「太朗! もっとスピード上げれ!」




鷹見くんの怒鳴り声が頭上から降ってくる。

そんなこと言われても、これがオレのマックスです。




怒声を無視し、土手を駆け下りて川べりの草の上に寝転がる。
鷹見くんも仕方なくついてきて、真上からオレを見下ろす。



 「体力無いのぅ、ワシならあと10kmは余裕じゃ」

 「た、鷹見くんとっ、一緒に、しな、でよ!」



切れ切れの言葉を発しながら、じろりと睨む。



 「こっちは、テスト、終わってっ」



はーはーと胸を上下させ、喋るのもしんどくなったのでそこまで言ってはーーっと息を吐いた。

鷹見くんは隣に腰を下ろし、チラリとオレを横目で見てくる。
目をぎゅっと閉じてそれを無視する。



 「早よ起きれ」

 「きゅ、きゅーけー! 10分! 決まり!」

 「………」



ムリヤリ言い切って、呼吸を落ち着けようと深く息を吸い、ゆっくり吐いた。


ふと目を開けて、空を見上げる。



真っ青な空に、眩しい太陽。


テストが終わってようやくの休日の朝にまで走らなくたっていいじゃないか。
徹夜で必死に詰め込んだんだから、とりあえず寝かせてよ。



つらつらとそんなことを考えていると、ふいに視界を黒い影がよぎった。


鳥だ。




カラス?

目をこらしても、太陽の光が痛くてただの黒い塊にしか見えない。



カラスか、それともトンビ?

それとも……


鷹?




大きな羽を広げて、そのカラスだかトンビだか鷹だかの鳥は優雅に空を飛んでいる。

何となく隣に視線をやると、鷹見くんも同じように顔を上げてその鳥を見ているようだった。

あんまりまっすぐにその鳥も見ているもんだから、何故だか急に不安になって、
鷹見くんの背中でばさりとはばたいたその羽を慌てて掴んだ。



 「……何じゃ」

 「………え? あ、ごめん…!」



いわゆる人殺しの目で鷹見くんが睨んできたので、ぱっと手を開く。
羽根が数本抜けて、草の上にふわりと落ちた。

鷹見くんは自分の羽の具合を調べるように何度か大きく羽ばたかせて、
落ち着いたのかまた大人しく背中に折りたたむ。



 「…で、何じゃ?」

 「………ほんと、何でもないよ」



再び鷹見くんが聞いてきたが、誤魔化した。






あの鳥と一緒に、飛んで行ってしまう気がしたんだ。

なんて言えない。
どうせ殴られるから。



でもね、本当にそう見えたんだ。

だめだよ。
まだだめだよ、鷹見くん。


オレが風で、鷹見くんは鷹で。

あぁそれから、桐嶋くんが羽だっけ?


一緒に飛ぶんだよ。

甲子園の空まで、オレたちは一緒に。




だから、一人でいってしまわないで。







こっそりと握り締めた1枚の羽根は、確かにそこに存在している。




『非現実的な現実』

鷹みさサイトなのに美咲登場せず。
あらら?


2006/12/18 UP

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