110000ゲッター、なっつサマに愛をこめて。

援。






どうやら初恋らしき想いを赤裸々に語ってくれたこの船の航海士様と、
その想いにカケラも気付いていないのに一丁前に嫉妬はしてくる剣士殿。



ここはひとつ、このキャプテン・ウソップが一肌脱いでやろうじゃねぇか!










上陸した町の大通りで、ナミは少し不機嫌な顔で文房具屋の前で仁王立ちになっていた。
時折通りの人込みに目をこらし、何も見つけられなかったのか舌打ちでもしそうな雰囲気で腕を組む。

ナミが待っているのはウソップだった。
万年筆が欲しいから選んでほしいと、島に着く前から頼まれていたのだ。

上陸してから一緒に店に行けばいいのだが、先に買うものがあるからと何故か店の前で待ち合わせすることになった。
不思議に思いながらもナミもまずは自分の買い物を済ませ、
時間になってこの文房具屋の前でウソップを待っているのだが、
そのウソップはかれこれ30分も経つのにいまだに現れない。



 「……人にものを頼んでおいて遅刻なんて、いい度胸じゃないの」



この罪は借金倍でも償えないわね、と本人が聞いたら震え上がるような独り言を呟いていると、
聞き覚えのある声がしてナミはそちらへと顔を向けた。



 「遅いわよウソッ―――」

 「悪ぃ悪ぃ、ゾロの準備に手間取っちまって」

 「お前が急に出るっつーからだろ」



怒りの顔をどうにかひっこめて、ナミはちらりとウソップの隣に立つ男の顔を見た。
いつものように刀の鞘に片手を乗せたゾロは、目が合うと片眉を上げてくる。



 「……ゾロも、万年筆とか買うの?」

 「いや、おれは――」

 「ゾロはな、鍛冶屋に行くんだ」



ゾロが答える前にウソップが笑いながらそう言った。



 「だから案内してやろうと思って一緒に来たってわけだ」

 「ふーん……でも、鍛冶屋ってここよりまだ奥じゃなかった?」



先程この通りを軽く見てまわった記憶を思い出しながらナミは首をかしげた。
それを見たウソップは、待ってましたと言わんばかりの表情を見せる。
隣にいたゾロは大きな欠伸をかましていたのでそれには気付かなかったが、ナミははっきりと見てしまいまた首をかしげる。



