銀色夏生 「恋が彼等を連れ去った」 (幻冬社文庫)
夢のほとんどはかなわないと
知っている僕は
強く願えば夢はかなうなんて
決して
冗談でも言わない
夢のほとんどは
かなわないと
言うと
君は
悲しい顔をする
でも
夢はかなうと思っていた頃よりも
今がずっと
自由だよ
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白い雪はいくたびも
季節をおおいつくす
雪の影は青い
冷たく
はかり知れない
傷つけば救いがたく弱くなるくせに
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どんな小さなことでも
恋とか恋人とか愛などを
連想させるすべてから遠く離れたい
すこしでもそんなニュアンスをもつものが耳にはいると
今の僕は心が暗くなるから
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毎日毎日眠れないから
どうか今夜は眠れますようにと
神様にいのる
もしいるのなら
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「幸運な失敗」
失敗も成功も
同じように僕を
目的へと近づけてくれた
階段のひとつだった
もしあれが成功していたら
今の僕はないだろう
どこか別のところへ
行っていただろう
たとえば
幸運な失敗
というのもある
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人は出会い
人は別れる
続く人もいれば
終る人もいる
窓ガラスをつたう
雨のしずくを見てるとわかる
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殻にとじこもりたい
海底の貝のように
殻にとじこもっていたいのに
いつもだれかが邪魔をする
殻にとじこもって
思いに深く沈みたい
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お別れに愛をあげましょう
ダイヤモンドのように堅く
アメ玉のように甘く
虹のように七色の
涙の形のお別れに
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