抜。






 「ねぇゾロ、何かDVD借りて帰ろうよ」

 「何か見たいのあんのか?」

 「今日100円だから」

 「なるほど」



ゾロとナミは、『1週間レンタル1本100円』ののぼりの立つレンタルビデオ屋に入っていく。






大学で同じゼミに入ってから親しくなり、こうして休日に共に遊びに出たりする関係。
一人暮らしをする互いの部屋に行きDVDを見たり話し込んだりして、終電が無くなれば泊まることもある。
だが2人は恋人同士ではない。
泊まっても同じ布団に入るわけではなく、大抵はゾロが床で雑魚寝することになるが。

男女間の友情が成立しているように見えるが、お互いがお互いの気持ちに気付いている。
ただ『好き』だの『付き合おう』だのという言葉を口にするには、あまりにも友人として仲良くなりすぎた。

結局あと1歩が踏み出せないまま、こうして2人はいまだに『親しい友人』のままでいる。











自動ドアをすり抜けて、ナミはDVDのコーナーに足を向ける。

ゾロもそれに続こうとするが、店員がゾロに声をかけた。




 「よぉゾロ」

 「・・・・げ、ルフィ」

 「げっ、て何だよ、げっ、て!!」



カウンターにいた黒髪の男は、ゾロにブンブンと手を振ってきた。
ナミはその男に何となく見覚えがあった。


ゾロは黒髪の男を無視してナミの隣に急いだ。



 「ゾロ、友達? 何か私も見覚えが・・・・」

 「・・・同じ大学だよ」

 「・・・あー! そうだ、購買でめちゃくちゃパン買ってた人だ」

 「あいつの胃袋は底なしだからな」

 「いいの、無視したみたいだけど?」

 「いいんだよ・・・・」



ゾロは素っ気無く答えて、準新作のコーナーを見て歩く。
ナミは首をかしげつつも、同じようにDVDを選び始めた。







3本を選んでゾロがそれをカウンターに持って行くと、
レジにいた女性店員を押しのけるように、先程の黒髪の男がそれを受け取った。



 「ゾローーー無視すんなよなー、寂しいじゃんかよ」

 「・・・・お前、今日バイトの日じゃねぇだろ」

 「増やしたんだよ」

 「ふーん・・・・」



ピッ、とバーコードを読み取りながらも、ルフィという黒髪の男は嬉しそうにゾロに話しかける。
だがゾロは浮かない顔だった。

ナミはゾロから離れて新作コーナーを見ていたのだが、
ゾロの様子が気になったので近づいてみた。

ちょうどその時。





 「ゾロ、新作入ったぞ!」

 「・・・・っ」



 (新作?)



ナミはピタリと足を止め、2人の様子を伺う。

ルフィは得意げだったが、何故かゾロは慌てていた。



 「お前が好きなあの女優のだ!」

 「ルフィ、声がでけぇ・・・・」

 「どうする? あの女優の制服シリーズ人気だから、すぐレンタルされちまうぜ? 今日借りてくか?」

 「だから声がでけぇって!」




笑顔満面のルフィと、焦ったようにルフィの口を塞ごうとするゾロ。
ナミはピーンと来た。



ゾロも健全なる男子だ。
当然、AVの1本や2本や3本や4本、レンタルぐらいするのだろう。

聞かなかったことにしてあげたほうがいいのかな、と思いつつ、
若干胸の中がムカムカするのをナミは感じていた。


ゾロは自分に友人として以上の好意を抱いてくれているはずだ。
ナミはそれを感じていたし、自分だってゾロの事が好きだ。
でも今の関係が心地良くて、なかなか言い出せないでいるだけで。
どちらかといえばゾロの方は、その一歩を踏み出そうとしているのだが、
ナミ自身がそれを避けてきている感がある。
ゾロと恋人同士になりたいという気持ちもあるが、
今現在の友人関係もとても大切なのだ。


