会。
「お前さ、彼女作んねぇの?」
「別に作らないわけじゃねぇよ・・・そういう女がいないだけだ」
「会社とかにさ、イイ子いねぇの?」
「・・・・別に、そういう気にならねぇな」
最近サンジはやたらにこういう事を聞いてくる。
本人からしたら、
ロビンと別れたあと、おれがいつまでも独りなのが気になるんだろう。
別に焼け木杭に火が付くのを心配しているわけではなく、
単におれを心配しているか、気を遣ってるだけなのだろう。
おれとしては、ロビンのことを引きずっているつもりは無い。
おれたちはどちらかが浮気をしたとか、そういうキッカケで別れたわけではない。
そうすることが今の2人にとってのベストだと判断したから、
合意の元で別れたのだ。
ロビンは今でも友人として大事な存在だし、あいつもそうだろう。
単に、恋愛感情では無くなっただけの話だ。
彼女を作る作らないも、惚れるような女に出会っていないからであって、
この先一生独りでいるなどと、別に思っちゃいない。
「あのさ、ゾロ」
「何だよ」
「合コンしようぜ」
「・・・・・何で」
家に押しかけて夕飯を食っていると、サンジは唐突に切り出してきた。
サンジはコックとして働いている。
こうしてたまに、お互いの仕事が早く終わったときは、
サンジはおれにメシを作ってくれる。
おれも一人暮らしは長いし、
自分が食うメシを作る程度はできる。
だがやはり、サンジのメシが美味い。
持つべきものは、友達だな。
「店の先輩がさ、女の子集めてくれるって」
「てめぇ、ロビンに言うぞ」
「ちょ、誤解すんな!浮気するわけじゃねぇぞ!」
ジロリと睨みながら呟くと、サンジは慌てて両手を振る。
「合コンってのは、男女の友情の輪を広げつつ、
それでいて独り身の人間には縁があればそういう相手が見つかるかもね、
っていうお食事会だ!!」
「・・・・へぇ・・・・」
「そんな目で見るな!おれはロビンちゃん一筋だぞ!やるかコラ!?」
真面目な顔でファイティングポーズをとるサンジに、苦笑する。
「知ってるよ、そんなの」
「・・・・・・・あのなゾロ」
「何」
「おれな、ロビンちゃんにプロポーズしたんだ」
「・・・・・・、へぇ」
一瞬体が硬直したが、すぐに気を持ち直した。
気にしてないとは言いつつも、さすがに驚いた。
「で?断られたか?」
ニヤリと笑ってそう言うと、サンジが顔を赤くして叫ぶ。
「んな訳ねぇだろ!!OKだよOK!!!」
「冗談だ」
「・・・だからな、お前もそろそろ彼女の一人や二人・・・」
「一人でいい、二人もいらん」
「彼女の一人をだな、見つけた方がいいんじゃねぇ?」
「・・・・・まぁ、そうかもな」
別に2人の婚約に触発されたわけでもないが、
サンジがあまりに一生懸命勧めてくるので、
まぁ行くくらいならいいか、と思い返事をした。
「だろ?だろ?だから合コンしようぜ!」
「お前も来んのか?」
「お前がヘマしねぇようについてってやるよ!」
「・・・・・・・・そりゃどうも・・・」
「だからそんな目で見るなぁ! ・・・・ロビンちゃんには、内緒な?」
「・・・婚約した矢先に合コン出席か・・・」
「お前のためだってーー!!」
「はいはい」
なかなかの美人だった。
この夜やってきた女たちは、
さすがにサンジの知り合いの紹介だけあって、皆それなりに美人だったが、
目の前に座っている女の前では、残りの女は皆引き立て役に見えてしまう。
それほどの、美人ではあった。
が。
仮にも合コンに来といて、
何でこの女は一人でこんなにクソ強ぇ酒ばっかり飲んでやがんだ?
何しに来たんだコイツ?
仕事が押して、おれだけが遅れて店に入ったときには、
他のヤツらはもう飲み始めていて、とりあえず空いていた席に座った。
そしてその正面に座っていたのが、この酒豪女。
正直、他の女には興味が湧かなかったが、
唯一、この女には気を惹かれた。
何が、というと上手く言葉にならないが、
オレンジに近い明るい髪の色とか、でけぇ目とか、
そういう外見ではない、何かに惹かれた。
・・・・・酒呑みの、勘だったのか???
