88888ゲッター、カノコさまへ愛をこめて。
結。
バレンタインに、ナミはゾロに手作りのチョコを渡した。
ナミの誕生日に、ゾロはプレゼントとして指輪を贈った。
自分の気持ちを自覚して、お互いの気持ちに気付いていて。
ただの友達に渡すのとは違う意味をこめたプレゼントを、お互いが渡しているのに。
それでもまだ、二人は友人以上の関係からは抜け出せないでいた。
アクセサリーの類は禁止、と校則には一応書かれているが守っている生徒はあまりいない。
教師の方もそのへんは見逃してくれているが、
ナミは貰った指輪を普段は指にははめず、チェーンをつけて首から下げていた。
指に光るソレを他の人に見られるのが何となく気恥ずかしかったし、
この方がすり抜けて失くす、ということもなく安心だった。
だがさすがに体育の授業のときは外していた。
チェーンが切れて校庭で失くす、などでは元も子もない。
この日の午後、体育の授業を終えたナミはその指輪に通したチェーンを、
まだ首に下げず、小さなスポーツバッグのマチの上に置いたまま教室に戻ってきた。
ビビと他愛も無い話をしながらいつもと同じように片手でそのバッグを、
片手には自販機で買ったスポーツドリンクを持って自分の席に戻る。
着替えの早い男子は既に戻っていて、ナミを始め女子たちもぞろぞろと教室に入ってきている。
ナミとビビが戻ってきたのを見つけたルフィは、笑いながら近づいてきた。
「ナミ! 一口くれー!」
「やーよ、何であんたに」
「ケチ」
素っ気無く断られ、ルフィはぶーと頬を膨らませた。
その様子をビビはクスクスと笑いながら見ている。
「あんたが買ってきてビビと半分コしなさいよ」
「今喉が渇いてんだよー!!」
そう言ってルフィは腕を伸ばし、ナミの手からペットボトルを奪い取った。
ナミが抗議する間もなく、蓋を開けてそれをあおる。
「コラ!泥棒!」
「ケチケチすんなよー」
「やだちょっと、半分以上飲んだわねアンタ!」
「ビビー、ナミが怖ぇぞー」
ルフィはケラケラと笑いながら、悪びれる様子もなくビビの後ろにさっと身を隠した。
この2人は付き合っているのだが、ビビはこのときは友情を取ってくれたらしい。
さっと体をずらして、ルフィの体をナミの眼前にさらす。
「裏切ったなビビーーー!」
「ルフィさんが悪いわよっ」
「隙ありぃ!」
情けない声を出すルフィに、ビビは楽しそうに笑顔を返す。
そしてナミは怒った顔で、持っていたスポーツバッグをルフィの頭目掛けて振り下ろした。
着替えやらお手入れ道具やらが詰まって、なかなかの重量になっているそのバッグがヒットして、
ルフィは頭を抱えてしゃがみこんだ。
「いってぇな! ナミのケチ!」
そう言って涙目で顔を上げたルフィは、次の瞬間にはきょとんとしていた。
ナミとビビの2人が、なにやら固まったまま窓の外を見つめていたのだ。
「……どうしたんだ、ビビ? ナミ?」
「ナミさん、今何か……」
「うそ…」
ルフィは頭をさすりながら立ち上がり、ナミたちと同じように窓を見つめる。
ナミの席は窓際で、このとき窓は全開だった。
もう空気は大分冷たいが、体育で汗をかいた後の肌には心地良い。
窓に近づいたルフィは下を覗き込んで、振り返ってナミとビビを見る。
「さっき、何か飛んでったよなぁ?」
ナミのバッグが頭にヒットする間際、何かキラキラ光るものが飛んでいくのをルフィは見た。
3人の周りにいた友人らもそれを見ていたらしく、ルフィと目が合うと頷いた。
ビビは戸惑った顔で、目を見開いたまま動かないナミの腕にそっと触れる。
「ナミさん?」
親友の問いかけに返事もせず、ナミはバッグを放り投げて教室から飛び出して行った。
数人の友人たちと同様に、ゾロもその一部始終を離れた席から見ていた。
ナミのバッグから何かが窓の外に飛び出して、
そしてそれが何であるのかをゾロは知っていた。
声をかけようとしたのだが、ナミはそれにも気付かず脇を走り抜けて教室から消えた。
次の授業は自習で、ビビは窓から身を乗り出してナミにそれを告げた。
自分も降りようとする親友を制して、結局ナミは一人、そのまま教室に戻ってこなかった。
放課後。
教室の窓の真下にあたる植え込みの間で、ナミは膝をついて地面を睨みつけていた。
スカートから覗く膝はもちろん、制服の腕や顔まで土まみれにしながら、
ナミは必死の形相で3階の教室から落としたものを探し続けた。
その姿を少し離れて見つめていたゾロは、眉間に皺を寄せて近づき、声をかける。
「…もういいだろ」
顔を上げたナミは、ゾロの顔を見てすぐに目を伏せる。
ナミには、その顔が不機嫌そうに見えたのだ。
無理も無い。
せっかくあげたプレゼントを失くされてしまって、機嫌のいい人間はいないだろう。
しかも、乱暴に鞄を振り回し窓から吹っ飛ばされたのだから。
だが実際には、ゾロは不機嫌どころか少しばかり嬉しかったのだ。
