教。
「ごめんなさいね私ヘタで」
見張り台にて、
酔いの醒めてきたナミは、殺気を放ちながら呟く。
「誰もお前がヘタだなんて言ってねぇだろ」
「でもロビンのキスはよかったんでしょー!!」
「そりゃ単にあいつの方が場数踏んでるだけじゃねぇのか」
数時間前、キッチンでゾロとナミ、サンジ、そしてロビンの4人は酒を飲んでいた。
機嫌のよかったロビンは普段よりも酔ってしまい、
その勢いのまま、ゾロに熱烈キスをお見舞いしてくれたのだった。
ロビンは今はもう、部屋に戻って眠っている。
サンジも男部屋に戻り、ゾロは見張り番なのだが、
いつものようにナミがひっついてきている。
普段ならば、ここぞとばかりにイチャつける時間なのだが、
さっきの出来事は、酒の抜けてきたナミにはかなりのご立腹事件だった。
当然だ。
ゾロとナミはいわゆる恋人同士。
それはこの船で皆に承知されている事実であるし、
いくら酒の席と言えど先程のロビンとゾロのキスは、
ナミからすれば立派な浮気、裏切り行為なのだった。
だがそれよりも、ナミには腹立たしいことがあった。
ゾロが、ロビンの『技』をまんざらでないと思ったこと。
「うるさいうるさい!!うっとりしてたじゃない!!」
「うっと・・・・て、誰がんな事!!」
思わず言葉に詰まるゾロだったが、何とか立て直し反撃する。
「してたわよしてたわよ!!呆けてたくせに!」
「ぐ・・・・」
反論の余地もなく、再びゾロは口篭る。
「いいわよじゃあ私、サンジくんで練習するから!」
「なっ・・・おいコラ待て!」
慌ててゾロははしごを降りようと立ち上がるナミの腕を取って、ムリヤリ座らせる。
「何よ!言っとくけどあんたに私を止める権利は無いわよ浮気者!」
「待てってコラ!!」
再び立ち上がるナミの腕を、ゾロは急いで掴むが、今度はナミも負けていなかった。
その手を振り払い、仁王立ちでゾロを睨みつける。
「離して!サンジくんで練習してものっすごい技師になって戻ってくるから、
覚悟して待ってなさいよ!!」
「だーから!ヤメロ!!!」
「・・・・なによ・・、だってロビンが良かったんでしょ・・・」
急にナミはへたりと座り込み、泣きそうな声で言った。
「練習しなきゃ、勝てないじゃない・・・・」
手の甲で自分の目元をぐい、と拭いながら小さく呟くナミを、
ゾロは抱き寄せて頭をポンポンと撫でる。
「そもそも練習って何だよ」
「だから、サンジくんに教えてもらうのよ」
「マジでやったらコック斬り殺すぞ」
「何でサンジくんの方を殺すのよバカ」
「うるせぇ、とにかく練習なんぞしなくていい!!」
「だって・・・・」
ナミはゾロの背中に手を回し、しがみつくようにそのシャツを掴む。
「お前はまだ今のままでいいんだよ」
「・・・何で・・・」
ナミは不審そうに顔を上げ、ゾロと目を合わす。
ゾロはナミを見下ろしてニヤリと笑って、言った。
「これから、おれが仕込んでくんだからな」
数秒の沈黙の後、ナミの顔がボンっと真っ赤になる。
「・・・・・・・・」
「分かったか?」
「・・・・・・・・」
「返事」
「・・・・下手な教え方したら承知しないわよ・・・」
「言われずとも」
ナミ誕リクで頂いた『巧』の続き。
ナミさんがカワイソウ、てことで続きのリクがありまして。
ナミさんのリベンジというか、
ゾロの危機回避努力。
とりあえずナミさん愛されてるから。
それでヨシとしよう。うん。
2005/11/11
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