接。








「はい、どうぞ」



夜のトレーニングを終えてキッチンに入ったゾロは、
同じように水を飲みに来ていたロビンに出くわした。



 「どうも」




ロビンからコップを受け取り、一気に飲み干す。





 「・・・・・・」

 「・・・・・・」


 「じゃ、な」





特に話すこともなく、微妙な沈黙になってしまったので
ゾロはすぐにキッチンから出て行こうとした。



 「あら、素っ気無いのね」

 「別に・・・」

 「これでもいかが?」



振り返ると、ロビンは酒瓶を持ち上げて微笑んでいた。



 「一緒にどう?」

 「・・・・・」










席について互いに酒を注ぎ、飲み始める。
だが、やはり会話は進まない。
元々口数の少ないゾロから話を切り出すわけがなく、
ロビンが何も話さない限りはひたすら沈黙であった。








 「美味しい?」

 「あぁ」


ロビンはようやく声をかける。
それでもゾロは一言返しただけで、黙々と酒を飲んでいた。




 「冷たいのね」

 「別に、普通だろ」

 「剣士さん、私のこと嫌いなの?」

 「別に・・・」

 「じゃあ好き?」

 「はぁ?」



ロビンは相変わらずの笑顔で聞いてきたが、
ゾロの間の抜けた返事に、わざとらしく傷ついた顔をしてみせた。



 「あぁやっぱり私、嫌われてるのね・・・」

 「だから別に嫌っては・・・」

 「じゃあ好き?」

 「・・・・・・」



ころっと表情を変えてにこにこと同じ質問をするロビンに、ゾロは思わず顔を背ける。






 「・・・・剣士さん、この際だからはっきり言ってちょうだい」

 「何を」

 「私のこと、嫌い?」

 「いや」

 「私のこと、好き?」

 「・・・・」
















ゾロとロビンの声がした。

2人が一緒にお酒でも飲んでいるのなら仲間入りしようと思い、
ナミはキッチンの扉に手をかけた。





 『私のこと、好き?』

 『・・・・』



扉を開けようとしたまま、ナミは固まった。


中にいるのは、確かにゾロとロビン。
2人で一体、何の会話を。
今のロビンの言葉は、一体。






 『その沈黙は肯定と受け取っていいかしら?』

 『・・・・勝手にしろ』

 『ふふ、よかった。嬉しいわ』





ゆっくりと、ナミは扉から遠ざかる。
自分の知らないところで、2人はこんな会話をしているのか。
自分の知らないうちに、まさか2人はそんな関係になっていたのか。

私の聞き間違いだ、
中に入って、冗談ぽく2人に聞いてみればいい。

そう自分に言い聞かせてはみても、
裏切られたという気持ちが抑えられず、
そのままナミは女部屋へと急いで戻った。










 「仲間としてだぞ」

 「もちろん分かってるわ」

 「ならいい」

 「航海士さんに勝てるとは思わないもの」

 「・・・・賢明だな」

 「貴方には勝てるかもしれないけど」

 「・・・・あ?」

 「航海士さん、カワイイわよね・・・」

 「おいコラ」

 「冗談よ」















次の日、ナミは2人に対してどうしても不自然になってしまった。
2人の態度はいつもどおりだ。
聞かれていたとは気付いていないのだろう。
普段どおりのその態度が、
ずっと前からああいう関係だったでは、というナミの疑いを濃いものとした。











