みかん オレンジ 橙色

そのまま食べるが美味しいか?
それともひんやり凍らすか?


みかん オレンジ 橙色

それはあなたのお好み次第♪





オレンジ






「あーもう、まったく何だってこんな時にトラブルが重なるのよ・・・ッ」

普段のナミだったら、本当に気にも止めないような些細な出来事ばかりだった。
出掛けに小石に躓くようなもので、本来なら気のせいくらいですぐに忘れてしまえるような事柄ばかりの筈だった。

そう――例えば。

昨夜しっかりチェックした筈の目覚ましが、夜中過ぎに電池切れで止まっていたとか。

(昨夜何度もタイマーの数字確認したのに、肝心の本体が止まっててどうすんのよ!)

そのせいでシャワーを浴びる筈が間に合わなかったとか。

(せっかく新作のボディソープ買ったのに。淡いバラの花の香りって、楽しみにしてたのに!)

いつもばっちりキメている髪が、今朝のムシムシした湿度に負けて一房跳ねてしまっているとか。

(これはいつも苦労してるから、シャワー浴びてから念入りに手を掛けようと思ってたのに!)

薄いながらも一応こだわりのポイントメイクだけは欠かせないと頑張っていたら、いつの間にか時間が押して朝食を摂っている時間がなくなってしまったとか。

(んもう、朝からエネルギー補給し損ねたら今日のスタートを切るためのパワーが出ないし、これからむさ苦しい男連中の面倒見なきゃいけないのに頑張れないじゃない!)

いつもなら美容と健康に丁度いいのよと豪語している階段が、今日はいつになく恨めしく見えたり。

(足腰は健康の基本だからエレベーターもエスカレーターもいつも使わないのに、今日だけはそこを駆け上がっちゃったわよ。早朝で人がいなかったし。品行方正の私は普段はそんなことしないんだから。たまたまよ、たまたま!)

そんなことを考えたバチでもないだろうに、あと数段で線路上の高架橋に辿り着く寸前で足を滑らせて膝を打ったり。

(まったく、ミニ履いた時に綺麗に見えるようにって、一生懸命お手入れしてるのに! 痣になってたらみっともなくてスカート履けないじゃない!)

ついこの間までの通学風景なら薄い白地のセーラー服だが、今日は部の合宿ということもあってジャージ姿という情けなさだ。
まだ制服で集合と言われた方がましだったのに、これから缶詰にされる合宿所ではとてもそんなヒラヒラした格好などしていられず、部員もマネージャーも全員ジャージを義務づけられてしまった。


そんなに気合いを入れずともナミは普段からとても目立つ存在で、可愛らしいと言うよりは既に美人と呼んでもおかしくないレベルに達している。
そこで納得しないのが、乙女心のなせる業というところか。

褒められるのは嬉しいが、決して額面通りには受け取らない。
日々努力してこその美学を己が信念のままに貫くだけだ。

そして今、駅のホームの端に佇んで辺りを見回し、目当ての待ち合わせ相手がいないことにナミは空腹のあまり憤慨さえもできずにいた。

一応線路を挟んだ対向のホームなども見渡したが、向こうは向こうで目立つ緑色の頭は見当たらなかった。





今日は高校生剣道大会全国制覇を目指し、ナミがマネージャーとして所属する剣道部が夏の最後の合宿に入る日なのだ。

本来だったら3年であるゾロは引退する筈なのだが、特別に推薦されて今回の参加を認められていた。
そうなると人手が足りなくなるのは当然の帰結で、同じ3年生にも関わらずナミもマネージャー業のサポートに駆り出される始末だった。

ゾロには団体戦はもとより、個人戦を勝ち抜いていくだろう期待感が周囲からひしひしと感じられる。
歴代のタイトル持ちの中でも数少ない高校三連覇の掛かった選手なのだから、それも当然とナミは小さく苦笑した。

もともと家から学校までの距離もあり、ふたりの使っている駅は部員の中でももっとも遠い位置にある。
本来なら学校で集合してから出発するのだが、ふたりだけは途中の乗り換えの駅で合流してくれと顧問から非情な通達をされてしまった。

(まったく、個人戦優勝を狙う相手に対して推薦までしておきながら、この扱いってどういうこと? 委員会に訴えてやろうかしら)

