師。







キッチンで酒を酌み交わす気配が3つ。

この船のコック、航海士、そして剣士であった。



夜のキッチンで時折開かれるプチ宴会。
お子様チームは既に夢の中、残った3人は静かに酒を楽しんでいた。








 「ナミさん、次見張り番だろ? そんなに飲んで大丈夫?」

 「大丈夫。寒いから飲まなきゃ凍え死んじゃうわ!!」



そう言いながら、ナミはさらに新しい瓶を開ける。
サンジはそれに苦笑して、ナミの手から瓶を取ってそのグラスに注いでやった。
ゾロは手酌で勝手にどんどんと瓶を空けていく。



 「てめぇ…、一人で勝手に進めんなよなー」

 「お前らがチビチビ飲んでっから」

 「たまにはこう、しっとり飲もうとか思わねぇのか?」

 「別に」

 「つまんねぇヤツ! ナミさんこんなのやめておれにしようよ!」

 「やーだ」

 「つれない貴女が大好きです!!」

 「Mか」

 「うるせ!」



ゾロとサンジは相変わらずだが、それでも酒の席では昼間に比べれば雰囲気は柔らかい。
元々仲が悪いわけではなく、このやりとりが2人にとっては普通なのだ。



 「ゾロー、ちゃんとサンジくんにもお酒注いであげて!」

 「…うるせぇなぁいちいち」



そう言いながらも、ゾロは素直にサンジに向かって酒瓶を突き出す。
サンジはニヤリと笑ってその酒を受けた。



 「魔獣も惚れた女にゃ勝てねぇか」

 「うるせぇ」

 「あはは!」





サンジとナミが顔を合わせて、うっすら顔を赤くしたゾロを笑っていると、
キッチンの扉が静かに開いた。




 「あら、お邪魔だったかしら?」

 「あ、ロビンちゃん! 見張りお疲れーーーvvv」

 「やだ、もうそんな時間!? ごめんロビン!」



ロビンの姿を見て、ナミは慌てて立ち上がる。
脇に置いていた暇つぶし用の本を数冊抱え、ついでに酒を1本掴む。



 「今呼びに行こうと思ってたの。特に変わりは無いから、急がなくても大丈夫よ?」



両手を胸の前で交差させてから、ロビンは微笑む。
ナミは「ごめんねありがとう!」と言い残して脇を駆け抜けて行った。

その後姿を見送って、ロビンは先程までナミが座っていた席へ腰を下ろした。
すかさずサンジは新しいグラスを差し出し、酒を注ぐ。



 「あれだけ飲んで、ナミさんよく走れるなぁ」

 「強いもの、彼女は」



クスクスとサンジとロビンは笑いあう。



 「酔い潰すのは大変そうね」

 「あぁそういや……」



ふと、何かを思い出したのかサンジがポツリと言った。



 「去年の今頃じゃねぇ? てめぇとロビンちゃんのアレで、ナミさんご立腹したの」



サンジがヘラリと笑ってゾロを見る。
ゾロは一瞬手を止め、ジロリと睨み返した。



 「あぁ、そうね…今くらいの時期だったかしら?」

 「あの時はナミさん大分酔ってたよな?」

 「えぇ、航海士さんも私もね」



何事も無かったかのように、ロビンは笑っている。
ゾロはその笑顔を、口元を引きつらせながら見ていた。





1年前のある夜。
この日と同じように、キッチンで4人は酒を飲んでいた。
そこで珍しく酔っ払ってしまったロビンが、サンジとナミの見ている前でゾロに濃厚なキスをかましてくれたのだ。
おかげでナミはその後見張り台で、かなりキレていた。

ロビンがゾロにキスしたこと、にではなく、
ロビンのキスにゾロがうっとりしていたこと、に。





思い出したゾロは、むすっとした表情で酒瓶を一気にあおる。



 「あの後お前見張りだったから消えただろ? ナミさんすげぇグチグチ言ってたんだぜ?」

 「……知ってる。見張り台にあがってきた」

 「あぁそう。泣き上戸みたいになっててさー、かわいかったなぁー」

 「えぇ、本当に」




確かにボヤいてはいたが、ゾロはそれを上手くなだめた。
意外とかわいい面もあったもんだ、と懐かしく思い出す。






 「でも、今の航海士さんはすごいでしょ?」



ロビンがさらりとそう言って、再びゾロは固まった。
目が合うと、ロビンは相変わらずの笑顔を見せている。



 「あ、あぁ…」



思わず返事をしてしまい、
ゾロはどうにか気を落ち着け酒瓶に口を付けようとするがふと動きが止まる。




 「……おいちょっと待て。 何でてめぇが知ってる?」

 「ふふふ、どうしてかしらね…?」

 「おい……」



自分を睨みつける凶悪な顔に臆する事もなく、ロビンはグラスの酒を優雅に飲む。
サンジはというと、見張りを終えたロビンのために夜食を作り始めていたが、
2人の微妙な空気に気付いて再びテーブルに近寄ってくる。

表情の読めないロビンを見つめながら、ゾロは考える。


確かにあれ以来、特に最近のナミのキスは。

いやだがそれはおれの教育の賜物じゃねぇのか?





 「だってあなたが言ったんでしょ?」

 「…何を」



ロビンは首をかしげながら、ゾロの目をじっと見つめる。
その視線にたじろいだゾロだが、負けじと睨み返す。



 「コックさんとは練習しちゃだめだって」

 「………何でそれをてめぇが知ってんだよ」




あの後見張り台に上がってきたナミは、サンジとキスの練習をすると言っていた。
どうにかそれをやめさせたゾロだが、ロビンが何故それを知っているのか。

ただ知っているだけなら女同士の会話の中で、とも考えられるが。
今のロビンの表情を見るかぎり、どうもそれだけではない気がする。

ゾロはその表情を読もうとするが、やはり分からない。




 「上手になったでしょ、彼女?」



妖しい顔で、ロビンは微笑んだ。


それを見て、ゾロの中で答えが一つ出た。




 「………まさか、お前と」

 「ふふふふふ」

 「おいコラどこ行くんだてめぇ!!!」

 「ナミさんおれと練習したかったんだーーvv」

 「ンなわけあるかグル眉!!」



楽しそうに、意味深に笑ったロビンは立ち上がりさっさと扉へ向かっていく。
ゾロも立ち上がってそれを止めようとしたが、
サンジに突っこんでいる間にロビンの姿は消えてしまった。





扉を見つめながら、ゾロは舌打ちをする。

どうやらナミの教師はロビンらしい。

認めたくはないが、そこまで考えてまたゾロの動きが止まる。


キスだけでなく。
それに付随して。
あっちの方もえらいことになっていたが。
天性の技なのかと思っていたが。

まさか。






 「……ロビーーン!!! てめぇあいつに何教えやがったーーー!!!!」




返事の無い哀れなゾロの問いが、深夜のキッチンに響いていた。




『【教。】の続きで、成果の披露』
何気にニコナミ。
ナミさんはテクニシャンになりました(笑)。
エロ風味をご期待された方、marikoにそれはムリな話だよ!

10/9にリクくれた方、これで勘弁してくださいーー!!(土下座)

2006/11/27 UP

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