騙。













顔も見たくないとかほざきやがった、あの女。



いい度胸だ。
お望みどおりにしてやろうじゃねぇか。















夕食にはナミは現れなかった。
早速、顔を見ない気らしい。

なるほどな、と思って待つことなくさっさと食事を済ます。








キッチンを出て、ミカン畑へと行く。
木の間に寝転がって、下の様子を伺う。
ナミが階段を上って、キッチンに入るのを見届けたあと、
甲板に下りた。





 「あれゾロ、お前風呂行ったのかと思ってた」



階段を下りると、キッチン側の壁にもたれて、
夕食を済ませたらしいチョッパーとロビンが、ボードゲームをしていた。
もっと広いところでやりゃいいのに。



 「後ろにいた」

 「ふーん、トレーニングは?」

 「今日はちょっとな」

 「体調悪いのか!?」

 「そうじゃねぇよ」



船医の顔になったチョッパーとロビンを残して、風呂場に向かう。









浴槽にはつからず、シャワーだけで済ませて出た。



 「あ、ゾロ。風呂終わったか?」

 「あぁ」

 「じゃおれ入ろっと」



ウソップと交替して風呂場を後にし、ミカン畑に戻る。
チョッパーたちはいなかったが、ゲームがそのままになっていたので、
おそらくはキッチンに飲み物でも取りにいったのだろう。
ちょうどよかった。


通り際にキッチンの窓に目をやると、ナミの頭がちらっと見えた。
まだ夕食が終わっていないようだった。






風呂上りの水は我慢して、
木の根元にしゃがみこんで、片手にダンベルを持ち
暇つぶしに軽くトレーニングをしておく。


ロビンとチョッパーがグラス片手に出てきて、ゲームの続きを始めた。
あそこには誰もいない方がよかったんだが、しょうがない。






数分後、ナミがキッチンから出てきた。

案の定、おれを探している。
風呂場へ向かったらしく、それをニヤリと見ながら、
水を飲むためキッチンに向かった。



 「あら剣士さん、何してたの?」

 「風呂入ったんだよ」

 「・・・・ミカン畑でか?」

 「んなわけねぇだろ、あがってトレーニングしてたんだ」

 「ふーん」







キッチンに入って、皿を洗うコックの脇から、水をグラスに取る。



 「おいゾロ、ナミさんがてめぇ探してたぞ」

 「へぇ」

 「行ってやれよ。喧嘩したんだろ?」

 「あぁ、あとでな」




キッチンから出てすぐに、
ロビンたちには気づかれないように素早く、
階段を使わずにミカン畑に直接飛び上がる。

ふと視線を感じて船首に目をやると、ルフィがこちらを見ていた。
お互い何も言わないが、
おれが指を1本、口の前に立てると、
ルフィは笑って頷いた。







しばらくすると、ナミがキッチンにやってきた。
途中でロビンたちにも声をかけている。
おれの居場所でも聞いているんだろうが、
あいつらも今おれがここにいる事には気付いていないらしい。
・・・・ロビンの奴は、もしかしたら気付いてるかもしれねぇが。
どっちにしても、ナミにはバレなかった。



キッチンに入ってすぐに、ナミは出てきた。
その顔は、どう見ても怒っている。
まぁ、気持ちは分かるが。
顔を見せてやる気には、まだなんねぇな、悪ぃけど。







甲板でルフィにもう一声かけて、ナミは今日は諦めたらしく、
倉庫へと消えて行った。
あの様子では、今日はもう探さないだろう。
ミカン畑から抜け出して、男部屋へと向かった。



 「あれ、ゾロそこにいたのか?」

 「航海士さんが探してたみたいよ」

 「あぁ、別に大した用事じゃないだろ。おれは寝る」

 「おやすみ!」

 「あぁ、おやすみ」



男部屋への扉を開けるとき、メリーの上のルフィとまた目が会って、
お互いニヤリと笑う。
















翌朝、他の者は皆朝食に向かったが、一人残って部屋に寝転がる。
いつも起きるのはおれが最後だから、
別に誰も声をかけたりはしない。
そうしてなかなか出てこないおれを起こしに来るのは、大概がナミだった。
おそらく今日も、来るだろう。