「おい、おれにもソレくれよ」
「・・・・強いわよ、これ?」
女が何故か怯えた顔で返事をする。
そんな強ぇ酒ガバガバ飲めるような女が、何でおれに怯えんだよ。
まぁ確かにおれは、初対面のヤツには大抵ビビられるが。
そう思いつつ、グラスを無言で突き出す。
女はおずおずと注ぎ、おれはそれを一気に飲み干した。
呆気に取られた様子で女は見ていた。
「・・・・うめぇな、コレ」
「・・・・・・・でしょ!?でしょ!!このお酒ね、このへんの店じゃここにしか置いてないの!!」
急に明るくなった女は、その後もベラベラと喋り出し、
メニューを見ながらこれも美味しいあれも美味しいと、
次々に注文し始めた。
結局他のメンバーとは線を引いた状態で、
2人で酒飲み大会となってしまった。
女がトイレに立ったあと、サンジがこっそり近づいてきた。
「おいゾロ、いい感じじゃねぇか」
「ただの酒飲み相手じゃねぇの」
「お前の酒の量に負けてねぇな彼女。それにめちゃくちゃ美人だしvvv」
「・・・まぁ、な」
「だろーー!!お前いっとけよ!!」
「うるせぇ酔っ払いが」
「番号聞いたか?」
「・・・・・・・・」
サンジが脇腹をつついてくるので、そっぽを向く。
「ちゃっかりしてんじゃねーかお前!!」
「うるせーな!あっち行け!」
トイレから戻ってきた女は、どうも調子が悪いらしい。
「どうした?」
「・・・・さすがに、ちょっと飲みすぎた・・・・強いのねゾロ・・・・」
いつの間にやらおれの名前を知っている。
そういや入ったときにサンジが皆に紹介していた。
先程女から渡されたメモに目を落とす。
携帯番号とアドレス、そして名前。
「ナミ、もう帰るか?」
「・・・・帰る」
ナミがフラフラとジャケットとバッグを持って立ち上がるので、
おれもそれを支えるように立って、席から離れた。
「ちょっと、もっかいトイレ行って来る・・・・」
「あぁ、倒れんなよ」
「多分大丈夫・・・」
その間に他のメンバーに帰ることを告げて、
やかましく追い立てられながら出口へと向かう。
案の定サンジがついてきて、
ニヤニヤと笑いながら背中からがばっと抱きついてきた。
「何だよ、お持ち帰りか?」
「うるせぇな、悪酔いしたみてぇだから送ってくる。てか重い、離れろ」
「へーーー・・・・オオカミ作戦か・・・」
「作戦って何だ!てめぇと一緒にすんな」
「おれはいたって紳士だぞ」
腕をうっとおしく払いのけながら言うと、
サンジは心外だと言わんばかりに頬を膨らませてみせる。
男がやったって気持ち悪ぃだけだが。
「で?お前はいつ帰るんだ?」
「・・・・おれまで抜けると場がシラけるだろ〜?」
「・・・・・・ま、せいぜいバレねぇように気をつけろ」
「おう!おれはお前一筋だ!安心しろ!」
サンジのその言葉を聞いて、傍を通り過ぎようとした女が、
おれたちに不審かつ好奇の目を向ける。
とりあえず、サンジの頭を殴っておいた。
「おい、家どのへんだ?」
店を出て、フラつくナミの腕を取って支える。
「・・・こっから近いの・・・歩いて10分くらいで・・・」
「歩けるか?」
「うん・・・・」
うん、と答えておきながら、足元のおぼつかないナミの腕を掴んだまま、夜の道を歩く。
「あー、ちょっとラクになってきた・・」
「そりゃよかった」
とは言いつつ、掴んだ腕は離さない。
「・・・・・送りオオカミとか、なる?」
「・・・・・・・・・・・・何だよ、なってほしいのか?」
「別にー・・」
ヘラヘラと呑気に笑うナミに、溜息が出る。
まったく、おれでよかったな。
他の男じゃ、とうに食われてるぞ。
「・・・・酔っ払いは襲わねぇよ」
「・・・・酔ってなかったら、襲う?」
「・・・・・・・・・・・さぁ、どうすっかな」
ここはオオカミあたりになっとくべきだろうが、
酔った勢いは、やはり気に食わない。
「・・・・・じゃあ、酔ってないときにまた、会ってくれる?」
「・・・・あぁ」
「・・・ふふっ、今日来てよかった」
「何だ、乗り気じゃなかったのか?」
「合コンとかって、好きじゃないのよ。だからいつもお酒呑んでるの、一人で」
「へぇ、おれもだ」
「・・・・来てよかった?」
「・・・・あぁ、そうだな」
腕を掴んでいた手は、
いつのまにかナミの手に。
「・・・・・・・・あ、家ここ・・・」
「・・・本当に近ぇなクソ・・」
「本当、近い・・・」
「部屋まで行けるか?」
「うん、ありがと」
マンションの入り口前で、
お互い手を離すきっかけが掴めぬまま、しばし無言で立ち尽くす。
「・・・お前、明日日曜、休みか?」
「・・・・休み!」
「・・・・どっか、行くか?」
「・・・行く!!!」
「・・・・じゃあ、明日な」
「うん」
「おやすみ」
「おやすみ、ゾロ」
名残惜しく手を離し、ナミが中に入るのを見届けてから、向きを変え来た道を戻る。
運命なんぞ信じちゃいねぇが、
今回ばかりは、信じてみるのも悪くはない。
繋いでいた手が、まだ熱を持っている。
「『惑』の続きか馴れ初め」
10/14にリクくれた方。
馴れ初めで、いいですか・・?(今さら)
しかしこの2人、明日の時間とか決めなくていいんですか?(笑)
書きながら、『そういえばこいつら社会人だった・・』と思い出す。
いいんです、心はいつまでも10代です(笑)
2005/10/31
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