 「ナミさん、今日は元気ないね」

 「・・・そう?」



いつものように、ナミは夕食後のキッチンで日誌を書いていた。
キッチンにいるのはナミの他はサンジだけで、
皿洗いをしながらサンジはナミに話しかける。




 「あいつと喧嘩でもした?」

 「・・・・・別に、喧嘩はしてない」

 「でも、あいつが原因?」

 「・・・・・・・」

 「おれでよければ、聞くよ?」




仕事の手を止め、サンジはナミに向き直る。
ナミもペンを止め、シンクの前のサンジを見つめる。




 「・・・・・ゾロと、ロビンって、・・どうなのかな」

 「ロビンちゃん?」

 「ロビンって、ゾロのこと好きなのかな」

 「・・・・・・さぁ、おれにはそうは見えませんが・・・」

 「・・・・・そう、かな」




ナミはペンを放り出し、子供のように椅子を揺らしながら日誌を見下ろす。




 「おれなら、貴女にそんな不安な思いはさせませんよー?」

 「・・・・そうね、サンジくんは・・、きっとそうね」

 「今からでも遅くないですよーどうですかー」



わざと茶化してサンジが言う。
ナミもそれにつられて笑った。



 「そうねー、サンジくんと付き合おうかしら」

 「そうそう、あんな筋肉バカの男よりよっぽどおれのがいいよー」

 「ほんと、トレーニングばっかりでうんざりよ」




サンジが軽い調子で言ってくれたので、
ナミも少し元気になって、同じ調子でゾロの愚痴を言い出した。



 「うんうん」

 「好きとかひとつも言ってくれないしさー、何か一緒に居ても一人な気するときあるし」

 「うんうん」

 「付き合ってる意味が分からなくなるのよねー」

 「うんうん」













ゾロは今夜もトレーニング後の水を摂るため、キッチンへと向かっていた。

いつものことながら、2人きりでキッチンにいるナミとサンジが、正直気に入らない。
それを邪魔するのも兼ねて、ゾロはわざとナミのいる時間にキッチンに行く。
昨日はどうも遅かったようで、ロビンしかいなかったのだが、
今日は2人の声がキッチンからした。

扉の前に来ると、ナミのやたらに大きい声がした。
どうも自分の愚痴を言っているらしく、
あの女・・・と苦い顔をしてゾロは扉を開けようとした。




 『本当、そろそろ別れ時かもしれないわ』

 『じゃあおれと付き合おっか?』

 『それがいいわね、そうする?』




2人が声を上げて笑っている。





今までも、サンジがナミに自分とつきあおう、と冗談を言うことは幾度もあった。
でもナミは、それには肯定的な返事など、冗談でもしたことはない。
いつも笑顔でそれをかわしていたのだ。

それなのに。

喉の渇きも忘れて、ゾロはキッチンから離れた。












 「・・・・でも、やっぱり好きなのよねー」

 「あーーやっぱりそういうオチかー」

 「ごめんねサンジくんvvv」

 「いえいえ・・・、貴女が笑ってるからいいんです」

 「ふふ、何か文句とか色々言ったらすっきりしちゃった」

 「たまにはね」

 「よし、ゾロとっちめてロビンとの事はっきり聞いてやろ!」

 「それでこそナミさん!」













その夜は、ロビンが見張り番だった。
そういうときはゾロは決まって女部屋へと来る。
ナミは昨日のキッチンでの会話の事を問い詰めようと、
気合を入れて待っていたのだが、
いつまでたってもゾロは現れなかった。

おかしい、と不安に思いながら、ナミは甲板に出た。

ミカン畑の方へ回ると、ゾロが手すりにもたれて胡坐をかき、目を閉じていた。




 「何してんのよあんた」

 「・・・・・・あぁ・・?」

 「何で来ないの?今日ロビン見張りよ?」

 「・・・・・別に」

 「・・・・・・・・・ロビン?」

 「あぁ?」



ゾロの不審な態度に、
まさか見張り台でロビンと逢うつもりなのだろうか、という考えが頭をよぎる。
心臓がドクドクと速くなる。





 「いつも来るのに、何で・・・?」


 「別に、行く気がしなかった」



ゾロが冷たくそう言い放つ。
ナミは全身を強張らせた。

今までそんな言い方をされたことはない。
拒絶されたショックで、しばらく声が出なかった。






 「・・・・お前も、その方がいいんだろ」

 「・・・・・・え・・?」

 「キッチンにでも行ってろよ。じゃあな」

 「・・・・キッチンって、何で・・・?」



訳も分からず立ち尽くすナミの横を、目も合わさずに無言で通り過ぎ、
ゾロは男部屋に消えた。






とりあえず前後編に分けてみた。

2005/10/20

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