自分があげたプレゼントを、必死になって探すナミの姿が。
「もう暗くなんぞ」
「だって、見つかんない。 絶対このへんにあるの!」
鞄を肩越しに背負って、ゾロはさらに近づく。
素っ気無く返事をしたナミは、しゃがみこんで植え込みの中に頭を突っ込む勢いでまた探し始める。
「……また、買ってやるから」
「そういう問題じゃないの!!」
「な…」
優しい言葉をかけたつもりだったのだが、物凄い形相で見上げられてゾロは思わずたじろいだ。
ナミはゾロを睨みながら、小さく叫ぶ。
「アレしか無いんだから!」
「アレしかって……自分で言うのも何だが、安モンだぞ? どこにでもあるような――」
「値段の問題じゃなくて!!」
ナミの瞳が一気に潤んでくる。
しゃがみこんだまま、ナミは自分の膝に額を押し当てて俯いた。
「17歳の誕生日に、ゾロがくれたのは、あの指輪なんだから……」
そう呟いて、黙りこくってしまった。
オレンジ色の頭を見下ろしながら、ゾロは溜息をつく。
それを聞いてナミはまた泣きそうになった。
だが次に耳にしたのは、鞄を放り投げる音、そしてガサガサと葉や枝の揺れる音だった。
顔を上げると、学ランを脱いで腕まくりをしたゾロが自分と同じようにしゃがみこみ植え込みに頭を突っ込んでいた。
「ゾロ……」
「さっさと見つけて帰んぞ。 腹減った」
「………」
それからしばらく2人は無言のまま、地面に膝をついて食い入るように指輪を探した。
段々と陽は落ちて、朱色だった空は青黒くなりつつある。
「無ぇなぁ…」
息を吐いたゾロが思わず呟くと、ナミがまた瞳を潤ませてうぅ〜と唸る。
それに気付いてゾロは慌ててまたガサガサと捜索を開始する。
そして。
「お」
「え?」
植え込みの木の、1本の根本あたりにそれは引っかかっていた。
「あった」
「ああああああったーーーーー!!!!」
ゾロがチェーンを持ってつまみあげると、ナミはガバリと飛びついてそれを奪い取った。
「あったよーーーーーー!!!」
両手で指輪を掲げるように持つナミの姿を見て、ゾロは苦笑する。
それに気付いたナミは涙目で睨む。
「……なに」
「いや、すげぇ顔になってんぞお前」
ゾロはくっくっと笑いながら顎でナミの顔を示した。
ナミはむぅっと唇を突き出して、指輪を握り締めたまま片手で自分の頬のあたりをゴシゴシとこする。
「……言っとくけど、あんただって」
校舎の裏の植え込みの間で、地面の上に直接座り込んで。
腕やら膝やら顔やらは土まみれで、頭には葉っぱが何枚も引っかかって。
ナミに至っては泣き笑いしているため、ゾロでなくとも苦笑してしまうような顔になってしまっている。
「いい年して何ドロ遊びしてんだか、な」
「ほんとね」
そう言って2人は同時に噴出した。
笑いながらゾロは腕を伸ばし、ナミの手から指輪を取る。
土に汚れて傷もついているその指輪にフッと息を吹きかけ、気持ち程度に汚れを落とす。
そうして再びナミに差し出した。
「ほれ」
「……ありがとう」
「…よっし、帰るか」
ニヤリと笑ったゾロは土汚れをはたきながら立ち上がり、植え込みの上に放っていた学ランを羽織った。
それから鞄を肩にかけながら、ナミに片手を突き出す。
口をへの字に曲げて無言で差し出されたその手をナミはじっと見つめ、
そしてゆっくりと己の手を伸ばした
引っぱられた勢いのまま、立ち上がる。
ゾロは片手でナミの頭にからまっている葉っぱを取っていく。
ナミも自分の片手で、制服や膝の汚れをはたいた。
繋いだ手は、そのままに。
「……コンビニでも寄るか、マジ腹減った」
「おごり?」
「何でだよ」
「さっきは指輪また買ってくれるって言ったくせに」
「見つかっただろーが! ……肉まんぐらいなら奢ってやる」
「飲み物もセットでしょ、もちろん」
「へーへー」
「あんまんも食べたい」
「2つも食ったら太るぞ」
「ゾロがあんまん買って、半分コしたらいいじゃない」
「…へーへー」
いつもと変わらぬ会話をしながら、2人は歩き始める。
ただいつもと違うのは
並びあう2人の距離と
繋がれたその手だけ。
2007/01/31 UP
88888リク。
ゲッターはカノコさまでした。
リク内容は『【渡。】【応。】の続き』です。
ツンデレ風なこの2人、なかなかラブくなってくれませんでしたが。
今回はようやく手を繋いだよ!!(笑)
ナミさんが素直になればゾロはそれを茶化したりはしないので、
普通にラブくなるんだろうけどなぁ。
うーん、テンポがいまいち…。
軽くスランプ中ですが、とりあえず頑張った!
てかこんなオチ、他でも書いた気ぃするけど気のせい?あれ?
……まいっか。
嫌よと言われても押し付けます。
返品は不可です(笑)。
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