姿。











 「あんたの顔なんてもう見たくない!!あっち行って!!」

 「せいぜい強がってろ!」







久しぶりのゾロとの大喧嘩で、つい口走ってしまった言葉。
でもその時は本当に、心底コイツの顔を見たくないと思ったのだ。




















喧嘩した日、重い足を引きずって、夕食時に遅れてキッチンへと行った。







 「・・・・、万年寝太郎は・・・?」

 「あぁ、ゾロならもう食って外行きましたよ。温めなおしますね、ナミさん」




皆とまだ残っていたら、さらっと謝って仲直りしようと思っていたのに。



とりあえず夕食を食べて、すぐに甲板へ向かった。












 「・・・あれ?・・ゾロは・・・?」


メリーの上から海を見ていたルフィに聞いた。


 「さっきまでいたけどなぁ。風呂じゃねぇのか?」

 「そう・・」







お風呂場へ行くと、ちょうどウソップが出てきた。


 「え?ウソップが入ってたの?ゾロは?」

 「おれの前に入ってたみたいだから、もうとっくに出てるだろ?キッチンにいねぇ?」

 「わかった」

 「お前、次入るのか?」

 「ううん、あとでいい」







キッチンに向かう途中、チョッパーとロビンがボードゲームをしていたので、一応聞いてみた。


 「ねぇねぇ、ゾロ見た?」

 「さっきキッチンに入っていったわよ」

 「風呂上りだったぞ」

 「そう、ありがとう」







キッチンの中に入ると、そこにはサンジくんの姿しかなかった。


 「あれ、サンジくんだけ・・・?」

 「どうしましたナミさん」

 「ゾロ、来たでしょ?」

 「来たけど、水飲んですぐ出て行きましたよ」

 「・・・・・もうっ!!」








いい加減、腹が立ってきた。



何で私がこんなにゾロを追いかけないといけないのよ!!!






 「甲板でいつものトレーニングしてんじゃないですか?」

 「それしかないわね、もう」









しかし甲板に行っても、ゾロの姿は見当たらなかった。


 「ねぇルフィ、あの後ゾロ来た?」

 「来たぞー。またどっか行ったけど」

 「ふーん・・・・」





怒りと疲れで、もうこの日は仲直りを諦めた。














翌朝キッチンに行くと、またもやゾロの姿はなかった。


 「ゾロは?まだ寝てるの?」

 「多分、というか当然寝てますね」

 「起こしてくるわね」







男部屋を覗いたが、いなかった。
甲板や見張り台で寝てるのかと思ったが、そこにもいない。

キッチンに戻ると、サンジくんが声をかけてきた。



 「あ、ナミさん。今クソマリモが来て、さっさと食って出ましたよ」

 「・・・・・・何ですって・・・?」

 「ちょうど今・・・・」



私の顔を見て、何故かサンジくんの語尾がだんだんと小さくなっていった。








   あの男、確実に私を避けてるわ


   これはもうわざととしか思えない








キッチンを飛び出して、船中を走り回る。
ウソップやチョッパーが驚いて声をかけてきたが、無視して走った。

それでもゾロの姿を発見できない。




   何で







結局この日も一日中、ゾロを見なかった。
ロビンが見張り番なので、夜になったら女部屋へ来るかと思ったが
結局は独りで眠ることになった。













翌日、またゾロを探す。




  「今出てったぞ」


  「さっきまでいたんですが・・・」




他のクルーはみんなゾロに会ってる。
当然だ。
狭い船の上、姿を見ないはずがない。

私だけが。
私だけが、ゾロを見ていない。

避けているにしては、完璧すぎる。









 「何で私だけ見てないの!!?」

 「気のせいだろ?3日も見ないなんてさー」

 「だって本当なんだもん!!!」


夜になって、ウソップに相談してみた。



 「気に留めてないだけで、絶対見てるって」

 「見たら気に留めるわよ!!!」

 「あ、そうですか・・・」















手すりによりかかって、独り、暗い海面を見下ろす。





   何でだろう

   何で会えないの




消えたわけではない。
他の皆は会っているのだから。
海の上の、狭いこの船の中に、ゾロは確実に居るのに。










       『あんたの顔なんてもう見たくない!!』












先日吐いた言葉が、頭の中をよぎる。









・・・・・・・・。




 「まさか、ね・・・・」




   ・・・・まさか








そんなわけあるはずない。

そんなバカみたいな。

でもここはグランドライン。

・・・・・・・・・。










星空を見上げる。
明日は晴れかしら。









・・・・・・・・・・。












 ごめんなさいごめんなさい
 顔も見たくないなんて、あれはウソです
 口が滑っただけなの本心じゃないの
 お願いだからゾロに会わせて
 ゾロの顔を見せて






星を見上げながら、呟く。






・・・・・・・・・・・。





 馬鹿馬鹿しい



そう思って、溜息をついてまた海を見下ろす。


















 「よぉ」









聞き慣れた、低い声。









ゆっくり振り返ると、そこにはゾロが、いた。

何事もなかったかのように倉庫から出てきたゾロは、呑気に片手をあげてみせる。





 「風呂あいたぞ」

 「・・・・・・・・・!!!」



無言で駆け寄っていって、思いっきり抱きついた。




 「おい、何だ。どうした」

 「久しぶりゾロ!!こないだはごめんなさい!ウソだから!!!」

 「はぁ?」



子供のようにゾロの胸にしがみついていると、
頭の上からゾロが間の抜けた声を出した。


 「顔も見たくないなんて、ウソだから!!」

 「・・・あぁ、あれか」

 「やっと会えた・・・・!!!」

 「・・・久しぶりとか、やっととか、さっきから何言ってんだお前」




しがみつく頭をポンポンと撫でながら、ゾロが聞いてくる。




 「3日!3日会ってないのよ!」

 「おれとお前が?んなわけねぇだろ。船の上だぞ」

 「避けてたんじゃ、ないの?」

 「おれが?お前を?何で?」



顔を離して見上げると、不思議そうに見下ろすゾロと目があった。



 「じゃあ何で同じ船の上で3日も会えないのよ!」

 「だからそんなの有り得ねぇだろ」

 「本当なの!」




そう叫んで、さらにゾロにしがみついた。





 「良かった、会えて・・・・」

 「へぇ、そんなに寂しかったか」

 「うん」




素直な言葉に、一瞬ゾロは驚いたようだった。




 「いつもそんくらい素直ならな」

 「うるさい」




あやすように髪に指を通しながら、ゾロは笑う。




久しぶりに聞くゾロの声と、
久しぶりに見るゾロの笑顔に、
ちょっと泣いた。




さぁ、果たして真実は。

2005/06/17

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