「いらっしゃい、ナミちゃん」








夜になり、(主にゾロが飲むことになる)ワインをおみやげに、サンジくんの家を訪れた。
ロビンは女の私でも見惚れるような、いつもの笑顔で迎えてくれた。





 「ロビン、久しぶりね」

 「本当ね」

 「ね、ゾロ?」

 「あ?あぁ」



カマをかけたつもりでゾロにそう言ったのだが、
大した動揺も見せずに、ゾロは平然と答えた。
やっぱりゾロじゃなかったのかしら、とも一瞬思ったが、
それでも胸の中の疑惑は変わらない。




 「お前のメシも久しぶりだな」

 「おれも家で作るの久しぶりだ」

 「ロビンの料理も美味しいもんね」

 「普通よ」

 「いや、おれでも敵わないかもなーロビンちゃんには」

 「そっちも食いたかったな、久しぶりに」

 「「あ、そ、そう・・・・」」


ゾロのさり気ない一言でも、私とサンジくんは妙に考えて反応してしまう。












テーブルに綺麗に並べられている料理を前にして、席につこうとしたら
サンジくんが口を開いた。



 「・・・やっぱ、食べる前にはっきりしとこう」

 「え、サンジくん、でも・・・」


いきなり核心の話題に持っていくとは思わなかったので、
私は驚いてサンジくんに小声で言う。

誤解ならば、笑い話として楽しく食事できるだろうが、
もし険悪なムードになってしまったら、それどころではなくなってしまう。




 「おれ気になって、正直食事どころじゃねぇんだナミさん」

 「でも・・・」

 「何だよ、どうした」

 「ゾロ!」

 「何だ」



不思議そうなゾロとロビンを見ながら、
サンジくんがとうとう、言ってしまった。









 「ゾロ、お前、その、・・・ロ、ロビンちゃんと、浮気・・してんのか?」










ガチガチに固まって、何とか言い終わったサンジくんの横に立って、
私も嫌な汗をかきながら2人の様子を恐る恐る見る。






 「・・・・・・・・は?」






ゾロは目を丸くして、間の抜けた声を出した。
ロビンも驚いた様子で声すら出ないようだった。



 「どうなんだ!?」

 「してるの!?」

 「・・ナミ、お前まで何だ」



必死な顔で聞く私に、ゾロが呆れた顔を向ける。



 「たしぎさんが見たって言うのよ。ゾロがこのマンションに昼間、入るのを」





証言を突きつけると、ゾロは少し考えた後、呟いた。



 「・・・・・・・昨日か・・」

 「・・・・っ」



容疑者の自白で事実ということが判明。
眩暈がして倒れそうになった。
サンジくんは真っ青な顔で立ち尽くしている。



 「やっぱりゾロ・・・!!!」

 「だー!違う!!浮気じゃねぇよバカ!!」

 「ナミちゃんったら・・」



ゾロが慌てて否定するが、私はもう半泣きだった。
それなのにロビンは苦笑している。





 「浮気じゃないなら何よ!!!!」









 「・・頼まれたんだよ」

 「何を!!!!」




 「・・・・・・・サンジの、浮気・・調査」

 「・・・・・・・・・・おれの!!??」





今まで固まっていたサンジくんは、自分の名前が出てきて、驚いて正気に戻った。







 「お前が、店の女に手ぇ出してないか気になるんだとさ」

 「・・・でも、でも、何でそれをゾロに・・・」


浮気じゃないとしても、
さっきまで頭の中はそればっかりだったので、いきなり真実を言われても
頭がついていけなかった。
グルグル考えて浮気の言い訳に結び付けてしまう。



 「おれからナミに、サンジの様子見てみるよう頼んでくれって言われたんだ」

 「な、何で私に直接言わないの・・・?」





浮気調査なら、サンジの親友であるゾロに頼むより、私に頼んだ方がはるかに確実だ。

わざわざ働いているゾロを通すよりも、
暇な主婦の私に直接言った方が効率的なのは当たり前なのに、
何故あえてゾロに言う必要があったのか。





 「念のために、おれに最初に言ったんだよ」

 「念のため・・・・?」

 「・・・お前らが、今おれらを疑ったみたいにな」

 「今?」



ゾロの言う意味が分からなくて、小首をかしげたが、
少し考えてそれを理解した。






 「・・・・私とサンジくんを、疑ってたの?」

 「・・・・・・・・・・ロ、ロビンちゃん・・・・・」





サンジくんは、自分が浮気していると思われていたのがショックだったのか、
さっきまでまた固まっていたが、
さらにその相手が私だと知って、泣きそうな顔でロビンを見つめた。







 「お前、週一でサンジの店行ってんだろ」

 「だって、美味しいし・・・」

 「ま、不安要素の一つではあったんだよロビンには」

 「ごめんなさいナミちゃん、本気で疑ってたわけじゃないのよ・・本当にごめんなさい・・・」

 「や、そんな!!私だって・・・」



ロビンが本当にすまなそうに謝ってきたので、
私は恥ずかしくなってあせってしまった。



 「でも、何で今更?サンジくんが女の子に鼻の下伸ばしてるのなんてしょっちゅうじゃない」

 「ナミさ〜ん・・・・」


私の言葉に、サンジくんが恨めしそうな視線を寄越す。
サンジくんは浮気なんてしてないけど、でもデレデレしてるのは事実だし、と思って
無視しておいた。
さっきまで共同戦線を張っていたのに、冷たい仕打ちだとは思ったけど。