だが、何も本気でそんなことを思ったわけでも実行に移すわけでもない。

他の部員と合流する1時間ほどの間、他に乗客がいるとはいえナミはゾロとふたりきりなのだから。

こんな美味しいチャンスを逃す手はない。
そう、これは公にも認められた『早朝デート』なのだ。

同じ高校に在学する剣道部主将とマネージャー。
ほぼ公然の秘密のように、ふたりはつき合っているのだろうと囁かれ続けている。
こんな時に利用せずにいつ利用する立場だと言うのか。

別に、ナミ自身好きだと言ったこともないし、ゾロからそんな甘い言葉など微塵も言われたことなどない。
それでもケンカも合意も阿吽の呼吸でやってのけるかれらに、周囲は賞賛と羨望の眼差しを送りながら「デキているに違いない」と納得するようになった。

どちらもかなり異性にモテたのだが、それぞれに自覚は薄い。
ゾロは剣道を極めることに全神経を注いでいたし、ナミは荒くれな部員たちを切り盛りしながらそうしたゾロをずっと見つめていたからだ。

そんなナミの気持ちに気づいているのかいないのか、ゾロはかなり際どい目線を寄越すことが多い。
切れ長の瞳から繰り出される翡翠色の視線のパンチは、なかなか凶悪なコンボとなってナミの心臓を痛めつけてくれる。

タオルを渡せば必要以上に近づき、耳元で礼を言ってくれたりもする。
少し掠れた低い声は耳朶に甘く、年頃の娘の敏感さを絶対に舐めているだろうと憤慨したくなる。

他にもいるマネージャーにも同じようなことをしていたら休憩のドリンクに一服盛ってやろうかとも思ったが、ナミの鋭い観察眼を以ってしてもそれはないように思えた。

(ねえゾロ、ホントのところはどうなの?)
(私のこと、好き? 嫌い?)
(ううん、好きまで行かなくても・・・少しくらいいいなって思えるくらいのとこに、私はいるの?)
(どうなの、ゾロ)

もちろんゾロは、そんなナミの葛藤する気持ちを翻弄するように相変わらず罪な表情をあれこれ見せる。

自分ばかりが振り回されているようで悔しい。
中学の頃までなら群がる男を翻弄するのはナミの方だったのに、高校でゾロに出会ってからそれが完全に覆されてしまったかのようだ。

一見すればかなり似合いのふたり。
並び立てば追随する者のない無敵の美男美女。
見た目もプロポーションも、どちらもまったく申し分ない組み合わせ。

ただ――口を開かなければ。

周囲がそう見るように、いつしかナミの気持ちは本物になっていた。
真摯に剣の道を極め、鋭利な刃のような眼差しで一点を見つめる時の姿や横顔は男なのに美しいとさえ言えた。
あの切れ長の瞳にきちんと正面から見つめられたら、それだけで幸せだと思っていたのに。

(あんな鈍チン、いつもいつもからかってばかりで私を女として見てないみたいだし。それ以前に、ちゃんと“私”を見ているかどうかさえ怪しいわよね)

ナミの溜息は深い。

そんなことを思うのは、空腹がダークな思考に拍車を掛けるからだ。
そう結論づけたナミはホームの端のベンチに座り、高架橋の途中にあった売店で買ったものを膝の上に広げた。

柔らかな外気に晒され、オレンジの丸々した粒の表面にはびっしりと白い霜がついている。
指を触れさせるとしゃりっとした感触が伝わり、懐かしい感覚に自然と頬が緩んだ。



並みいる果物の中でナミはみかんが一番大好きだった。
普段は当然生のまま皮を剥いて食べるが、久し振りに気が向いてわざわざ冷凍の4個入りのものを買った。
膝にそのまま乗せていてはさすがに冷えるので、ハンドタオルを敷いて隣の席に置く。
ひとつ取り出し、ナミはそれを丁寧に剥いた。

さくさくと音さえしそうな指先の感触。
ひんやりとしていて、今日の上天気を予感させる青空にいっそ清々しいくらい似合っている。

「まったく・・・私が朝ご飯も食べられないくらい早く来たっていうのに、何でゾロったらまだ来てないのよ。まさか、いつも使ってる駅だっていうのに迷子になってるわけじゃないでしょうね」

3年間通い慣れた駅の改札を通り抜け、いつもと同じ高架橋を渡るのだが、最後に降りるホームだけが微妙に異なっているというオチがついている。

もしかしたらいつも通い慣れたホームに降りて、腕を組みながら「遅い」と眉間に凶悪な皺を寄せているかもしれない。
その可能性も考慮して一応いつも使っているホームを見渡したが、あの長身の緑頭はどこにも見当たらなかった。

