再。







 ・・・・・ゾロ





歩道橋の上から見下ろした道路に、目立つその髪を見つけた。
こんな人ごみでも、気付いてしまった。

もう何年も会っていないのに。

それなのに、あの存在に、気付いてしまう。


私はまだ、彼を忘れていない。

















恋人同士が違う大学に進んで、距離が開いてしまうのはよくあること。
私たちも例外ではなかった。

会えない時間にくだらない不安を膨らませて、私は我儘ばかり言っていた。
でもゾロは優しかった。
不安を抱く必要など無かったのに、
あの頃の私には、そんな余裕はなかった。

私がどれだけ不安がっても、ゾロはいつも平気そうだった。
いつも優しく私を受けいれてくれたし、慰めてくれた。
それなのに、私はそれが無性に腹立たしかったのだ。
どうしてそんなに平静でいられるのか、と。
私にはゾロしかいなくて、ゾロしか見えていなかった。

そしてまた不安を抱く。
ゾロの気持ちを、疑ってしまう。



そうして私は一度だけの浮気をした。
ゾロへの、あてつけだった。
それなのに、ゾロはただ笑って許してくれた。
泣いて謝る私を、許してくれた。



私はもっと、ゾロを信じればよかったのだ。
ただそれだけでよかったのに、
私にはそれができなかった。




身勝手で浅はかな自分の行動に腹が立って、罪の重さに耐え切れなくなって、
結局私はゾロに別れを切り出した。

ゾロのことは、好きだった。
でも、もう一緒にはいられない。



ゾロはいつも優しかった。
勝手な私の言い分を、このときも、哀しい笑顔で受けいれてくれた。

それが哀しくて、恨めしくて、私はただ泣いていた。








それから、私は恋人を作らなかった。
告白されたり、友人に連れられて合コンに行ったりはしても、
彼氏となるような男は出てこなかった。

ゾロのことをひきずっていたわけではない。
別れてからしばらくは落ち込んでいたけど、
1年もすれば、平気になっていたのだ。
少なくとも自分ではそう思っていた。
それでもやはり、恋人という段階に進むには至らなかった。





忘れたつもりだった。
ふっきれたつもりだった。















それなのに、あの人の後姿を見つけただけで、
こんなにも心が乱される。

平気だと、
懐かしむだけだと、
思っていたのに。







 ゾロ







口には出さず、心で叫ぶ。






 決して振り向かないで


 どうか振り向いて













あの目が私を見る。
あの声が私を呼ぶ。
あの腕が私に触れる。

もう二度と、あり得ないこと。


そう思って、ただ後姿を見つめる。





昔と変わらぬ綺麗な後姿が、だんだんと遠ざかる。











 ・・・・ゾロ











小さく、声に出す。
あの頃、毎日のように口にしていた名前は、
騒音に流されて消えた。



泣きそうに、なる。


















 ・・・・・・・・あ












後姿が、立ち止まる。
そして、ゆっくりと、振り返る。














いつも傍にあると思っていた。
いつも傍にあってほしいと願っていた。


その存在が、いま、また。
私に向かって微笑んだ。


















 ナミ









同じように、騒音に消えるその声は、
私の耳にはちゃんと届く。









 ねぇゾロ

 話したいことは
 聞きたいことは
 たくさんある

 あれからどうしてた?
 仕事は何してるの?
 ・・・今、彼女はいるの?










階段を上がってくる愛しいその姿に、

言いたいことが、

告げたい気持ちが、

溢れそう。







「昔別れたゾロとナミが、社会人になってまた恋人同士に」
11/2にリクくれた方。
一応社会人です。
一応再会してます。
おそらくこの後なんやかんやでまた恋人同士になります(笑)。
・・・そこをSSにすべきだったのか!?(自爆)
・・・まぁ、こんな感じで・・・・いかがでしょ。

2005/11/21

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