(この状況って、何?)



ナミは、近くのティールームにいる。
アールグレイを飲みながら、今の状況を冷静に考えてみる。
目の前には、あの2人の美しい青年。
今こうして見ると、昨日のことは夢だったのか、と思えるほど
2人は穏やかに笑っている。
天使みたい、とふと思った。





ナミに声をかけてきたのはマーフと呼ばれた、ブラウンの髪の青年だ。
彼はさっきから、隣に座っているコナーと呼ばれた金髪の青年にちょっかいばかり出している。
それをコナーという男が笑顔で諌める。


 (何でこの2人、私を放っといてイチャついてんの?)


自分たちから声をかけてきたくせに、
昨日のことには触れもせず、2人でじゃれている。
2人の会話の途中で時折ナミに同意を求めるように声をかけるが、
ナミが返事をしようがしまいが、その返事の内容がどうであれ、
彼らには関係ないようにまたじゃれあいだす。
他の人間が立ち入る隙が無い。





 「あのーー・・・・」


耐え切れず、ナミは自分から切り出した。


 「私のこと、どうするの?」










2人はナミを見たあと、同じタイミングで互いの顔を見る。
そして、ナミには分からない、異国の言葉で会話をしだした。


二言三言話したあとで、2人はナミに向き直った。









 「何もしないよ」

マーフという青年が、人懐っこい笑顔で言う。

 「え?」

 「おれたちは、悪人しか処刑しない」

コナーという青年は、柔らかい笑顔でそう言った。


















 「処刑・・・?」

 「神の啓示だ」


マーフは、首からぶら下げたロザリオに触れながら言う。
よく見れば、コナーも同じものをしている。
紐の長さはマーフの方が長いようだ。


 「殺すな、姦淫するな、盗むな」

コナーもロザリオに触れ、唱えるように呟く。

 「あの男達はそれを守らなかった」















キレイな笑顔で、何かとんでもないこと言ってるんじゃないの?と思ったが、口には出さなかった。

 「私がそれを守ってなかったらどうするの?」

 「・・・・あんたは、そんな風には見えないね」

 「見た目で判断?」

 「分かるよ」

言い切られると、昔は海賊専門の泥棒でした、とはとても白状できない。



 「おれはマーフィ、こっちはコナー」

 「・・・私はナミ」

何で自己紹介してんだろう、と思ったけど、とりあえず返しておく。


 「あの、何もしないなら、何で呼び止めたの?」

 「本落としたろ?」

 「・・・本?」

 「高そうな本だったし、落し物は返さないとな」

マーフィがそう言うと、2人は声を揃えて笑う。


 (何なのこの2人・・・?)


ナミは何だか疲れてきた。




 「あんた、酒呑める?」

唐突に、マーフィが言う。

 「え?えぇ」

 「じゃ呑もう」

 「せっかくの出会いだ」

コナーがニヤリと笑う。
何だかゾロに似てるな、と思った。
ゾロはもっと凶悪面だけど。














真昼間から酒を呑む。

人殺しと、目撃者。

 (もうあんまり深く考えるの、やめよ)

いい加減考えすぎて疲れたナミは、この際素直に酒を楽しむことにした。



目の前にはいい男2人、手元には美味しいお酒。
楽しまずしてどうするってのよ。







昨日のことさえ考えなければ、
確かにこの時間はとても楽しいものだった。
会話もおもしろかったし、
目の前の2人がじゃれあっているのを見ると、ほのぼのとしてつい笑顔になる。




 「あなたたちって、どういう関係?」

 「兄弟」

 「・・・・兄弟!?似てないわね」

 「しかも双子」

 「双子ぉ!?」

 「似てないけどね」

 「どっちがお兄さん?」

 「「おれ」」

声を合わせて言う。
そしてにらみ合う。

 「何言ってんだマーフ、おれだ」

 「バカコナー、おれだよ」

 「マーも言ってただろ、アレのデカイ方が先に生まれたって」

 「じゃあなおさらおれだ」

 「ファック!」

2人のやりとりに、ナミはつい噴出してしまった。






 「その、手の刺青、何て書いてあるの?」

昨日はよくは見えなかったが、その手の刺青は文字だった。
2人で対になっているように見える。
コナーは左手に、マーフィーは右手に。
首元にも、マリア像が彫ってある。