男がAVを見るのは普通のこと。
でもやはり、自分のことを好きなくせに他の女のビデオなんか見るの?という気持ちが湧いてきてしまう。

自分の我儘でゾロの気持ちを無視してきたというのに、何て我儘なんだろうと思っても、
ムカつくものは仕方がない。



焦っているゾロから少し離れて、ナミはジロリとその背中に睨みをきかせていた。

すると、ひょいと顔を覗かせたルフィがナミに気付いた。
ナミは慌てて顔を元に戻して、つい愛想笑いをしてしまった。





 「なぁゾロ、お前の彼女、あの女優に似てんなぁ」

 「!!??」



ナミが後ろにいることに気付いていなかったゾロは、物凄い勢いで振り返った。
一瞬ナミは何を言われたのか分からず呆けていたが、
目が合った瞬間、ゾロが一気に顔を赤くしたので、つられてナミも真っ赤になってしまった。



 「あ、逆か。あの女優がお前の彼女に似てんのか!」



ゾロの彼女呼ばわりされたことも恥ずかしかったのだが、それよりも。

ゾロが見ているAVの女優が、私に似てる?


意味を理解したナミはどんどんと顔を赤くして、ゾロも負けじと真っ赤な顔でルフィの首を締めている。



 「てめぇ、コロス・・・・!!」

 「ぐぇ! ゾロ、マジで死ぬ!!!」



ルフィはじたばたと暴れてゾロの手から逃れ、ゲホゲホとムセた。



 「何だよ、何か変なこと言ったかおれ?」

 「自覚の無ぇその口、いっそ縫い付けるか・・・・・?」



ゆらりと殺気を漂わせるゾロに、ルフィは無言でブンブンと首を振る。



 「あー分かった、とりあえずレンタル料タダにしてやるから、許せ!」

 「タダっつったって、300円だろうが」

 「分かった分かった、じゃああのDVDも取っといてやるから・・・・」

 「だからその話をやめろっつってんだボケェ!!!」















店を出た2人は、微妙に気まずい空気を伴って歩いていた。



 「・・・・・」

 「・・・・・」



ナミがチラリと顔をあげて隣のゾロを見ると、
ゾロはいまだに顔を赤くしてナミの方から目をそむけていた。



 「・・・・・ゾロ」

 「な、なんだ」



話しかけると、ゾロはギクリと体を強張らせて返事をした。



 「ゾロもAVとか見るんだね」

 「・・・・・頼むからその話はやめてくれ・・・・」

 「別にいいわよ、男ならそれが普通だもんね」

 「・・・・・・」



ナミはゾロの困ったような顔を見て、思わず笑った。
ゾロはナミの言葉にどう返せばいいのか分からなかったので、とりあえず無言でいた。



 「でも、あのDVDはもう見ないで」

 「・・・あの?」

 「私に似た女優の」

 「っっっ! ・・・・・・あぁ、悪ぃ。もう見ねぇ・・・」

 「よろしく」

 「確かに、気分悪ぃよな・・・ダチが自分に似た女優のAV見てるなんざ・・・・」

 「そうじゃなくて」

 「あ?」



ナミは立ち止まる。
少し遅れて止まったゾロは、振り返ってナミを見る。



 「私がいるんだから、私に似た女優なんていらないでしょ」

 「・・・・・・・・・・・・おい、それどういう・・・・」

 「・・・早く部屋行こ、映画見たいから」





ナミは赤くなった顔を誤魔化すように早足になってゾロを抜かした。
呆然としていたゾロは、慌ててその後を追う。




とりあえず、前進するきっかけにはなった。

ナミは心の中で、自分に似たAV女優に感謝した。




2006/07/09 UP

『レンタルビデオ屋に来た二人。AVの話でナミさんの機嫌を損ねるゾロ』
(ゾロ→ナミ、最後はバカップル)

6/2にリクくれたReeさん、こんなんでどうでしょうか。
最後、バカップルというか・・・・????
ゾロは制服好きらしい・・・。
てかこのタイトルは・・・アレかな・・・(笑)。
いや、今の関係から抜け出した、という意味の方ダヨモチロン!!!

ターミネーター風のAVが見たくてたまらない(爆)。
見たことある人いますか?(聞くなよ)

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