成。
うぃん、と音を立てて自動ドアが開く。
ドアを抜けてレンタルビデオ屋に入ったゾロは、DVDの入った袋を持って返却のレジに向かった。
「お、ゾロ」
「……何で今日もいんだよ……」
レジにいたのは、黒髪の男。
ゾロは一瞬足を止め、うんざりとした表情でその男――ルフィに袋を突き出した。
「だから、バイト増やしたんだって」
「お前今日は授業あんじゃねぇのか」
「忘れた!」
「……」
堂々と笑いながらも、ルフィは中身を取り出してディスクのチェックをする。
ゾロは手持ち無沙汰に突っ立って、その様子をぼんやりと見ていた。
「これ、あのオレンジ頭と見たのか?」
「あぁ?」
「こないだの」
「あー、そうだけど文句あっか」
3日前。
ゾロはオレンジ頭、もといナミと共にここに来て、今返却したDVDを借りて帰った。
そのときにレジに居たのも、ルフィだった。
「お前ら、付き合ってるわけじゃないんだってなー」
「……あ?」
「大学でさ、お前んとこのゼミの奴に会ったから聞いてみたんだ」
「……」
あの日ゾロの家で2人でDVDを見るためにここに来たのだが、
確かに2人は付き合っているわけではなかった。
同じ大学同じゼミの、仲の良いオトモダチ。
その時の記憶が甦って、ゾロは何となくルフィを睨む。
平日の昼間、店内にはあまり客はいなかった。
ゾロはこの日たまたま授業が休講になったからこうして返却に来たのだが、
仕事が暇なのか、ルフィはゾロを素直に帰す気はないらしい。
台から身を乗り出すようにして、にししと笑っている。
「だからお前、あのシリーズ好きなんだなー!」
「……」
ゾロの額に血管が浮かぶ。
どうやらこの男は懲りていない。
心の中でそう呟いて、その頭を平手で思い切り殴ってやった。
「いてぇ!!!」
「痛ぇように殴ったんだ」
「おれが何したよ」
「てめぇの口はろくなこと言わねぇな」
何だよー、とブツブツ言いながら、ルフィは涙目で自分の頭をさする。
だがゾロと目が合うと、やっぱり懲りていない笑顔を見せる。
それから台の下に潜って、なにやらゴソゴソと探り始めた。
「…何してんだ?」
「へへー、これやるから機嫌直せよ!」
満面の笑みのルフィが立ち上がり、ゾロに1枚のDVDを見せ付ける。
「………」
ジャケットには、一人の女が写っている。
胸の大きく開いた白いシャツに、ぴったりとしたやけに短いスカートを履いたその女は、
教卓らしき机の上で妙なポーズを決めてカメラ目線を寄越している。
いわゆる、AVというヤツだ。
ついでに言うと、ルフィ曰く『ゾロの好きな女優のシリーズ(制服モノ)』である。
ゾロはヒクリと口元を歪める。
「これ、取っといてやったんだぞ! ゾロのために!!」
ルフィは得意げな顔でそれをゾロにぎゅうぎゅうと押し付ける。
ゾロは意地でも手を出さなかった。
「受け取れよー!!」
「嫌だ!」
いつまでたっても手に取ろうとしないゾロにルフィがキレるが、
ゾロも負けじと凶悪顔で睨み返す。
ぶーーと唇を突き出して、結局ルフィはDVDを台の上に置いた。
「でも本当、似てるよなぁ?」
「……」
DVDをしばらく見つめていたルフィが、顔を上げてそう言った。
ゾロは返事をしなかった。
ふいと顔を逸らして、DVDを見ようともしない。
その女優は、ナミによく似ている。
よく見れば当然全くの別人なのだが、雰囲気や受ける印象が同じなのだ。
オレンジ色の髪に、大きな目をした美人。
AVなんぞに出なくても、普通のタレントとしても充分に売れたであろう。
ゾロが初めてこの女優のDVDを見たとき、しみじみそう思ったものだ。
先日来たときにナミがいるにも関わらず、ルフィはこのDVDをゾロにレンタルさせようとした。
おかげでゾロの趣味(?)がナミにバレてしまった。
自分に似たAV女優のDVDなど、見てもらいたいと思う女はいないだろう。
だからゾロは、もう二度と見ないと心に決めたのだ。
……少なくとも、この女優のDVDは。
「でもこの女の方が胸はデカイかな」
「………何だとコラ」
「こないだ見た感じでは、こっちのがデカイだろやっぱ?」
再びゾロの、今度は拳骨が頭にめりこんでルフィは台の上に潰れた。
頭をさすりながら、ルフィはDVDを持ち上げてヒラヒラと振る。
「冗談じゃんかよ……。 で、借りてくか?」
「いらねぇ」
「何だ、怒られたのか? キモイって言われたか?」
「誰がキモイって?」
「気にすんな!」
豪快に笑いながら、ルフィはゾロの肩をばんばんと叩く。
それをうっとおしそうに払いのけ、ゾロはポツリと呟く。
「もう必要無ぇからな」
「もう?」
「あぁ」
「………ふーん? なるほどな! よかったなゾロ!」
「………ふん」
何となく気恥ずかしくて、ゾロはさっさとレジから離れ出口へと向かった。
「あ、ゾロ!」
「…まだ殴られ足りねぇのかお前」
レジ台越しに、ルフィは慌ててゾロに声をかける。
仕方なく足を止めたゾロは、眉間に皺を寄せて振り返る。
その目に、珍しく意地の悪そうな笑顔を浮かべたルフィの姿が映る。
「違うシリーズに浮気したくなったら、いつでも言えよ? 働き者の店員特権で取っといてやるから!」
「誰が浮気するかァァ!!!!」
彼なりの冗談だったようだが、ゾロがマジギレしたのでルフィは肩をすくめて「何だよー」と愚痴った。
どうもルフィと話すと、自分のペースが乱される。
ゾロは大きく息を吐いて、つかつかと再びレジの前に戻った。
「お、やっぱり借りて帰るか?」
「あのな、ルフィ……」
「おう」
「言っとくがナミの方が美人だしナミの方が胸はでけぇ!!!!!!」
大声で言い切ったゾロは、クルリと向きを変え店から出て行った。
背後の店内では、ルフィの大笑いが響いていた。
『【抜。】の続き』
どれくらい進展したの?って事でしたが。
さぁこれを読んで、この2人はどれくらいまでイったと思います?(笑)。
人任せな書き手ですいません。
10/10にリクくれた方、こんなノリじゃ誤魔化せてませんか?(笑)
2006/12/04 UP
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