食べ終わったら後で丸めて“リンゴ”でも作ろうかと、懐かしくも笑みを誘われる赤い柔らかなネットから2個目を取り出し、もう一度辺りを見回す。
特急の列車が通過するので、黄色い線の内側まで下がるようにとのアナウンスが入ったところだった。

「まさか、寝坊でもしてるのかしら」

一応携帯は持っているのだが、大体がところゾロは携帯に出ない。

良くて鞄に入れっぱなし。
悪くすれば自宅の机の上に放置状態だ。
こんなことでよくも『携帯』と呼べるものだと、ナミは呆れ返って言うべき言葉もなかった。

ならばメールはどうかと試してみたが、それに応じる気配もない。
一応見るくらいはできるようだが、聞けば自分で打電することができないと呟いていたのを聞いて激しい眩暈を覚えた記憶もある。

ふたつを胃に収め、少し思考が正常に回るようになる。
一息ついて3個目を剥き始めながら、ナミは他に思い浮かびそうなことをあれこれ思案した。

(強面で目つき悪いけど、それは決して態度に直結してるわけじゃないのよね。別に素行不良ってわけじゃないし。お年寄りとか子供には異様に親切だし、駅の階段とかでおばあちゃんが困ってたら荷物持ってあげたりしてるのを見たことだってあるわ。・・・もしや、そんなのに引っ掛かってるのかしら)

早朝だが、もしかしたらあり得ないわけでもない想像にナミは嫌な予感を覚える。
時間がないと言いつつも、ナミがこのホームに着いたのは本来乗りたい電車の来る15分も前のことだ。
今はその空き時間を利用して、ゆったり落ち着くべく途中で買った冷凍のみかんを食べている。

(やっぱりお腹が空いてると、人間ろくなことを考えないわ)

いや、あのゾロが相手だと、普通の状態でもあれこれ心配の種は尽きない。
ナミは大仰なくらいの溜息を漏らした。



立て続けに3個もの冷凍みかんを食べたので、一応空腹を訴えていた胃の状態は落ち着いた。
そこで何気に辺りを見回しても、今だ待ち人の気配すら伺われない。

武士の情けで最後のひとつをゾロに残しておいても、収納されたバッグの中が湿気でぐしゃぐしゃになりそうだったし、何より鮮度が落ちて味が悪くなるのは勘弁して欲しい。
冷凍されたみかんは、常温で戻り切るとどこか苦味のようなものを感じなかっただろうか。

(・・・ふんだ、待ち合わせの時間通りに来ないのが悪いのよ)

居直ったナミは、そのまま最後の4個目の皮を剥き始めた。

さすがに差し込み始めた朝日による常温に晒されていたそれは、すっかり解けて元のオレンジ色の鮮やかさを取り戻していた。
小さな一房に細かく絡みつく白髭のような薄皮も取り除き、しっかり味わうようにそれを口に運ぶ。

芯辺りに半解凍になった部分が微かに残っているようだが、もうすっかり解けてしまった印象の方が強い。
1個目はかなり凍っていて手こずったが、ベンチと手の熱とでここまで柔らかくなってしまっても逆にまったく張り合いがない。

「物事はやっぱり、程々適度にってのが一番いいわよね。あんまり無骨で無愛想で無神経でも、本当にそこに気持ちがあるのか判らなくなるもの・・・」


「――誰が、『無骨で無愛想で無神経』なんだって?」


いきなり背後の間近で落とされた言葉に、ナミは虚を突かれて思い切り肩を跳ね上がらせる。
慌てて振り返れば、大振りのスポーツバッグを肩に掛けてベンチの背凭れに肘を預けたゾロが、苦々しげな顔でいつの間にかそこに立っていた。
その距離が意外にも互いの呼吸さえ感じられるような隙間しかなく、ナミは飲み込みかけたみかんの果汁が逆流しそうになって慌てて胸元を叩いて強引に嚥下した。

甘いみかんの香りを感じたのか、ゾロはポンと片眉を上げて「ん」と手を出した。

「・・・ナニ、この手は?」
「みかんの匂いがする。食ってたんだろ、俺にも寄越せ。急いで走って来て喉渇いてんだよ」
「そんなのないわよ、今ので全部おしまい。遅いからもう全部食べちゃったわ」
「おーお、マネージャーが勝利筆頭株の人間を粗雑に扱っていいのかよ?」
「大事に扱われたきゃ、それなりの真摯な態度を見せなさいよッ」