 「今のロビンにゃ、そんな余裕無ぇんだろ」

 「今の・・・って?」














 「妊娠してんだ」











ゾロがあっさりとそう言うと、
ロビンは少し頬を染めて俯いた。

まさかゾロの子供、という考えが一瞬浮かんだが、
さすがにそれは皆に失礼だ、と自分を叱りつつ頭を振る。










 「・・・・・・・・・え、ロ、ロビンちゃん、妊娠・・・・?」



自分の妻の懐妊を、自分の親友の口から知る、というのもどうかと思うが、
サンジくんは今はそんなことは気にならないらしい。

目を見開いて、ポカンとした表情でロビンを見つめている。




 「・・・・・・先週、分かったの。・・・2ヶ月よ」




ロビンははにかんだ表情でサンジを見つめ返して、そう言った。









しばらく2人とも無言で、そして唐突にサンジくんが叫んだ。



 「何でもっと早く言わないのおれにーー!!!!!!!」

 「ごめんなさい・・」



サンジくんはロビンの前に飛ぶように走り寄ると、その両肩をしっかりと掴んだ。
ロビンは照れたような、申し訳ないような顔をしている。





 「おめでとうロビン!」

 「ありがとう」


はっと思い出して、お祝いの言葉を贈る。
ロビンは嬉しそうに微笑み返してくれた。
ふわりとしたその笑顔の中に『母親』の顔を見つけ、こちらが照れてしまった。








 「こ、こうしちゃおれん!!ロビンちゃん立ってないで座って!!クッションクッション!!!
  あぁもうそんな薄着な格好ダメだよー!ヒールもダメだからね!!
  あ、つわりとかは?あー、妊婦さん向けの料理考えないと・・・っ!!」

 「サ、サンジくん、落ち着いて・・・」





私の言葉も聞こえないのか、サンジくんはロビンを無理矢理ソファに座らせ、
その周りをグルグルと回っている。
ロビンはそんなサンジくんを見上げながらクスクス笑っている。






 「ロビンちゃん疲れたら言ってね!料理もおれがするし、他も全部おれ手伝うからね!」

 「甘やかし過ぎだぞオイ」

 「・・・・ゾロもあんな感じじゃない」

 「・・そんなことは・・・・、・・・・・そうか・・・?」

 「うん」












気づくと、グルグルしていたサンジくんはいつの間にかロビンの隣に座り、
肩を抱き合って何やらいいムードになってしまっていた。



 「おいおい招待しといて客は無視か」

 「いいじゃないの、今日はもう帰りましょ」

 「・・・・・そうするか・・」

 「あ、ゾロの話はいいの?サンジくんが言ってたけど」

 「ん?あぁ、ロビンの話だから、もう済んだ。
  浮気調査、お前に頼むよりおれが直接聞いてやるっつったんだけど、もういいだろ」

 「だね」

 「あークソ、腹減った」

 「帰ってすぐ作ってあげるから、ガマンガマン」






結局私達は、腹を鳴らしてサンジくんの家から退散することになった。















エレベーターから降りるとき、ゾロはブツブツと呟いていた。


 「ったく・・・あいつらいい加減結婚して何年たつんだよ・・・
  いつまでたっても新婚気分で堂々とイチャつきやがって・・」

 「いいじゃない、5年目でようやく子供ができたのよ?ロビンずっと欲しがってたもの。
  ・・・なに、それとも、ヤキモチ・・・?」

 「・・・・お前、まさかまだ妙な疑いを・・・・・」

 「冗談よ、ごめんってば本当」



じろりとゾロに睨まれて、目を逸らして笑っておいた。





 「まぁいい、さっさと帰ってメシだ。ほら」




マンションを出て、外の階段手前で、ゾロが私に手を差し出す。










 (私達も結構イチャついてるけどね)







当然のように差し出されたその手を取って、仲良く手を繋いで帰るのだ。












やっぱり私、幸せ人生真っ最中だわ。
































おまけの会話。


 「で、サンジくんって浮気してるの?」

 「するわけねぇだろ。他の女にデレデレしててもロビンにベタ惚れだよ、あいつは」

 「でしょうねー」

 「ま、さっきの調子ならロビンの不安も少しは消えただろ」

 「そうね、ところで私の不安は解消されたと思ってる?」

 「あ?だから、誤解なんだから別に・・・」

 「不安は不安よ」

 「・・・・・・」

 「ゾロは誰にベタ惚れ?」

 「・・・・・・・誰って・・・」

 「ゾーロ?」

 「・・・・・・・・・・・ナミって女に」

 「・・・・・・ふふっ」

 「・・・・・・で、お前は?」

 「私?私はもちろん、ロロノア・ゾロって人に」

 「へー、奇遇だな」

 「奇遇ね」





はい、終りました。
真相もオチも弱いけど、気にするな!!
そんなの私が一番分かってる!

このゾロはナミさんに結構甘いのです。
ラブいです。
主役はサンジくんのようです(笑)。
最後のオマケの会話がやっとゾロナミに・・・・。

ところで母親の皆様、妊娠をいつごろ知りましたか?
ベタなのは3ヶ月ですかね。
私の姉は1週で気づきました。

掲示板にてリクしてくれた凛さん、
夫婦パラレル、こんなんになりましたが・・
いかが?ダメ?ダメ?
子供は・・・腹ん中です。
外に出すのは私の腕ではムリでした(爆)。

2005/08/13

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