「与作、明日も付き合うからね!!」
「いらん!」
「ダーメ、もう決めたんだから」
「ヌぅ…」
そう言っていつものように別れて、
一日を過ごして、
いつものように、一人残って練習する姿を見ながら家に帰って。
明日の与作のお弁当を作る。
そう、いつもと同じ。
変わらない。
そう思ってたのに。
「事故……?」
「高校の前も通ってるバスって話よ。 生徒さんが乗ってなかったらいいけどねぇ」
「バス……」
「まっさかさまに落ちて大破らしいけど、この時間なら誰も乗ってないかしらね…」
お母さんと同じように時計を見上げる。
この時間なら。
与作はいつも一人で居残って練習して、ボールを磨いて整地して部室を掃除して。
それからそれから。
バスに乗って。
ううん、そんなことない。
与作が、事故になんて。
そんなこと。
遠くから救急車や消防車のサイレンが聞こえてくる。
窓を開ければ、サイレンの明かりや煙が見えるのかもしれない。
開ける気はなかった。
考えたくない。
大丈夫、与作はもう家に帰ってる。
おじーちゃんと一緒に、いつもみたいに文句言い合いながらゴハン食べてる。
きっと。
階下で電話が鳴る。
お母さんが出て、その声の調子が変わった。
いやだ。
聞きたくない。
耳を塞いで目を閉じても、胸の奥で鳴るサイレンが止まらない。
「美咲!!」
私を呼ぶ声。
その声に潜む現実なんか、知りたくない。
与作は、ちゃんと居るもん。
明日の朝も、今日と同じように笑っておはようって言うんだもん。
そうだよね、与作?
『神様は無慈悲ですか?』
美咲は父子家庭とかじゃないよねぇと言う一抹の不安。
お父さんのお弁当作ってたしなぁ…。
母の描写ってどっかにあったかなぁ…。
2006/12/10 UP
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