約束だよ。
2人だけの約束だよ。
「ぜったいのぜったい?」
「ぜったいのぜったいじゃ!!」
「じゃーこの桜に誓って…」
「あァ!!? ヌぅ…誓う」
公園に立っている、大きな桜の木。
綺麗なピンク色の花びらが満開で、時折春の風に吹かれてヒラヒラと落ちてくる。
美咲はてててっと駆けていき、一本の桜の幹にポンと手を置いた。
笑顔で振り返ると、与作は顔をしかめて渋々と後を追ってきていた。
誓う、とボソリと呟いた与作は、桜の木の根元に座り込んだ。
握っていたボールをぽーんと上に軽く放って、キャッチする。
何度かそれを繰り返し、ちらりと美咲を見上げた。
隣の少女はニコニコと笑いながら見返してくる。
「約束やぶったら?」
「しつけーっ!!!」
与作が怒鳴っても美咲は臆することもなく、
相変わらず嬉しそうに笑いながら、同じように木の根元に腰を下ろす。
「約束だよ」
「……しつけーって言ったじゃろーが」
「与作と私、2人の約束だよ」
「……じゃけぇ、お前も泣くなよ」
「わかった!」
与作はふいと顔を背け、手の中でボールを転がす。
その耳が赤くなっているのを発見して、美咲はうふふと笑って幹に寄りかかり、目を閉じた。
与作は再びボールを放り上げながら、目を瞑った美咲に気付いて声をかける。
「寝る気か?」
「だって、天気いいんだもん」
「ワシは練習行くぞ」
「休憩しようよ」
立ち上がりかけたその左手を、美咲はきゅっと握った。
一旦腰を浮かせた与作だが、仕方なくもう一度座り込む。
「………」
「………」
美咲は目を閉じて、春の風を頬で感じていた。
与作は右手のグローブの中でボールを転がしながら、顔を上げて桜の花を見つめた。
手を繋いだまま、2人は何も喋らずただ座っていた。
交わされた約束と
果たされなかった約束
2人で見上げることはもう無いけれど
それでも変わらず、桜の花を開くのだ。
約束だよ。
少女の部屋には、あの日の人形が今もまだ飾ってある。
『ここは始まりの場所』
1巻カバー裏やらの鷹みさっぷりに身悶えた。
それをさらに捏造。
2007/01/07 UP
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