応。
「あれゾロ、待っててくれたの?」
「ナミ、コレやる」
「・・・・なによ、コレ・・・」
「・・・・・・何だろな・・・?」
「はい?」
同じクラスで、何だか仲良しで。
お互い多分好きなのに、それを口にしようとはしない。
友達以上、・・・でもそれに続く言葉は無い。
そんな2人だったが、バレンタインの日。
ナミが一歩踏み出した。
手作りのチョコレート。
ゾロだけのために作って、ゾロだけにあげた。
いい加減自分の気持ちに正直になるべきだと、ナミは考えていた。
それはゾロも同じだっただろうし、
その意味を知った上で、チョコを受け取った、・・・はずだった。
それなのに、ホワイトデーの日にゾロは何もしてこなかった。
催促するのも何だか悔しいし、
かと言って冗談ぽく強請るのも空しい。
結局ナミはゾロから何の返答も無く3月が過ぎ、4月5月6月、そしてとうとう7月を迎えてしまった。
最初の週の月曜日。
人気の無くなった放課後に、ゾロは委員会で遅くなっていたナミを待ち、
ようやく教室に戻ってきたところで小さな箱を押し付けた。
ゾロはそれを渡したまま黙ってしまい、
ナミはナミで、今日この日にゾロから何かを渡される、ということに動揺を隠せない。
この日は7月3日。
ナミの誕生日だった。
ゾロが自分の誕生日を知っていたのかは知らないが、
この状況はどう考えても、誕生日プレゼントだろう。
ナミはその箱を握り締めて、顔が赤らむのを隠すために俯いた。
「・・・・ホワイトデーに何もくれなかったくせに」
誤魔化すように、ボソリと呟く。
ゾロは頭をボリボリと掻きながら答える。
「ホワイトデーっつったって、何渡すんだよ」
「何って・・・・お返しよ」
「お返しって何だ」
「・・・・ゾロ、そういうお返ししたことないの?」
「無ぇ」
「・・・・チョコ貰ったことは?」
「あるけど、知らねぇヤツに返す義理は無ぇ」
「・・・結構罪な男だったのねあんた・・・・」
意外なゾロの一面を見た気がして、ナミは苦笑した。
「大体、ホワイトデーって何だよ。所詮は菓子メーカーの策略だろうが」
「だーから、3倍返しする日よ。策略だろうが何だろうが」
「意味解んねぇ。で、バレンタインは告白する日か?」
「こっ・・・、ま、まぁ色々よ」
自分がバレンタインにチョコをあげているだけに、『告白する日』と答えるのが恥ずかしいナミであった。
だがゾロは平然として、「ふぅん」と返事をしただけだった。
「・・・で、今頃ホワイトデーなの?」
「違う。 誕生日だろ?」
念のために保険をかけてみたが、やはり誕生日ということをゾロは知っていた。
ちょっと嬉しくなって頬が緩んでくるのをゾロに悟られぬよう、ナミは必死に平静を保つ。
「誕生日になら、渡す意味も解る」
「・・・・意味って、なに」
「・・・・じゃあ聞くが、お前のあのチョコの意味は何だ?」
「・・・・何ヶ月も前のこと聞かないでよ!」
今度はゾロの目の前で顔を真っ赤にしてしまい、ナミは慌てて顔を背ける。
ナミのその顔を見てゾロの顔も赤くなっていたことに、ナミは気づかなかった。
「うるせぇな、ちゃんと答えろよ」
「・・・・・・」
「・・・じゃあコレはやらん」
「あっ!」
そう言って、ゾロはナミの手から箱を奪い取る。
「欲しけりゃ答えろ」
「・・・・・・」
何でそんなに偉そうなのよ、と思いつつ、ナミは赤い顔でゾロを睨む。
「・・・・・義理」
「・・・・・あ?」
「・・・・じゃあ、ない」
「あぁ!? はっきり言え!」
「耳が悪いの!!?」
「お前がボソボソ言うからだろ!!」
言うべきことは甘いはずなのに、何故か喧嘩腰の2人。
ナミはさらに顔を赤くして怒鳴った。
「義理じゃあないって言ったのよ!!」
「じゃあ何だよ」
「察しなさいよバカ! 義理じゃなかったら何!!?」
何だかもう半泣き状態で睨んでくるナミを見て、ゾロは箱を再びナミに押し付けた。
「・・・・ほら」
「・・・・」
ナミは手の中に戻ってきたそれを、両手で包んでじっと見つめる。
「・・・・で、あんたのコレは何」
「・・・・お返しだ」
「意味があるんでしょ」
「・・・・だから、お前のチョコのお返しだ」
「・・・・開けるよ?」
「勝手にしろ、もうお前ンだ」
今度はゾロが顔を赤くして、ナミから目を逸らす。
ナミはその箱の包装紙を剥がして、中身を見る。
指輪だった。
シンプルな銀の指輪。
高校生に買える程度のモノなので高価ではないだろうが、
それでもきちんとケースにおさめられていた。
「・・・・こんなの、私が義理チョコだって言ってたらどうするつもりだったの」
「『義理じゃあない』んだろ?」
もしかして、コレを買うためにあれからバイトとかしてたのかしら、とか。
一人で買いに行ってこれを選んできたのかしら、とか。
色々考えて、それが全部アタリな気がして、ナミはクスリと笑った。
「ねぇ、これって告白?」
「・・・・知るか!!」
ナミが微笑みながら言うと、ゾロは真っ赤になって向きを変え、教室から出て行こうとする。
「ちょっと!知るかって何よ! どこ行く気!?」
「うるせぇ、今日は終わりだ!!」
「何よそれ!!」
ナミは慌てて鞄を掴んでゾロの後を追う。
片手にはしっかりとプレゼントを握って。
この2人が正式に『オツキアイ』するのは、まだもう少し先になりそうだった。
2006/08/04 UP
『【渡。】の続き』
6/16にリクくれた方、こんな感じでーーー・・・。
ツンデレ同士だとなかなか進まない(笑)。
追記(2006/08/06)
カノコさま(SUPER★NOVA)がイラスト描いてくれたよーー!!!!
ありがとーー!!
コチラvv→■
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