ようやく全部胃に収め終わり、剥いた皮を全部袋に入れてハンドタオルをバッグにしまった。
それをくず入れに収めるべく腰を上げれば、ゾロもついでとばかりについて来る。

くず入れの脇に丁度自動販売機があったので、ゾロはそこで無糖の紅茶を買った。
いつもならコーヒーのくせに、今日は随分と珍しいものを買うではないか。
嗜好を宗旨替えしたのかと見つめていれば、ゾロは更に渋面になって素知らぬ振りであさっての方向を向いた。

「紅茶、あんまり好きじゃないんじゃなかったの? あんたコーヒー党でしょ?」
「・・・誰かさんが他人の嗜好も少しくらい理解しろっつーから、こうして努力してんじゃねぇか」

(・・・えーと、ナニ?)
(もしかして、それって・・・私のコト?)

ナミはコーヒーよりも紅茶党だ。
その時の体調や気分によって、無糖のストレートからレモン、ミルクに茶葉の風味も変えて賞味する。
そのために、誕生日にわざわざ母親に高価な紅茶専用のティーサーバーをねだったのだ。
それによっていろいろな味を研究しながら楽しめるようになったうんちくを披露することもあり、ゾロは面倒臭そうにしていたのでてっきり聞き流されたものとばかり思っていたのだ。

ダージリンのストレートティーを飲み干し、ふと販売機の見本を眺める。
当然だが、そこには茶やコーヒー、通常の果汁のジュースやスポーツ飲料などの売れ筋が並んでいた。

「やっぱ、こういうとこにゃ紅茶の専門の味のは置いてねぇんだな」
「何か違う茶葉のが飲みたかったの?」
「んー、できればオレンジ何とかっての? あれが飲んでみたかった」
「オレンジペコのこと? ああ、あれは飲み口が柔らかくて舌触りがまろやかで、確かに初心者にも美味しいわよね。ってか、ゾロそんな味の違いがわかるわけ?」
「そうじゃなくて・・・」

不意に腕を引かれ、販売機の脇にさり気なく、だが有無を言わせないくらいの空間に押し込められる。
もともとホームの端にいたので近くに人はいなかったが、それでも他のホームには待合の客がまったくいないわけでもない。

ドキリと跳ね上がった心臓を内心必死に宥めながら見上げれば、ゾロは目にも止まらぬ早さで一瞬――ほんの一瞬、唇を自らの舌先で掠めていった。

そのまま触れれば、まともな口づけにもなった位置を。

「――こんな風な、みかんの味がするかと思ってよ」
「・・・・・・・ッッ!!!」

ナミは腰を抜かさんばかりに狼狽したが、当のゾロは何事もなかったかのように手を放して販売機に背を向けた。

「なッ・・・ゾロ、あんた・・・ッ! い、一体、ナニのつもりで・・・ッ!」
「何のつもりって、その・・・まあ、世間の噂にも、まったく虚偽の出来事ってんじゃねぇと思うし? 火のないところに煙は立たねぇとも言うし、別に減るモンじゃねぇんだからいいじゃねぇか」

(そういう問題じゃないわよッッ!!)

真っ赤になってまともに声も出ないナミに、ゾロは素知らぬ顔で頭を掻いている。
合わせない目尻がじわじわと朱を帯び、こめかみにいつしか汗が浮かびつつあるのが見えた。

「・・・何よ、肝心なこと何ひとつ言えないくせに。いつもからかってばっかりで、少しくらい気合い入れてメイクしたり髪弄ったりしても褒め言葉のひとつも言えないくせに!」
「そ、それは、てめぇも一緒だろうがッ」
「何よ、男のくせにメイクしてるわけ? それに、男と女では言葉の重みも頻度も温度も違うのよ!」
「重みはともかく、温度って何だ!」
「ノリよ、それくらい解しなさいよ、バカ!」

そこまで言われ、ゾロは改めて今日のナミの出で立ちを上から下まで眺めた。

ジャージ姿ではあったが、そこから溢れる瑞々しい魅力と娘らしくほんのりメイクされた優しい色香は、初夏の陽射しの下で眩いばかりの愛らしい少女を切り取っていた。
いつもは勝気そうなヘイゼルの瞳が怒りに揺れていたが、鼻っ柱の強いのは嫌いではないゾロはむしろ望むところだと好感を抱く。