タイミングを見計らって、男部屋を出る。
キッチンの窓の様子を見ながら、またもミカン畑へ。

根本からこっそりと顔を出して、下の様子を覗く。


やはりナミが出てきて、男部屋に降りて行った。
おれがいないのを知って、多分あいつは見張り台や甲板を回るだろう。
部屋からナミが出てこないうちに、キッチンに入る。



 「あれ?おいマリモ、ナミさんが起こしに行かなかったか?」

 「あ?来なかったぜ。行き違いだな」

 「ふーん・・?」



席について手早く食事を済ませ、ナミが戻らないうちに出て行く。



 「早ぇな」

 「腹減ってたんだ。ごっそさん」

 「はいどーも」



外に出て見上げると、ナミの頭が見張り台に見えた。
バレないうちに、ミカン畑にもぐりこむ。







キッチンに戻ってきて、おれがもう朝食を済ませたことを知ったナミは、
船中を走り回っているが、ここには来ない。

ミカン畑。
ここは絶好の隠れ場所だった。
ナミも、まさか探している相手が、自分のテリトリーにいるとは思ってもないらしい。
熱中すると、あいつ前しか見えねぇからな。
足元ちゃんと見ろよ、ナミ。










一日中ナミはウロウロとしていた。

あいつの生活パターンは知り尽くしている。
そのタイミングを計りながら、
おれはミカン畑やら男部屋やら、移動した。




















その翌日も同じこと。

いい加減見つけろよな、と思いつつ、
自分を探すために必死に走り回っている姿に、満足感を覚えている。

でも、まだまだだな。
反省が足りねぇよ。







その夜、風呂から上がって倉庫から出ようとしたところで、ナミの声に気付いた。

危なかった。

この時間は女部屋で海図の整理をしているはずだ。
どうやら、なかなか切羽詰ってきたらしい。



マストの裏に隠れて、様子を伺う。
どうやら、ナミはウソップに相談しているらしい。

ナミが話しかけても、ウソップは不思議そうに首をかしげるばかりだった。
他のクルーには、おれは普段どおりに会っている。
相談したところで、ナミの疑問は解決などしないだろう。





ウソップが部屋に戻り、残ったナミは一人で海を見下ろしていた。
背中しか見えないが、それでも何やら唸っているのは分かる。


そろそろ限界か。


そう思いながらも声はかけず、背中を見つめていた。







 『ごめんなさい』




小さく呟いた、ナミの声。




 『お願いだから、ゾロに会わせて』




今にも泣きそうな声だった。




 『ゾロの顔を見せて』








限界、だな。









声をかけると、ナミはゆっくりと振り向いた。
そしていきなり抱きついてくる。

この数日のことがバレないように、とぼけてみせる。
バレたら、リアルに殺される。
自分で仕掛けたとはいえ、よく考えたらなかなか命がけだったな。


ナミの追求を何とかかわしていく。
冷や汗ひとつかいていないつもりだったが、実際どうだったかは分からない。
普段のナミになら気付かれたかもしれないが、
今のナミが気付くことはなかった。
そんな余裕は無いらしい。


やたらに素直な言葉を吐き、しがみついてくる・



抱きしめてやりながら、その髪に指を通す。
数日ぶりの、ナミの感触。






限界きてたのは、こいつだけではなかったようだ。


おれもかなり、ヤバかったな。






姿』のゾロバージョン。
10/13に拍手でリクくれた方。
ゾロをどっちのサイドにもっていくか悩みましたが(決めてなかった)、
結局ゾロの企みということで・・。
サンジ&ロビンの策略にしようと思ったら、
つじつま合わなくなりました。
玉砕。
と、とりあえずこんな感じで!

2005/10/29

生誕'05/NOVEL/海賊TOP

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