 「だからな、おれの万年筆探しはよく考えりゃ店の人間に聞くのが一番手っ取り早ぇんだ」

 「何よそれ、人に頼んどいて」

 「だからお前がゾロを鍛冶屋まで案内してやってくれよ。 いいだろゾロ?」

 「あぁ」

 「じゃ、そういうことで頼むぜナミ!」



そう言って、ウソップはこっそりとナミに向かってウインクをした。
少し間を置いてナミはその意味に気付き、パッと顔を赤くする。



 「ウソッ――」



ナミが口を開いた瞬間、再び聞きなれた明るい声が3人の耳に届く。
3人が同時にそちらに顔を向けると、小さな船医が笑顔で駆けて来るところだった。



 「ゾロー!ナミー!ウソップー!!!」

 「チョッパー」



どしんとゾロの足にぶつかるようにして止まったチョッパーは、
町で偶然クルーに会えたことがなにやら嬉しいのか、満面の笑みを見せた。



 「お前らもここで買い物するのか?」

 「あ、あぁ」



ウソップは少しだけ顔を引きつらせて答える。



 「おれは鍛冶屋に行きてぇんだが」

 「おれ、今から行くぞ? メスを研いでもらおうと思って」

 「そうか、じゃあ案内してくれ」

 「あぁ、いいぞ!!」



ゾロの笑顔にチョッパーも目をキラキラとさせ、二人はさっさと鍛冶屋の方へと歩いていった。




 「あーー…………」



仲良さげな2人の後姿を、ウソップは虚しく見送った。
ナミも寂しげにそれを見送り、肩をすくめてウソップに向き直る。



 「……ありがとねウソップ」

 「いやいや…結局失敗だしな…」

 「ま、とりあえずあんたに付き合ってあげるわよ」



ナミの笑顔が逆に申し訳なくて、ウソップは作戦失敗と心中で肩を落とした。







上陸2日目。

作戦その1.『ドッキドキ☆二人っきりで街中デート大作戦』が失敗に終わったウソップは、
今度こそと気合を入れて作戦その2.を決行すべく、昨日の晩に倉庫に侵入して食糧をこっそりと別の場所に隠した。
メリー号の船内でゾロとナミをどうこうしようとすれば、まず邪魔になるのはサンジなのだ。
そう考えたウソップは、どうにかサンジを2人から離すことができないかと頭をひねり、
そうしてついでにルフィも排除できてしまう作戦こそが、食糧を隠すことだった。

この日の船番はナミで、ゾロもまだ船内にいる。
刀を取りに行くのは明日なので、おそらく今日は上陸はしないだろう。
この作戦が上手くいけばゾロとナミの2人きりになることができる。
あの2人はまずはそこから始めないといけない、全く手のかかるヤツらなのだ。
ウソップは倉庫の食糧を樽につめて格納庫に隠しながら、自らの完璧な作戦に酔っていた。





 「あンのクソゴムどこ行ったァァーーーー!!!!!!」



朝食の前にそんな叫び声がメリー号に響き渡り、続いてどたばたと走り回る音がする。
ナミたちはまた食糧泥棒が出たのかと呆れ、サンジは鬼の形相でルフィを追いかけまわしている。

逃げ回っていたが結局捕まってしまったルフィは、ぬれぎぬだ!と叫びながらもサンジから目を逸らしていた。
今回食糧を隠したのはウソップなのだが、どうやらその前に現実に食糧泥棒が発生していたらしい。

グルグルとロープでしばられ後甲板から海へと逆さづりにされたルフィに少しばかり同情しつつ、
ウソップは作戦が順調に行っていることにニヤリとした。
あとはサンジが食糧の買出しに出れば完璧だ。
買出しに付き合えと声をかけられる予定だったし、そうでなければ自ら付いていけばよい。

