勝。





上位100人の名前が張り出された順位表を見上げて、思わず唸ってしまった。





 「ナミ」





後ろからゾロが声をかけてきた。
聞こえなかったフリをしたかったがそうもいかず、渋々振り返る。
ゾロはニヤニヤと笑って隣に立ち、同じように順位表を見上げた。




 「おれの勝ち」

 「・・・・・・」




ほんの数点。
それだけの差で、私は学年首位の座をゾロに奪われた。




 「負けた方が言うこと聞くって賭けだったよな?」

 「・・・そんな約束したかしら?」

 「惚けてもムダ」

 「・・・分かったわよ、雑用でも何でも言いつければ!」



ぷぅっと頬を膨らませてゾロを睨みつける。
その顔を見てゾロは噴出し、向きを変えて教室の中に戻った。



 「人の顔見て笑うんじゃないわよ」

 「お前が変な顔するからだろ」



くっくっと笑いをこらえることもせずゾロはまたチラリと私の顔を見て笑う。



 「もう! こんな失礼なヤツに負けるなんて!!」




ゾロの後を追いながら、
同じように順位表の前に集まっていた、一部の女子生徒たちから妬みの混じった視線を感じた。

転校してきてから、いまだにゾロの人気は継続中だ。
今回の成績発表で首位を取ったことでさらにファンが増えるだろう。

男子からは逆に妬みを向けられそうだが、そんなこともなかった。
どれだけモテようとも、ゾロは一向に気にしないし(眼中に無いようだ)、男子としかほとんど話さない。
最初はとっつきにくいようだが、話してみると意外と人懐こいのだ。
男子はそれを知っているから、モテまくるゾロにも意外と好意的だ。
自分の席に戻るまでの間に、数人の男子から「すげーな!」と肩を叩かれている。



自分の席に座ったゾロは早速あくびをしている。

寝てばっかりの男に、何で負けたの私。




 「で、何よ」

 「何が?」

 「賭け」



そう言うと、ゾロは椅子を斜めに傾けながら天井を見上げる。



 「そうだな・・・、付き合ってくれ」

 「へ?」



思わず固まる。
ゾロは相変わらずギシギシと椅子を鳴らして、うーんと伸びをした。



 「あぁ、放課後な」

 「・・・え? あ、あぁ、放課後ね、あぁそっか、うん」

 「何だ?」

 「な、何でもないわよ」



一瞬とはいえ勘違いしてしまった自分が恥ずかしくて、ゾロにそれがバレないように慌てて正面を向いた。










 「なぁナミ、お前ゾロと付き合ってんのか?」



昼休みが終わる頃、クラスメートのウソップが話しかけてきた。
同じ中学出身で、男友達のうちでは一番仲がいい。

自分の席で次の授業の準備をしていた私の傍に寄ってきて、
前の人の席に後ろ向きに座って声を潜める。



 「どうなんだ?」

 「・・・な、何でよ。そんなわけないでしょ」



ギクシャクと何とかそう答えると、ウソップは意外そうな顔をした。



 「え? 違うのか? てっきり・・・」

 「違うわよ」

 「だってよー、ゾロって女子じゃお前としか話さねぇじゃねぇか」

 「・・・それは、席が隣だからじゃないの・・・」

 「うーん、そーなのか?」



顎に手を当てて考え込むウソップは、ゾロが教室に入ってきたのに気付いて慌てて自分の席に戻った。





まわりにはそう見えてるのだろうか?
ゾロはそれを知っているのか、どう思っているのか。
冗談めかして聞いてみる勇気はなかった。











放課後、どこに行くのか訳の分からないまま、とりあえずゾロの後について通りを歩く。

駅近くのファミレスの前でゾロが立ち止まり、スタスタと中に入って行った。



 「入るの?」

 「おう」



店員に案内されてゾロはさっさと窓際の席に座った。



 「ねぇゾロ、付き合うってこの店に?」

 「あぁ」

 「・・・・・?」



メニューを広げたゾロを首をかしげて見つめていると、もうひとつのメニューを突き出された。



 「オゴってやっから、お前も何か頼めよ」

 「何かって、ゴハンの前なのに」

 「デザートとか」

 「うーん、そっか。本当にオゴリ?」

 「おぅ」



やはり私も甘いモノには弱い。
デザートのページを開いて、ケーキにしようかパフェにしようか迷いながら目で追った。

2,3分悩んだ結果ケーキセットにして、顔を上げてゾロを見る。



 「私決まったー。 決めた?」

 「あぁ」



女の店員を呼んで、オレンジケーキのセットを頼む。
ゾロは?と目を向けると、ゾロは何も言わずメニューの一箇所を指差して店員に目で告げる。
店員はにっこりと頷いて、伝票に記入して引っ込んで行った。


