特。
学生にとって『転校生』っていう響きはやっぱり特別で。
それが異性だったりした日にはもう、みんなそれぞれ色んな期待をしちゃうわけで。
私も例に漏れず。
でも少女漫画じゃあるまいし、そんなかっこいい転校生なんてそうそう来るモンじゃない。
だからあまり期待はせず、だけど少しは胸を膨らませて。
その人物が教室に入ってくるのを待った。
そう、こんな少女漫画的展開、現実にありえない。
転校生に一目惚れ、だなんて。
転校生、ロロノア・ゾロは、転校2日目にして既に女子生徒から熱い視線を送られる立場になった。
緑色の髪に、片耳には3連のピアス。
長身で細身の体に、くっきりとした鋭い二重の目。
そして自己紹介をした低く響く声。
第一印象からして、『転校生』のインパクトはなかなかだった。
転校初日の英語の授業、教科書を読んだゾロは流暢な英語を披露した。
父親の仕事の関係で小さいときは外国で過ごすことが多く、英語は日常的に使えるらしい。
そして翌日の体育の時間、サッカーのゲームでゾロはハットトリックを決めてみせた。
英語が喋れてスポーツ万能。
この時点で、男なら顔は多少ダメでもモテるもの。
ゾロは顔もいい上に、『転校生』というブランドも加わっている。
モテないわけがなく、学年を越えて校内である意味『ブーム』になリ始めていた。
「おいナミ、教科書見せてくれ」
「なによゾロ、まだ揃ってないの?」
「あぁ、てか忘れた」
「もう、しょうがないわね!」
そこがちょうど空席で、さらには私がクラス委員長というのもあってか、
ゾロは私の隣の席になった。
転校してきてから1ヶ月、大分ゾロの性格も分かってきた。
まず、他のクラスや学年の女子たちが憧れるほど、イイ性格をしていない。
無愛想だし口は悪いし、いつも眠そうで実際授業中もよく寝てるし。
近くで見れば結構凶悪面でもある。
私は座ったまま机を少し近づけ、ゾロに教科書が見えるように移動する。
悪ぃな、とゾロは言ってガタガタと音を立てて、私の机に自分の机を引っ付けた。
高校生にもなって机を付けて並べるのは何だか恥ずかしい。
でもゾロは構うでもなく、私の教科書を勝手に引っぱって2人の間に置いた。
「どうせ寝るくせに」
「いいんだよ、頭には入ってっから」
「わぁーー、ムカつく発言」
ゾロは英語だけではなく、他の教科もデキるらしい。
授業中に当てられた問題で言い澱んだことは無いし、噂では編入試験をほぼ満点で通ったらしい。
何気なく隣を見たときは大概ウトウトしているくせに、口で言うようにちゃんと頭に入っているのだろう。
「お前だってそんなモンだろ」
「私はマジメだもん、授業もちゃんと聞きます〜誰かさんとは違います〜」
「ふーん、・・・お前って、学年トップとか?」
「まぁね」
椅子に背もたれて欠伸をしているゾロに、ふふんと得意気な顔をしてみせる。
自慢ではないが、私の成績もイイ方だ。
成績は少なくとも3位以下になったことはない。
ここ最近は常に学年トップだ。
「なら次の試験で、おれがお前を抜いてやる」
「・・・・すごい自信ね」
さすがに呆気に取られてゾロを見ると、ニヤリと笑っていた。
「まぁな」
「いいわよ、抜けるモンなら抜いてみなさい」
「じゃあ、何か賭けようぜ」
「え?」
「負けた方が、1位になった方の言うこと聞く」
ゾロは何やら楽しそうに顔を寄せてきて、子供のように笑って言った。
そんな顔もするんだ、と思ってから慌てて平静を装う。
「な、何よそれ! ・・・まぁいいけど、私が1位になるんだから」
「楽しみになったな、テストが」
ゾロと話してるとき、私がどれだけ緊張してるか、コイツは分かってるのかしら。
私のことをナミと呼び捨てにする。
クラスの女子の誰よりも私に話しかけてくれる。
他の女子は呼び捨てになんかしないし、それ以前にこんな風に話したりもしない。
私には、滅多に見せない笑顔を向けてくれる。
男子はともかく、他の女子に笑いかけてるトコなんかまだ一度も見てない。
それを特別だと錯覚してしまうくらいには、私だって普通の女の子なのだ。
とりあえず、次のテストは絶対に1位を取らなきゃ。
私だけの『特別』が欲しいから。
2006/08/08 UP
『転校生ゾロに一目ぼれナミ』
ナミ誕リク23番の逆バージョン、ということでした。
6/17にリクくれた方、一応一目惚れしてるんですよ(笑)。
うーむ、この頃ネタづまり・・・?
そしてどうしてもゾロを頭の良い子にしてしまう、ゾロ好きmarikoなのでしたっ。
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