近。
別れてからもおれの頭から離れることはなくて、新しい女との付き合いをことごとく邪魔してくれた。
今ではもう諦めた。
そのうち忘れる日が来るだろう、と。
・・・諦めた?
違う。
おれはまだ、期待してるんだ。
あいつがよく使っていた電車だとか。
あいつとよく一緒に歩いた通りだとか。
そう、例えばこんな人ごみとか。
もしかしたらあいつに、という女々しい期待を、おれは今もまだ。
ふと気配を感じた。
懐かしい、そして愛しい。
あいつが近くにいる。
別れて何年も経っているというのに、あいつが傍にいるかもと考えただけで脈が速くなる。
これはおれの願望か?
違う、確かにあいつの視線を感じる。
おれを呼ぶあいつの声が、聞こえた気がした。
ゆっくりと振り向く。
あぁ、やっぱり。
泣きそうな顔でおれを見つめている、懐かしい顔。
本当は懐かしくなんかない。
ことあるごとにおれの夢に出て、ことあるごとにお前を思い出して。
ふっと笑うと、あいつも安心したように笑顔を見せた。
その顔が、おれは好きなんだ。
人の間をかき分けて、それでも少しの見栄をはって焦っていると見えないように、歩道橋を上る。
思わずナミ、と呼んでしまった。
この距離ではまだ届くはずもないのに、ナミはそれに反応したかのようにふわりと笑った。
すぐ目の前に立って、見下ろす。
少しも変らない。
いや、・・・美人になった。
大人になってからの数年でそうそう変わるモンじゃないが、それでも確かに美人になった。
少し髪も短くなっている。
あの頃はもう少し長めに揃えていたのに。
おれと別れたあと、違う男と付き合ったのだろうか。
勝手な嫉妬が頭の中で育ってくるが、それを見せないように笑ってみせる。
少し瞳を潤ませて、久しぶりとナミは言った。
その瞳も、その唇も、その体も、その声も。
ずっと離さないと思っていたのに、結局離れてしまったそれが今目の前に。
ナミは何かを言いたげだったが、頭と口が追いつかないのか、なかなか話し出さなかった。
おれはというと、何も言えなかった。
今口を開けば、『付き合ってるヤツはいるのか』といきなり無粋なことを聞いてしまいそうだったからだ。
おれたちに今必要なのはそんな質問ではなくて、時間。
離れていた時を埋める、新しい時間。
なぁナミ、話をしよう。
そうして空白の時間を埋めていこう。
そうしたら、そのあとで、
離してしまったお前の手を、おれはもう一度握るから。
そしたらお前は何て答える?
2006/08/16 UP
『【再。】の続き』
6/21にリクくれた方、続きというよりゾロサイドの話になってしまいました。
逃げたmarikoです、ごめんなさい。
だってさー、このあとヨリ戻したゾロナミってさー、普通の社会人パラレルだしさーー(言い訳)
そして短い!
なーんか、2人揃って未練タラタラ。
ちょこっとだけ前作よりは進んでます?(笑)
続きになってます?(許しを求める)
この前作もネタ的にかなり切羽詰って書いたんですよね・・・(遠い目)
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