料。
「足りねぇなー」
「…お昼食べたんでしょ?」
「パンじゃ物足りねぇ」
ゾロはあんぱんにかぶりつきながらそう呟いた。
午後の一つ目の授業が終わり、チャイムが鳴ると同時にゾロは鞄からパンを取り出しかぶりついた。
「いつも豪華な2段重ねのお弁当じゃないの。それでも足りないの?」
「今日は弁当は無ぇし、昼もパン1個だぜ? 足りると思うか?」
「それは?」
「昼休み終わる直前に、購買のオバチャンに貰った」
「あ、そ」
どうやら校内でのゾロの人気は、購買部のオバサマにまで及んでいるらしい。
ナミはそう考えて、ゾロがあっという間にパンを食べ終えるのを見つめていた。
「もっと買えばよかったじゃないの」
「金が無い」
「ていうか、何でお弁当無いの?」
「親は今日から2週間、息子を置いて海外旅行」
ゾロはパンの包みを丸めて、鞄の中に押し込んだ。
それから物足りない顔で腕を伸ばして机の上に倒れこむ。
「2週間!? うらやましい!」
「こっちは帰ってくるまでに飢え死にだ…」
ゾロがわざとらしく元気の無い声で呟いたので、
ナミは思わず噴出してしまい、ジロリと睨まれた。
「ゾロ、料理できないの? 晩御飯どうするのよ」
「炒めるだけ、とかなら何とかなるけどなぁ。2週間は厳しいかもな…。弁当なんざ論外だ」
「ふーん……」
「しょうがねぇ、購買行って恵んでもらおう」
「コラコラ」
「冗談だ、ツケといてもらう」
冗談なのか本気なのか、ゾロはそう言って立ち上がり教室から出て行った。
その日の放課後、ナミは本屋にいた。
ある一角で仁王立ちし、広げた雑誌と睨みあう。
『好きな人へ、毎日のお弁当』
気付かぬうちに、ナミは軽く10分はその本を睨み続けていた。
ペラペラとめくり時々手を止め、それからまた表紙の文字に目をやる。
何度かそれを繰り返していると、ふと背後に人の気配を感じた。
振り返ろうとした矢先、その人物が声を発した。
「そんなの作ってやる相手、お前にいたのか」
振り返ったナミは一瞬固まり、それから思わず声を上げた。
周りの人がその声に反応して驚いた顔をしたので、慌てて口に手を当てて誤魔化す。
「……ゾロ、急に後ろに立たないでよ!」
「誰に作んだよ」
抗議も無視し、ゾロはじろじろとナミが抱えている本を見る。
はっと気付いて、ナミはその本を背中に隠した。
「べつにっ、か、関係ないでしょ」
ナミは動揺しつつもそう誤魔化した。
ゾロは素早く手を伸ばし、ナミの背中からその本を奪い取る。
「ちょっと!」
「……ふーん」
本のタイトルをチラリと見て、ゾロはすぐにそれをナミに返さず棚に戻した。
「あ、もう!」
「じゃあな」
「…あ、ゾ、ゾロ!」
「何だよ」
背を向けて店から出て行こうとしてゾロは、不機嫌そうな顔で振り返った。
ナミは顔を赤くしつつ、口篭る。
「……あー、あの…」
「何だよ」
「ゾロって、好き嫌いある?」
「……あ?」
唐突なナミの質問に、ゾロは片眉を上げる。
その顔を見て、ナミはさらに顔を赤くして両手をブンブンと振る。
「そのー、た、例えばよ!? お弁当のおかずとかで………」
「………」
そこまで言って口を噤む。
その様子をゾロは無言で見ていたが、近づいていって先程の本を手に取った。
ナミにそれを押し付けて、ニヤリと笑う。
「好き嫌いは無いぜ、おれはな」
ナミは真っ赤になって、ぎゅうと本を胸に抱える。
「べつにこの本は…っ!」
「じゃあな」
先程の不機嫌さとはうって変わって、軽い口調でゾロは店から出て行った。
ナミは店の出口をしばらく見つめていたが、
やがて押し付けられたその本を抱えて、レジへと向かった。
翌日以降、ゾロが昼時に『腹減った』と嘆くことは無くなった。
『モテモテゾロに手作り弁当を渡したくても渡せないナミ』
あれ、渡したくても渡せない?
ガッツリ渡してるよ!?
あれー?
ここで言うのも遅いが【特。】【勝。】の2人(転校生ゾロ、一目惚れナミ)だったりします。
てか何かこのゾロ、むかつくな(笑)。
10/15にリクくれた方、これじゃダメ?
2006/12/16 UP
生誕'06/NOVEL/海賊TOP
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