処。












     主のために守らん

     主の御力を得て

     主の命を実行せん

     川は主の下へ流れ

     魂は一つにならん

     父と子と精霊の御名において















その日着いた島は、ログが溜まるまで1週間もかかるらしく
とりあえず今日は全員が自由行動だった。
ナミも一人で街へ出て、気ままに店を見たりしていた。



専門書を扱っている本屋があると聞き
ナミは表通りから脇道へ入り、人通りの少ない通りを歩く。






観光客らしき人間はあまりいない。
地元の人間らしき老人は何人かいた。

 (こういうところに穴場な店があったりするのよねー)



ナミは目当ての本屋を見つけ、
以前から欲しかった気象学の専門書を見つけた。
それ以外にも目に付いた本を数冊購入して、店を出る。




人気のない道を歩いていると、
脇道から、何か物音がする。






人の声。
震えている。



誰かが襲われているのかもしれない、と思い、
ナミは気配を消して、壁に隠れてそっと道を覗いた。





















 「で、襲われてたのか?」

 「うん、まぁ、襲われてた」

 「それで、助けたの?」

 「それが・・・何か違ってたのよね」

 「何かって、何が」

 「その・・・やられてた男の方が、悪者っぽかったの」

 「でも見た目じゃ分からないわよ」

 「うーん、でもそうとしか見えなかったのよね・・・それに・・」

 「それに?」

 「祈ってたの」

 「祈ってた?誰が?」

 「襲ってたほうが」






















そこには、生きている男が3人いた。

地面には、おそらくもう息はしていないであろう男が4人。
それぞれ弾丸1発で仕留められたように見える。

そして女性が1人。
息はしているが、気を失って仰向けに倒れている。

女性の服は引き裂かれ、顔には殴られた跡があった。
男どもが道に連れ込んで、乱暴をしようとしたのだろう。



そして生きている男のうち、いかにも悪そうな顔の男は、ひざまずいていた。
その男の背中側に立つ人間が、2人。

それはどちらもまだ青年で、
2人とも同じ、黒いピーコートにジーンズという、どこにでもいるような普通の格好だった。
ただ普通と違うのは
ひざまずく男の後頭部に、彼らが銃を当てていることだった。













男は泣きながら震えつつも、後ろの男達に向かって暴言を吐いていた。
その背後で2人の青年は、
身じろぎ一つせずに、男を見下ろしながらその頭に銃を突きつけたままでいる。

ナミに背中を向けている青年は、右手で銃を持っている。
その手の甲には何か彫ってあるように見える。
そして彼と向かい合うように立っているもう一人の青年は、左手で銃を突きつけている。
彼の左手の甲にも、同様に何かあるようだ。

姿勢を崩さないまま、2人声を合わせて、静かに何かを言い始めた。



 (何・・・・?)











    Shepherds we will be, for Thee, my Lord, for Thee,

    Power hath descended forth from thy hand.

    That our feet may swiftly carry out thy command.

    So we shall flow a river forth to Thee.

    And teeming with souls shall it ever be.

    In nomine patrie, et fili, et spiritu sancti.


        主のために守らん
 
        主の御力を得て

        主の命を実行せん

        川は主の下へ流れ

        魂はひとつにならん

        父と子と精霊の御名において















そして





その祈りを終えると同時に






男の頭は吹き飛んだ。
























 「あら、死んじゃったの?」

 「うん」

 「それで、どうしたんだよ」

 「見つかりそうになったから、逃げてきた」

 「見つかった?」

 「うーん、多分追いかけてはこなかった。ただせっかく買った本、落としちゃったのよね」

 「あら残念。私も読みたかったのに」

 「明日あの場所に行ってみようかな。落ちてるかも」

 「止めとけ。そいつらに見つかったら殺されるぜ」

 「うーん」

 「そいつら、どんなヤツだったんだ?」

 「それがねー・・・・」

 「あら、なぁに」

 「すごいキレイなの」























2人とも髪は短く、背中を向けていた青年は濃いブラウンで、もう1人は明るい金髪だった。
長身で、笑えばきっとカワイイ顔だろう。
あんな物騒な物を手にしてさえなければ
ほとんどの人間に好印象を与えるには充分な容姿だった。



ひざまずいていた男が崩れ落ち、
2人の青年は、ふっと息を吐いた。
それにつられてナミも一瞬気が緩んだ。


 「コナー、誰かいる」




  (見つかった!)



ナミは驚いて本の入っている紙袋を落としてしまったが
構わずその場から逃げた。


 「マーフ!追うな」


もう1人の声がそう言うのが聞こえた。























翌日、ナミは昨日の脇道へと来た。
ゾロには止めとけと言われたが、
あの本はどうしても欲しかったものだし、
正直、あの美しい青年2人をもう一度見てみたかった、という気持ちがあることは否定できない。
でも見つかったらやっぱり殺されるかもしれないな、とも思ったが
そんなことにはならないだろうという、不思議な確信があった。

昨日と同じように人気のないその道を歩く。

 (確かあの横道・・・・・・)

















 「お嬢さん、忘れ物ですよ」















男の声だった。


聞き覚えのあるその声。


あぁ、マズいな、と思いながら振り返ると、
昨日の2人の青年が、ナミの落とした紙袋を持って立っていた。








とりあえず2回に分けてみた。

2005/01/30

NEXT

シリアス小話/NOVEL/海賊TOP

日付別一覧

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送