周りの誤解に便乗して、誰もふたりの関係を邪魔するような無粋な者は現れなかった。
そんな勇者は、かれらの学校には存在しなかった。
だから、余計にそのお膳立てにも近い空気に甘えていた。
からかいに乗じていれば、ナミは本気で拒絶はしなかったから。


何よりこの少女に、その小さな身体全部で拒まれることが一番怖かったから。


だからこそ悪戯めいてちょっかいを出しつつも、この曖昧な距離で満足しようと思っていたのに。
生憎ナミは、それでは納得していないらしい。

ゾロは天を仰いだ。

その様子を、ナミはじっと漏らさず眺めている。
この瞬間、何かが変わるかもしれないと息を詰めてその口許を見つめてしまう。

やがて視線を普通の高さに戻した男は、いかにも挙動不審な様子であちこち翡翠色の瞳を彷徨わせた。

「まあ、その・・・何だ? か・・・・」
「か? ・・・なぁに?」

ナミはじっとその唇に神経を集中する。
薄めの男らしい唇は、思わず悪戯に触れてみたくなる誘惑に溢れている。


そう、さっきゾロが勢い込んでナミのそれに触れたように。


唇は、わななくように蠢いた。

「か、かわ・・・変わんねーよ、いつもとッ! 目立つし豪快だしオレンジだし、いつもと同じに口も頭もフル回転して絶好調だろ! それでいいじゃねーかッ!」
「・・・・ッ、いいわけないでしょ、このバカマリモ!」

ナミは反射的に荷物が目一杯詰まったスポーツバッグでその後頭部を殴りつけた。

そこに、間がいいのか悪いのか、本来乗り込もうと思っていた電車の到着を告げるアナウンスが流れる。
ゾロはあからさまにほっとしたような顔で、急いでナミに背を向けて乗り込む数少ない手近な乗客の列に並んだ。

その背中を見ながら、ナミはそれでも自然に緩む口許をどうしようか困っていた。


じっと唇を見ていた。

わななくように動いた唇は、声にこそならなかったが、確かにひとつの言葉を形作っていた。


『可愛いよ――』


ナミは背後から、三連のピアスの揺れる耳元まで真っ赤に染まっていることに気づき、声を殺して細い肩を震わせた。

「・・・ま、今日はこの辺で勘弁しといてやるかぁ」
「な、何のことだよ・・・ッ!」
「べ〜つにぃ? ほら、そんなボケっとしてると他の部員にけちょんけちょんにされちゃうんだからねッ。合宿中身が入らなくて、大会出たら一回戦で負けましたなんて言ったら、あんたも推薦した人も赤っ恥必至なんだからね?」
「するかッ。どいつもこいつも俺の前に立ち塞がる奴ァ全員纏めて返り討ちにして、数少ない高校三連覇達成者の歴史に名を連ねてやらぁ!」

やがてホームに電車が滑り込んで来る。

不意に列の最後尾で手が伸び、大きな熱い手がナミのそれを取る。
ゆったりとしたジャージと大きなスポーツバッグの陰に紛れ込んだどさくさに、その手は電車に乗り込んでからも放されることはなかった。

(・・・バァカ)


揺れる窓ガラスにふたりの顔がチラチラと映る。

そこに投影されたふたりの顔には、薄く照れたような淡い微笑が浮かんでいた。




真牙サマ(Baby Factory)の、30万打記念DLF作品。

真牙サマ宅が素晴らしくも30万打ヒットされまして、その記念にDLFとされた作品です。
きゃっほう!と叫びつつ強奪しましたv
やーーん!!!!
身悶える!!!!(笑)
てかナミさん、みかん食いすぎだよ!
朝から冷凍みかん4個なんて、オナカ緩くなっちゃわないの!?(笑)
でもナミさんがみかんをもぐもぐ食べてるシーン、こっそりと遠くから眺めていたい・・・・・・。
このゾロは天然タラシですなぁ・・・・・(ニヤニヤ)。
でもむしろお前も可愛いよチクショウ!!!(笑)
積極的なのかヘタレ(?)なのか!

とにもかくにも、おめでとうございます真牙さん!!!!!

宝蔵TOP

海賊TOP

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送