優。







 「ゾロとナミって、最近仲がいいよな!」



チョッパーは目をキラキラと輝かせて、サンジに向かって話しかけた。



テーブルの上にはジャガイモの山。
2人は椅子に腰かけて、仲良く皮剥きをしていた。

サンジの滑らかな動きには及ばないが、
それでもチョッパーも一生懸命に包丁を動かし、皮を剥いていく。


チョッパーの言葉を聞いたサンジは一瞬その動きを止め、
だがすぐにサラサラと動かしてあっというまに1個のジャガイモの皮を剥き終わる。
それを別のボウルにポンと転がして、ジロリとチョッパーの方を見る。




 「…………あぁ?」



サンジの不機嫌極まりない声色にも気付かないのか、チョッパーは嬉しそうな声で続けた。
喋りながらもきちんと手は動かしてはいるが。



 「上陸するときもいっつも一緒だし、どっちかが船番だったら上陸してもすぐ戻ってきてるし!」

 「ふ、ふーん……」




戻ってきてたのか…。

さすがにそこまでは知らなかったサンジは、動揺を隠しつつ返事をした。




 「夜だって、まぁこれは今までもだけど2人きりで酒とか飲んでるし」

 「ふ、ふ、ふーん……」




今までも2人きりで飲んでたのか!!??
サンジの咥えた煙草が小刻みに震えていることに、チョッパーは気付かない。




 「でも良かったー、ナミも嬉しいだろうな!」

 「……何でナミさんが?」

 「だって、ナミはずっとゾロのこと好きだっただろ?」



チョッパーはきょとんとした顔でサンジを見る。
「気付いてなかったのか?」と言わんばかりの目でじっと見つめてくる。

サンジはしばらく目を合わせたあとふいっと逸らして、新しいジャガイモに手を伸ばす。




 「やっぱり?」

 「うん」

 「何で分かるんだチョッパー。ナミさんから聞いたのか?」

 「いや、そうじゃないけど……、匂いで」



ようやく1個の皮を剥き終えたチョッパーもそれをボウルに転がして、
ジャガイモの山に手を伸ばす。
届かなかったのか椅子の上に立とうとしたチョッパーに気付いて、
サンジはひとつ掴んで手渡した。




 「匂い?」

 「あぁ、ゾロが近づくと匂いが変わるんだ!」

 「……ナミさんの?」

 「あぁ! それにゾロもだぞ! ナミの傍に行くと匂いが違うんだぞ

 「へぇーー………」



その間にも、ボウルの中にはサンジの剥いたジャガイモが新しく山を築き始めている。




 「うまく説明できないけど……オスとメスの匂いって言うのかな。サンジは匂わない?」

 「匂わねぇよ…お前ほどハナは良くねぇんだ」

 「そっかー」



チョッパーは納得した顔で、ジャガイモを握りなおして包丁の刃を立てる。





 「ナミがあんだけいい匂い出してるのに、ゾロはどうして行動しないのかなーってずっと不思議だったんだ!」

 「……行動?」



何となく想像はついたが、サンジはチラリとチョッパーを見つつ聞いてみた。
チョッパーはニコニコと笑いながら答える。




 「うん、交尾」

 「…あっさり言うなよお前……」

 「でもようやく動いたみたいで、実はゾロは不能なのかと思って心配してたんだー。
  今度診察してやろうと思ってたんだけど、大丈夫みたいだな!!」





あぁそうか、あの2人はもうそういう関係か……。

ずーんとサンジの空気が重くなる。
ようやくサンジの状態に気付いたチョッパーは、ジャガイモから目を上げてワタワタと慌てる。



 「……どうしたんだサンジ! 気分が悪いのか!?」

 「おれは今自分の口を呪ってるんだ……病気じゃねぇよ…」

 「…何でだ?」

 「おれがあいつに気づかせたんだよ…ナミさんへの気持ちをな」

 「え!? そうだったのか!?」



チョッパーは目を丸くする。
じと目でそれを見ていたサンジは、さらに重苦しい背景を背負って目を伏せる。



 「あぁ…おれは何てバカヤロウだ……」

 「そっかー、サンジのおかげか! さすが、サンジは優しいな!!」

 「……あぁ?」




予想外の言葉に、サンジは顔を上げる。
キラキラの笑顔のチョッパーと目が合った。





 「サンジのおかげで、ナミもゾロも幸せそうだぞ!!」





今度はサンジが目を丸くしてチョッパーを見つめ、
それからふとキッチンの窓に目をやる。




窓から見える船首付近に、ゾロとナミが隣同士に立っている。
ナミが海図を広げ、その紙面を指差しながら時折ゾロの顔を伺う。
ゾロが眉を顰めて首をかしげると、楽しそうに笑いながらその胸を軽く叩く。
ゾロはそれに対抗して、ナミの髪をわしわしとかき混ぜる。
ナミは照れたような笑顔でその腕を掴んで止める。

笑い声が甲板に響く。

ゾロも、サンジは滅多に見たことのない柔らかい笑顔でナミに応えている。
気付けば自分の髪をかき混ぜる腕を掴んだナミの手は、いつの間にかゾロの手と繋がれていた。


ナミは、本当に幸せそうに笑っている。

そうやって手を繋いだままで、再び2人は海図を覗き込む。





 「……確かに、ムカつくほど幸せそうだよ」

 「だろ! サンジのおかげなんだなー」



満面の笑みのチョッパーをチラリと見て、サンジは呟いた。



 「……おれって優しい?」

 「え? うん、サンジはすごく優しいよ!!」

 「………」



ニコニコと笑いながら、チョッパーはサンジを見つめ返す。
無言のサンジは、手を伸ばしてチョッパーの頭をガシガシと撫でた。



 「ありがとよ、チョッパー……」

 「??? お、おう!!」



チョッパーは訳が分からないようだったが、嬉しかったのかさらに笑顔になって、
ウキウキと皮剥きを再開する。






2人がひっついたのは、おれのおかげか。


サンジはチョッパーに気付かれないように、こっそりと溜息をついた。


ひっついちまったモンは仕方ない。
こうなったら、とことん優しいコックさんになってやろうじゃないか。

彼女のあの笑顔を守るために。




そう思いながら、サンジは超絶スピードで皮を剥いていくのだった。


とりあえずさっさと下ごしらえを終わらせて、愛しの彼女にドリンクでも持っていこうか。
このくらいの邪魔は許されるだろ?




『【悟。】の続き』
数日前の作品と系統が一緒ですねぇ……(遠い目)。
やっぱり報われないサンジくん。
愛してるよ(笑)。

10/11にリクくれた瀬袂さん、えーと、とりあえずコレで(逃)。

2006/12/08 UP

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