 「VERITAS・・・。『真理』さ」

コナーが左手をナミに見せながら言う。

 「おれのは、AEQUITAS・・・・。『公平、正義』」

マーフィも同じように、ナミに見せる。

 「へぇ・・・・素敵ね」

そう言うと、二人は笑った。
笑顔が美しくて、思わず赤面してしまう。

 「と、ところで、何で『処刑』なんてしてるの?」

誤魔化すために、つい昨日のことに触れてしまった。



 「悪人だからだよ」

マーフィは相変わらず人懐こい笑顔だ。

 「・・・悪人だから殺すの?」

 「・・おれたちがやらないと、誰がやるんだ?」

コナーは、真面目な顔になって言う。

 「目の前の罪をただ見てるだけなのは、悪人と同じだぜ」

 「・・・・だからって、殺していいの?」

 「誰かがやらなきゃ」

コナーは、一瞬辛そうな顔をする。

 「・・・辛いんじゃないの?」

 「・・・・・・神の御意志だ」

 「Destroy all that which is evil, so that which is good may flourish」

マーフィが言う。

 「・・・・『悪なる者を滅ぼし・・・善なる者を栄えさせよ』・・・・・?」




 「これがおれたちの使命なんだ」

















 「通報はしないでくれよ」

 「しないわ。命がおしいもの」

 「あんたを殺しはしないよ」

2人は笑いながら言った。




















船に戻ると、ゾロが甲板で寝ていた。
どうやら他の皆は町に出ているらしい。
ゾロの傍にしゃがみこんで、ナミはゾロを揺する。


 「ゾロ、起きて」

 「・・・・んぁ?」

 「ゾロ」

いつもなら蹴り飛ばすのに、やたらしおらしいナミの起こし方に
ゾロはゆっくりと目を開ける。



 「ゾロ」

 「何だよ、どうした」

 「ゾロは、人を殺したこと、ある?」




神妙な顔でナミが聞く。
真昼間からする話じゃねぇよな、とゾロは思ったが、
ナミが真面目な態度なので、はぐらかさずに答える。


 「・・ある」

 「平気だった?」

 「平気・・・?」

 「辛くはなかった?」

 「・・・・・初めて人を殺したときは、自分の命を守るので精一杯だった」

 「・・・そのあとは?」

 「・・・・・辛くないときは、無い」

 「・・・・・」

 「どんな理由でも、人の命を奪うんだ。平気じゃいられねぇよ」

 「・・・・・・」

 「その時は何も感じなくても、後で辛いな」

 「・・・・・」

 「・・・何、泣いてんだ」

 「ごめんね」

 「・・・・・?」








今のゾロが人を殺すのは、皆を、私を、守るためだ。
誰かを守るために、誰かを殺す。






 「辛いことをさせて、ごめんね」

 「・・・・お前のせいじゃねぇだろ」


ゾロは、しがみついてきたナミの頭を撫でながら、言う。











 「おれの仕事だ」







泣きながら、ナミはさらに強くゾロに抱きつく。

 「好きよ、ゾロ」

 「・・・・・・ああ」

 「私が傍にいるからね」

 「・・・・ああ」














あの、天使のように笑う2人は、いつかその使命から解放されるのだろうか。













ああ神様







どうか







貴方の息子たちに祝福を








訳分からん終わり方。
気にするなーー。
処刑人好きの人間が書いてるので、処刑人知らない人には
状況よく分からないかも。
説明下手です。文才がぁ・・・。

映画「処刑人」
コナー・マクマナス : ショーン・パトリック・フラナリー
マーフィー・マクマナス : ノーマン・リーダス
ポール・スメッカー : ウィレム・デフォー

かなりおもしろいですよ。激ハマリ。ショーンがかっこよすぎて。
同人に走った(笑)きっかけですなぁ。。。
処刑人サイトを辿ってて、何故かワンピサイトにたどり着いて、
そこからワンピにハマったのです。。。。。ふふふ。
是非見てください。
US版DVDの特典映像のあたりもネタに使わせていただきました。
いつかワンピと処刑人をからませたかったんだ・・・。
どっちも好きだから。
アップ祭りの最後の作品ということで。

2005/01/30

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