 「何頼んだの?」

 「デザート」

 「あ、ゾロもなの? 普通に御飯系頼んだんだと思った」

 「んー」





それからまずは私のケーキが運ばれてきて、ゾロを見ると顎で先に食べろと促された。
遠慮なくフォークを手に取る。


小さく切ったケーキを口に運ぼうとしたところで、ゾロの分も運ばれてきた、

それを見て、思わず口の手前でフォークが止まる。





 「・・・それ、頼んだの・・・?」

 「あぁ」





ゾロの前に置かれたのは、大きなチョコレートパフェ。





 「・・・甘党?」

 「あぁ」



ゾロは何だか嬉しそうな顔で、スプーンを手にしてクリームを掬い取る。
口にパクパクと運びながら、ゾロは別のスプーンを突き出した。



 「お前もコレ食えよ」

 「・・・な、何かすごく意外・・・」

 「・・・こういうの、野郎だけじゃ食えねぇだろ」



さすがに恥ずかしいのか、ゾロはうっすらと顔を赤くした。

確かに、男友達とこんなトコに来てチョコレートパフェなんか頼めないだろう。
私がいれば誤魔化せるってこと?

フォークをひとまず置いて、
苦笑しながら受け取ったスプーンを遠慮なくパフェに突っこんだ。



 「甘っ」

 「それがイイんだ、バカ」

 「ケーキも食べる?」

 「後でくれ」



クスクス笑うと、ゾロも若干照れながら笑った。



もしかしてこれは、男子も知らないゾロの一面じゃない?

また少しの優越感に浸りながら、ゾロと一緒に同じパフェを食べた。








奢ってくれるというゾロの言葉はありがたくそのまま受け取って、
店を出て2人で駅までの道を歩く。



 「あーー、食った」

 「てかさ、家帰ったらゴハンあるんでしょ?」

 「あぁ」

 「それなのによく食べるわね、あんな大きいの」

 「お前が半分近く食ったんじゃねぇか」

 「ゾロが一人で食べるの恥ずかしい〜って泣きついてきたからじゃない」

 「誰が泣きついたって?」



ゾロが眉間に皺を寄せて見下ろしてくる。
笑いをこらえていると、ゾロは口を尖らせて前に視線を戻した。



 「久しぶりだからな」

 「甘いの?」

 「あぁ」

 「ふーん」



横目でゾロを見ると、なんだか満足気な顔をしていた。
それがかわいくて、またこっそりと笑う。





 「また頼むな」

 「え?」

 「付き合ってくれ」

 「・・・・・・」



今の『付き合って』は、甘いモノを食べるのに、って意味。

そう自分に言い聞かせて、顔が赤くなるのを必死で抑えつつ笑顔を作る。



 「い、いいわよ」

 「・・・よし」



ゾロはニヤリとした笑顔を寄越してくる。
目が合って、今度は赤くなる顔を誤魔化せなかった。




 「じゃ、そういうことでよろしく」

 「う、うん・・・?」




あぁもう、勘違いしちゃうじゃないのバカ。







翌日。
窓際で堂々と同じパフェをつついていた私たちを目撃したらしいウソップから、
「やっぱりお前ら付き合ってんじゃねーかよ!ウソつくなよー薄情モン!友達甲斐の無ぇヤツらだな!」
と何故か涙目で訴えられた。




『【特。】の続き』
転校生ゾロに一目惚れしたナミ、のSSの続きですね。
前回賭けをしたまでで尻切れ終わりしたら、やはり続きリクが来ました(笑)。
ゾロの態度は『あえて』なのか『無自覚』なのか・・・。
それは私にも分からない・・・(えーー)。

ゾロは秀才で甘党、を推します。

9/30にリクくれたみちりんサン。
こんなモンで・・・。

2006/11/08 UP

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