離。 - zoro side -
この関係をどちらから誘ったのか、思い出そうとしたが結局判らない。
確かあいつからだった気がするが、
あいつが来なければおれから誘っていただろう。
自分の中の感情の名前など、その時は知らなかった。
あいつを抱いた後の今でも、正直よく解らない。
おれを見ているようで見ていない。
いつもどこか遠くの何かを見据えている。
そんなとらえどころのない輪郭が、ナミという女なのだと思っていた。
それを承知の上で、この関係を望んだのだ。
それでも体を重ねるごとに距離が縮まっていると思ったのは、
こっちの勝手な錯覚だったのかもしれない。
あいつの心が近づいたのだという錯覚を。
嫌な夢でも見ていたのか、時折隣で小さく泣いていた夜も、
抱き寄せてやれば泣き止む。
愛しいと思ったのは、真実だ。
突然に最後だと告げられたとき、
決して目を合わせないあいつに本気で怒鳴った。
本心だと言うなら、何故目を合わせない。
別の真実があるのなら、何故おれに話さない。
あいつが言わなくても、おれは解ってやるべきだったのだろうか。
怒鳴り声にひるみもせず、決して口を開かない女に、
おれはどうすることもできなかった。
立ち上がって部屋から出て行こうとするおれの背中に届く視線。
そんな目で見ていやがるくせに、『最後だ』と言う。
ふりかえると、泣きそうな顔をしていた。
何故話さない。
おれはそんなに力が無いように見えるか?
だが、あいつの意思を変えることなどもうムリだ。
そんなに『弱い』女でも簡単な女でもない。
近づいて行って、最後のキスをした。
この胸に抱くのも、これが最後か。
こんなにも夜が永遠であればいいと思ったことは無かった。
甲板で一人立っていると、冷えた夜風が体を通り過ぎていく。
この先もずっとこの手にこの胸にあると思っていた暖かさは、もう無い。
握り締めた拳の中に、あいつはいない。
明日からは、ただの『仲間』になる。
別に死に別れる訳じゃない。
あいつは、この船の上にいるんだ。
それでも、確実に今日とは違う明日を迎えることに戸惑いを感じる。
素直すぎる自分に苦笑して、男部屋に戻った。
明日なんざ来なければいいと思ったのも、初めてだった。
サザンオールスターズ『涙のキッス』でゾロナミ話。
ゾロsideです。
ナミside。
2006/05/16
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