拾。






校舎の裏、道場への通りの途中で、
昼休みに生徒手帳を拾った。

開いてみるとそこには、毎日頭に浮かべている名前。



  ロロノア・ゾロ




そういえば今日の占い、『ラッキーな落し物を発見』だった。


思わずその手帳を握り締める。



  他のファンならこのままパクってるわよ。
  私でよかったわね、ロロノア・ゾロ。



そう心の中で呟いて、このチャンスを逃す手は無いと、
ゾロの教室へ向かって歩き出した。







本当は友人だというルフィのお兄さんに紹介してもらう、という手もあるのだけど。
それは何だか無理矢理な気がして、やめた。
気を遣われて仲良くなるのは、本意ではない。

自分の想いをどう言葉にして伝えるのか、何も考えないまま、
ラッキーな落し物を握り締めて前へ進んだ。

















 「ゾロ、客」

 「あ?・・・・あぁ、悪い」



ゾロのクラスの男子は、私が訪ねてきたことに怪訝な顔一つ見せず、ゾロを呼んでくれた。



 「相変わらずモテんなお前。今日の子、すっげぇカワイイぞ」



ゾロに耳打ちするその言葉が聞こえてしまい、カワイイと言われて嬉しく思う反面、
あぁこういう風にここに来る女の子は多いんだ、と知ってしまい少しヘコむ。






 「ロロノアだけど」



目の前に、ロロノア・ゾロ。

不覚にも、頭がパニックになって何を言えばいいのか分からなくなった。
顔がどんどん赤くなっていくのが自覚できて、それが恥ずかしくてさらに赤くなる。

落ち着け落ち着け、と自分に言い聞かせ、
手帳を握り締めていた手を持ち上げる。



 「て、手帳・・・落ちてました」

 「・・・あー、落としてたのか、ありがとう」

 「いえ」



握りすぎて若干シワになった手帳を見て、ゾロは苦笑する。
また、かぁっと顔が熱くなる。










 「・・・あの、」

 「ん?」

 「好きです付き合ってください」






 「・・・・・」

 「・・・・・」





ゾロのクラスメートが、背後でニヤニヤと笑っている。
これもまた、彼らには見慣れた光景なのだろうか。



 「直球だな」

 「・・・そう、ですか?」



ゾロがまたも苦笑する。

確かに、捻りも何も無い告白だった。
何も考えずに来たのは自分だけど、本人を目の前にしたら
色々考えて来たとしても、同じような言い方になっただろう。

考えるより先に口が出た。
直球で当たり前だ。



 「名前も言ってねぇのにな」



くっくっと笑いながらゾロに言われて、そういえば、と気付いた。



 「あ、私」

 「知ってる」



慌てて名前を言おうとしたら、ゾロに止められた。



 「え?」

 「ノジコ先輩の妹だろ」

 「え、あ、はい・・・」

 「写真見せてもらったこと、あんだ」

 「・・・・はぁ・・・」





ノジコも、この高校の剣道部だった。
今年卒業したのだが、つまりゾロとは1年間同じ部にいたことになる。

ルフィといいノジコといい、意外と攻めルート持ってたわね私、と今さら気付かされた。





 「ナミ」

 「・・・っ」



いきなり好きな相手に名前で呼ばれて、動揺するなというのがムリな話。
妙な汗までかいてきた。



 「・・だろ?」

 「・・・え、と、あの」

 「いいぜ」

 「え?」



一人でアセっていると、ゾロがあっさりと言った。
意味が分からず呆けていると、その顔にまたゾロが笑う。
そんなヘンな顔をしていたつもりはない。



 「付き合おうか」



そのゾロの発言に、真っ白になった私が言葉を返す前に、
教室内のギャラリーがわぁっと盛り上がり、数人の男子がゾロに突進してきた。



 「何だゾロ!お前がOKするなんて!」

 「お前も結構メンクイだなー!」


頭をぐしゃぐしゃとかき回されたり、背中やら腕やら腹やらを小突かれて、
ゾロは迷惑そうに眉間にシワを寄せ、友人たちを追い払おうとする。



 「ナミさん?って言うの?1年だよね。こいつをよろしくね!おれサンジ!」

 「あ、はい」



ゾロを呼んでくれた男子が、ゾロの背中にのしかかったままヘラヘラ笑いながら挨拶してきた。
思い出してみれば、この男子はよく見かけていた。
いつもゾロと一緒にいたから。
おそらく親友なのだろう。
何だか人懐こい感じで、安心した。



 「あぁもう!てめぇらあっち行ってろ!ほら、チャイム鳴ったぞ!」



サンジくんを払いのけながら、ゾロは私に向き直る。



 「ナミ、授業始まるからもう戻れ。とりあえず・・・放課後、門で待ってろ、な?」

 「・・・うん」




あぁ私、今からゾロの彼女なんだ。

まだ実感が湧かないが、何だか今ならフワフワどこにでも飛んでいけそう。




楽しい高校生活の、始まりだ。





拍手の大学1年ゾロ&高校3年ナミの、始まり編。
過去拍手を読んでいただけたら、この2人がチラチラ登場してます。
』の2人は、高校3年&高校2年です。

オチがグダグダなのは、気付かなかったフリしてください(笑)。

2005/11/26

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