うむ、完璧すぎてコワイ。

後甲板で強く頷きつつ、ウソップはサンジの呼ぶ声を待っていた。



 「ウソップ〜〜助けて〜〜」



ふと見下ろすと、顔を赤くして半泣きになっているルフィがこちらを見ていた。
ズキズキと胸の痛みを感じつつ、だがそれを払うようにウソップはぶんぶんと首を振った。



 「すまんルフィ…だがお前も船長だ、クルーの幸せを思うなら少しばかりガマンしてくれ…!」

 「もう盗らねぇから〜〜」

 「ってやっぱ盗ってたんかい!」



ビシリと突っ込みをしつつ、ウソップは誰かがはしごを降りる気配を感じて慌てて前甲板へと走った。


手すりから身を乗り出すと、そこには街へと向かうサンジとゾロの後姿があった。



 「げ、何でゾロが!!?」

 「荷物持ちだって」



振り返ると、倉庫から本を数冊とインク、ペンを抱えたナミが出てきた。
キッチンで海図でも描くつもりなのかトントンと階段を上っていく。



 「ゾロの刀できるの明日だし、ヒマなんだろって言われてね。 何かゾロに用だったの?」

 「い、いや…」



ウソップの態度に首をかしげたナミはそのままキッチンへと消えた。




 「……こういうときに限ってモテるなゾロ……」




作戦その2.『2人っきりの船内でドキドキラブラブ☆大作戦』、失敗。









その夜、ウソップは甲板で筋トレをしていたゾロに近寄った。
ダンベルを床に置いて汗を拭いていたゾロは怪訝な顔をする。



 「ちょっと話があんだけど」

 「まだ日課のトレーニング残ってっから、あとじゃダメか?」

 「大事な話なんだ」

 「………」



ウソップの真面目な顔を見て、ゾロは仕方なく後に続いて倉庫に入った。





倉庫に入ったウソップは、くるりと向きを変え睨むようにゾロを見た。
珍しいウソップの態度にゾロは片眉を上げ、だが茶化すようなことはせずに見返す。

ゾロをじっと見ながら、ウソップは言葉を選ぶように考えて、だが結局ストレートに聞いた。



 「お前、好きなヤツいるか?」

 「………いきなり何を―――」



ゾロの返事と同時に、激しい音と共に倉庫の扉が開かれる。




 「ここにいたか長っ鼻ァァ!!!!」

 「げ、サンジ!」

 「格納庫に食糧隠したのてめぇだろ!! チョッパーの鼻が証拠だァ!!」




昼間以上の鬼の形相になっているサンジから逃れるように、ウソップはささっとゾロの後ろに身を隠す。
ドス黒いオーラを出しながらサンジは2人に詰め寄り、ゾロはとりあえず何も言わず突っ立っていた。



 「クソ剣士…無駄な抵抗はやめてその盗人を渡しな…」

 「ひぃぃぃぃぃ!!!」

 「…………」



ゾロは自分の後ろで震え上がっているウソップをちらりと見て、それからサンジの顔を見る。



 「ルフィじゃなかったのか?」

 「あぁ」

 「ウソップ、お前が盗ったのか?」

 「いや盗ったと言えば盗ったがそれには訳があってだなっ」

 「………」



ゾロは少し考えてから、ひょいっと体を避けてウソップの姿をサンジの前にさらした。
その隙を見逃さずサンジの長い足がひゅっと空気を斬り、ウソップは倉庫の扉を抜けて甲板へと蹴り飛ばされた。


ミカン畑にいたナミはその音に気付いて、キッチンの上からひょいと顔を覗かせた。
甲板で伸びているウソップの元へ倉庫から出たサンジが近づき、
その首根っこを掴んでズルズルと引っぱって階段を上っていく。



 「サンジくん、どうしたの?」

 「あ、んナミすわんv騒がしくてごめんねvv 昼間の食糧泥棒の犯人、こいつだったんだよ」

 「ウソップ? ルフィじゃなくて?」

 「チョッパーが匂いが残ってたって」

 「ふーん、ウソップの単独犯なんて珍しいわね」




引きずられながらも顔を上げたウソップはナミと目が合うと、弱々しい声で口を開いた。




 「ナミ…! 好きなモンは好きだってちゃんと言えよ…!!!」




そう言い残して、ウソップはサンジに引きずられたまま後甲板へと消えて行った。

倉庫から出てきてそれを見送ったゾロは、ミカン畑のナミに気付いて顔を上げる。
目が合って、ナミはかっと顔を赤くする。




 「…さっきのウソップの…、どういう意味だ?」

 「さささささささぁ?」



ナミは動揺を隠そうと努力しながらそう答える。
夜の闇のおかげで顔の赤さはゾロには気付かれてはいない。

ゾロはズボンのポケットに手を入れて、しばらく船首の方を眺めたあとポツリと呟いた。




 「………お前の」

 「え?」



ゾロはまたミカン畑を見上げ、じっとナミを見つめた。




 「お前の好きなモンって何だ?」




ナミは目を丸くし、無言でゾロを見つめ返す。
先に目を逸らしたのはゾロだった。
小さく舌打ちして、ガリガリと頭を掻いている。



 「……気になる?」

 「……別に、何となく」



どこか拗ねたようなゾロの口調にナミは思わず頬をゆるませた。
先程のウソップの言葉に背中を押され、ゆっくりと口を開く。





 「…私が、好きなのは――」









真夜中にゾロとナミの2人の手でこっそりと助け出されるまで、
ウソップはロープでグルグル巻きのまま後甲板から吊り下げられていた。




07/09/12 UP

110000リク。
『【通。】の続き』ってことで。
ゲッターはなっつサマでした。
2人の恋の行方とウソップの視点…。
どうかな、リクに適ってるかな??
とりあえずウソップごめんとしか言いようが無いよね!!!(いっそ爽やかに)

ということでなっつサマへ捧げますv
忘れられてたとしても仕方ないけど捧げますv

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