういう風に?」




曖昧な質問に、サンジくんはきょとんとしている。
仕方が無いので、口にはしたくないのだが、直球で聞く。








 「はっきり言うけど、・・・ゾロとロビンが、・・浮気、してるかもしれない」








私の言葉に、サンジくんはグラスを持ったまま固まってしまった。




 「・・・・・・・・」

 「・・・で、サンジくんは何か気づいたことない?」

 「・・・まさかそんな、あの2人まだ・・・・」

 「まだ?」




独り言のように呟いた言葉を、私は聞き逃さなかった。
しまった、という風に口を押さえたサンジくんにグイと詰め寄る。




 「あ、いや・・・」

 「何か知ってるのね?」

 「・・・・・」

 「サンジくん!!」





























ゾロとロビン、そしてサンジは同じ中学・高校だった。
ロビンは一つ上だったが、中学で3人とも生徒会の役員をしていたため、
同じ高校に進学してからも3人でつるんで仲良くしていた。

長い付き合いだったが、ゾロもサンジも、ロビンを好きだった。
友人としてではなく、異性として、好意を抱いていた。
中学のときはただの友人で3人とも満足していたのだが、
高校に入り、その関係が変わった。




ゾロとサンジが高校2年になるころ、ロビンとゾロが付き合い始めた。
サンジはその頃から女子に甘い男だったが、ロビンには本気だった。
ゾロに対して嫉妬もしたが、
ロビンがどちらにより魅かれていたのかは自分でも気づいていたし、
ゾロのことは親友と思っていたから、
サンジはその後も2人と友人関係でいることを選んだ。




ゾロが大学4年になって、2人は別れた。
理由はサンジも知らないが、
サンジの知る限り、5年以上の付き合いの間に2人とも浮気の類は一度もしていないし、
するような人間でもなかった。
おそらくは社会人と学生、という間柄が何らかの歪を生じさせたのだろう、と予測している。
現に別れたあとも、2人は友人として過ごしてきた。

ロビンとサンジが付き合い始めたのは、
2人が別れてちょうど1年たった時だった。
ゾロと付き合っている間、サンジにはもちろん他の恋人がいたのだが、
それでもロビンのことは忘れられなかった。
当時の恋人達には失礼な事だが、サンジにとってロビンはそれほど特別な存在だった。
ゾロと別れたと知った瞬間、サンジはロビンへの想いを隠せなくなったのだ。



ゾロはそういうサンジの想いを知っていた。
だからサンジから2人が付き合うと聞かされたとき、
多少の動揺はしたものの、それでも祝福することができた。

ゾロがナミと出会ったのは、それからさらに1年後、サンジがロビンにプロポーズした頃だった。




ナミにとって、初めて会ったときには既にロビンは『サンジの婚約者』であった。
なのでゾロとロビンの昔の関係など、想像できるはずがなかった。





























 「・・・つきあってたなんて、聞いてない・・・」

 「・・気ぃ使ったんじゃないの。終ったことだし」

 「・・・でも、終ってないかもしれない・・・・」

 「・・・・・・・・そんなこと、無いと思うけど・・・、おれも他人事じゃないよな・・」



昔の話をして、あの2人が今なお、というのは有り得ない話ではないことに気づいたサンジくんは、
今更ながら唸り出す。



 「そういえばロビンちゃん、最近元気ないような・・・」

 「・・・・許されぬ関係に悩んでるとか・・・」

 「・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・」



2人揃って無言になってしまった。



 「・・・サンジくん、今日、家に行ってもいい?・・・ゾロと」

 「・・・・よし、はっきりさせるか・・。おれがゾロ呼び出すよ」

 「うん」






サンジくんが携帯を取り出し、ゾロの番号にかける。


何度目かのコールの後、ゾロが電話に出た。




 『おす』

 「おぅゾロ、今いいか?久しぶりだなー。
  今日さ、夜ナミさんとウチ来ねぇ?久しぶりに4人でメシ食おうぜ」

 『・・あぁ、おれもお前にちょっと話あんだ。ちょうどいい』

 「・・・そ、そうか。じゃあ待ってるぜ」



ボタンを押し、サンジくんが無言で携帯をポケットに戻す。



 「・・あいつも、おれに話あるって・・・・」

 「・・・・・・まさか、色々告白されちゃうんじゃ・・・・」

 「・・・・・シャレならん・・・。ナ、ナミさん!頑張ろうな!!」

 「うん!」


一体何を頑張るのか2人とも分かっていないが、
とりあえず気合だけは入れておかないとヤバイ気がしたので、
2人して拳を握り締めた。






無駄に続くよあと1回。
オチは弱いです(先に言い訳)

3人の過去、ひたすら箇条書き状態。。。。
ゾロたちの大学?学部?仕事?
何も考えちゃいませんよ?(爆)

2005/08/10

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