悟。







 「お前、何でいっつもそんななんだ」






キッチンに入ってトレーニング後の水分補給をしていたゾロは、
皿を洗うサンジの横顔にそう声をかけた。

珍しくゾロから話しかけられたサンジは手を止め、ゾロを見る。




 「・・・はい? 何のことだ?」

 「ナミに」

 「だから、ナミさんに何だよ」

 「ヘラヘラ近寄って、クサイ台詞吐いて」

 「・・・・おれの勝手だろ、急に、ていうか今さら何だよ」



言い方にムカついたサンジは、ギロリとゾロを睨んでから皿洗いを再開した。
中身を飲み干したグラスをテーブルに置いて、ゾロは再び口を開く。



 「ムカつくんだよ」

 「おれもてめぇがムカつくよ」

 「・・・てめぇがナミにああいう事するの見ると、ムカつく」

 「・・・・・・」



ゾロの呟きを聞いて、サンジは蛇口を捻って水を止めタオルで手を拭きながら振り返った。



 「・・・まさかてめぇ、おれに惚れて・・・」

 「ンなわけあるか、ボケ」

 「だよなぁ、おれも想像して気持ち悪くなっちまった」



怖ろしいモノでも見たかのようなサンジの顔に、ゾロも凶悪面で即答する。
その答えを聞いたサンジはほっと息を吐き、テーブルに近づいた。
テーブルの上のグラスをひょいっと取ってから、ゾロに顔を近づける。





 「お前ってさ、ナミさんのこと好きなんじゃねぇの?」

 「・・・・・・何?」

 「だからムカつくんだよ、ナミさんに他の男が言い寄ってるの見て」



サンジは、単純にからかうだけのつもりだった。
筋肉馬鹿の剣士が女に、しかも同じ船のクルーにそんな感情を持つとは考えていなかったのだ。

この男の動揺する姿が見てみたくて、わざと言ってみただけなのだが。


だがゾロは。

サンジの発言を聞いて、顎に手を当ててしばらく考え込んでいたが、
ふいに口元を緩めて呟いた。




 「・・・そうか、なるほどな」

 「・・・へ?」

 「恩に着るぜ、クソコック」



ニヤリと笑ったゾロの顔を見て、サンジは戸惑う。



 「お、おい、ちょっと」

 「すっきりした。これで思う存分・・・」

 「思う存分何する気だ!?」



ブツブツ言いながらキッチンから出て行こうとするゾロの背中に、
サンジは慌てて声をかけた。


さっきまで10代前半のガキみたいなツラしてやがったくせに。


もしかしたら自分はとんでもない地雷を踏んでしまったのでは?

認めたくはないが、かなり手強いライバルを目覚めさせてしまったのでは?





 「何って、欲しいモンを手に入れるに決まってんだろ」

 「・・・・・・」



気付かせるんじゃなかった!!

サンジの心の叫びは、誰の耳にも届かなかった。
















 「ゾロ、荷物持ちよろしくね」



翌日、島を目前にしたメリー号の甲板で、ナミはゾロににこやかにそう告げた。



 「あぁ・・・?」

 「船番はロビンだから、あんたどうせ買い物も無くてヒマでしょ?
  買いたいモノいっぱいあるから、よろしくね!」



甲板であぐらをかいて昼寝中だったゾロは、片目を開けてナミを見上げる。



 「・・・そんなに」

 「え? 何?」

 「そんなに、おれと街に出たいのか?」



ゾロは口端を上げて、意地の悪い笑顔をナミに向ける。



 「・・・・っな・・・!」



ナミは一瞬意味が分からず呆けていたが、すぐに顔を赤くしてゾロを睨む。
ゾロはそれを相変わらずニヤニヤと見上げている。



 「な、何よソレ! じゃあいいわよ、他の人に頼むから!別にあんたじゃなくたって・・・!」

 「まぁ待てよ・・・」

 「あんたがヒマそうだから声かけてあげただけなんだから、嫌ならいいわよ!」

 「ナミ」



そう言って、ゾロはナミの手首を掴んだ。
立ち上がる勢いで、ぐいと引っぱった。
そのままナミは、立ち上がったゾロの胸にボスンとよりかかる羽目になる。




 「一緒に行こう」




ナミの耳元で低く囁いたゾロは、碇おろしてくると言ってナミから離れた。










サンジはその様子を、キッチンの扉から見ていた。

冷蔵庫の中身のチェックを終えて、上陸のために甲板に出ようとしていたサンジは、
ナミがゾロの前に立っているのを見てその足を止めた。

ナミが急に真っ赤になって、ゾロが立ち上がって、それから・・・・・・。


ゾロが何と言ったのかまでは聞こえなかったが、
ナミの顔が火でも吹くんじゃないかと思えるほど真っ赤になっていることと、
その口元が嬉しいことでもあったかのように緩んでいることだけは確認できる。
ゾロも機嫌良さそうに碇を持ち上げていた。



サンジは嫌な予感を覚えつつ、甲板に下りていった。

ナミは相変わらず赤い顔で、女部屋へ向かうために倉庫の前にぎくしゃくと向かっていた。



 「ナミさん」

 「・・・な、なに?」



錆付いたブリキ人形のような動きで、ナミはサンジに顔を向けた。
その顔を見て、サンジは自分の予感が的中していることを悟った。





 「ナミさん、ゾロのこと好きなの」



何の脈絡もなくいきなりそう言うと、ナミの顔がさらに赤くなる。



 「ななななな何言い出すのよサンジくんったら・・・」



そう言いながらナミはドンと扉にぶつかり、あははと苦笑いして扉を開けて中に消えた。
扉の向こうから、ガタンゴトンと色んなモノにぶつかる音が聞こえる。



 「動揺しすぎだよナミさん・・・」




サンジはガックリと肩を落として、今度はゾロの方を見た。
碇をおろし終えたゾロが、得意げな顔でこちらを見ていた。

とりあえず睨み返してから、サンジは大きな溜息をついた。


気付かせるんじゃなかった。


再び心中で呟いて、サンジは自分の口をただただ呪うのだった。



2006/08/25 UP

『実は両思い、ガンガン迫るゾロとドキドキしながらも素直になれないナミ』
6/25にリクくれた理沙さま、こんなじゃダメ?

てか何故サンジくん視点・・・・!!!orz
そして全然ガンガンいってないよゾロ・・・・!!
ツンデレになってないよナミさん・・・・!!
当初の予想と違う方向になりました。
あららー・・・。

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