トレース おまけ





目の前で睦み合う男女を、ナミは呆然と見つめていた。
ゾロの股間に顔を埋める女は、いったい誰なのか。
あの──
自分と瓜二つな女はいったい──


街からの帰り道で、ゾロを見つけた。
また船とは違う方向に歩いていく。
今朝、気まずい事があったのであまり顔を逢わせたくなかったのに……しょうがないと声をかけようとした時、肩に何か担いでいるのが見えた。
人間?それも女で……自分とよく似た明るい髪。
ギョッとした。あんまりグッタリとしてるので、死んでいるのかと思った。
だが、少しだけ覗かせた顔があまりに自分に似ていて……あんまりビックリしたので、声をかけ損ねてしまった。


森の奥へとゾロは歩いていく。
迷子体質の癖に、自分の家の庭のように自信を持って歩いていく。
物の怪に騙されているような気がして、ナミは何度も声をかけようとした。
だが、ゾロの背中でゆらゆらと揺れる真っ白い腕を見ていると、何だか胸がドキドキして……黙って後をついていってしまう。
やがて辿り着いた気持ちの良さそうな場所で、ゾロとその女は草原に座り込んで楽しそうに話している。
改めてその顔を木陰から覗き見て、ナミはふにゃりと腰を落とした。
よく似ているなんていうものじゃない。全く同じ顔だ。遠く聞こえてくる声も。笑い方も。
(なんなの!)
頭が逆上せたようにぼぉっとなる。こめかみがドキドキと脈打って……。
絶対に何かに騙されていると理性が叫いているのに、声が出ない。
やがて、もっと信じられないことが─ いや、ひょっとして予感はあったかもしれないが ─起きた。
女が─自分が─甘えるようにゾロに近づいていく。ゾロがそれを受け入れる。
「これが欲しいか」とゾロの声が聞こえる。
「欲しい」と自分の声がそう頷く。
そして、自分は男の股間に顔を降ろした。
ゾロがそのオレンジ色の頭を、優しそうに撫でている。
長い長い奉仕を、ナミは食い入るように見つめていた。
そこで行われてる行為は、恐るべきも恥ずべき行為の筈なのに、魅入られたように動けない。
自分があそこで男と励んでいるなら、今ここにいる自分は何なのか。
自分自身が判らない。
巨大な夢の世界に巻き込まれてしまったようだ。
身体が震えているのは、恐怖なのか怒りなのか、それとも興奮のせいなのか。
自分の瞳が潤み、頬が紅潮していることに、ナミは気づいていた。
下着はすでに濡れ始めている。
やがて、ゾロが自分を押し倒し、植物の薄皮のような衣を剥がし出す。
その手が自分の股間を嬲りながら、寝そべった自分に唇を落とす。
それから両足を割って、間に入り、白い足をその手で担ぐ。
自分の脚の間で、ゾロが動いている……。
パキンという乾いた音が、すぐ隣で響いた。
飛び上がりそうなほど驚いて振り返ると、小さな野兎が自分を見上げている。
その黒い大きな瞳を見た途端、カァッと顔が熱くなった。
立ち上がると、急いでその場を離れようとした。
心の中で、あの緑色の頭をした男に散々悪態をつく。
(考えられない!あのムッツリマリモ!よくも私にあんな事を……!帰ってきたら、ボコボコに……)
そう罵倒しながらも、自分と絡み合う男の姿が目に浮かぶ。
(まさか……私の願望じゃないわよね?)
そんなバカな事が!と、ブンブンと首を振る。
己の心に捕らわれていて、足下がおろそかになっていた。
「キャッ!」
木の根につまずいて、前のめりに転びそうになる。
体勢を立て直そうと、足をもつれさせ、転んだ先に何かとぶつかった。
それのおかげで、酷い怪我をせずにすんだようだ。
「……アタタ……なに、コレ?」
ナミは訝りながらも、その白い繭のようなものを見つめた。
手を離そうとすると、強い粘着がある。艶々としたノリのように、ベットリと張り付きなかなか手から離れない。
「……な、なに?」
流石に気持ち悪い。大声を出せば、ゾロに聞こえるかもしれない……と同時に、あの自分を抱くその姿がまざまざと脳裏に浮かんだ。
「だ、ダメよ……これぐらい自分で……」
その時、繭がゴロリと動いた。
その動物のような胎動にギョッとし、慌てて手を離そうとする。
だが、粘着は更に強くなったように手が外れない。
ナミは知らない。ゾロが最初に触った繭とは、色艶も粘着力も全然違うことを。
サァッと顔から血の気が引いた。
振り返り、大声で男の名を呼んだ。
「ゾロッ!」
バリバリと殻の割れる音と同時に、何か力強い手で手首を握られた。そして声が。
「……ぞろ?」
あまりに聞き覚えるある声に、戦慄が走る。
恐る恐る振り返ったナミは、驚愕のあまり口がポカンと開いてしまった。
パッカリとヒビの入った殻から現れて自分の腕を掴んでいるのは、あの緑頭の剣士と同じ顔だった。
それは興味深そうにナミをじっと見つめ、獣のように己の唇を舐め上げた。

その時、さっきゾロが一緒にいた「自分」が何なのか、ナミは判ったような気がした。





ナミさんが吸い尽くされてしまう!!(笑)

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