父。










 「おれ、医者になるのやめようかな」



ある日、ポツリとチョッパーが言った。







 「何で」




2つ下の弟は頭がよく、小さいときから医者を目指して勉学に励んでいた。
それなのに唐突な先程の発言に、
出かけようとしていたゾロは思わず立ち止まり、縁側に座っていたチョッパーを見つめた。




 「だっておれが跡を継げば・・・ゾロは好きな人と結婚できるんだろ?」

 「・・・・チョッパー・・・」

 「領主じゃ結婚できないって父さんが言ってた」




チョッパーは思いつめた様子で、大きな目をゾロに向けた。




 「・・・・そんなことないぜ」

 「?」

 「おれが領主だろうが、ナミが遊女だろうが・・・関係ねぇよ」

 「・・・・・」

 「お前、医者になりたいんだろ」

 「・・・・うん」

 「跡継いでちゃ、外国行って勉強どころじゃねぇだろ。
  ・・・それにお前が医者になることは、親父も願ってることだ・・・」

 「ゾロ、でも・・・・」




心配そうなチョッパーに、ゾロは優しく笑いかける。




 「お前はそんな心配しなくていいんだよ、ありがとなチョッパー」

 「・・・・・・へへっ、お礼なんか言われたって嬉しくねーぞ!」

 「はいはい」







 「おーーーーい!! チョッパー!!!」



大きな声が聞こえてきたかと思ったら、
結構な高さのある垣を軽々飛び越えて、一人の少年が屋敷内に入ってきた。



 「遊びに行こうぜ!!」

 「おいルフィ、ちゃんと門から入れっつってんだろ」

 「こっちんが近いんだからいーじゃんかよ」



毎度のことにうんざりとしながら注意するゾロを気にするでもなく、ルフィはにししと笑う。

ルフィは柔術道場の師範の息子だ。
チョッパーとは年も近いため仲が良く、毎日のように2人一緒に何かしている。
もちろんゾロにも何の気兼ねもなく接してくるので、
ゾロもいつの間にやら仲の良い友人の一人になっていた。



 「おれ新しい本が入ったから、それ読みたいんだけど・・・・」

 「港に貿易船が着いたんだぞ!」

 「え!? 本当に!?」

 「ゾロも行こうぜ!!」



2人は目を輝かせて今にも飛び出しそうな雰囲気だったが、
ルフィはゾロにも誘いをかけた。



 「おれはいい、用がある」

 「えーー、外国の船だぜーーー?」

 「お前は相変わらずそういうの好きだな」

 「あぁ! おれ絶対外国に行くんだ!!!
  海の向こうには強ぇヤツがいっぱいいるからな!!」




ルフィにはもう、ここらの大人は歯が立たない。
もちろん剣を使えばゾロの方が強いのだろうが、
素手での格闘となると、ゾロもおそらくは敵わないだろう。




 「外国にはさ、強ぇヤツも面白ぇヤツも、とにかく色んなヤツがいるんだ。
  おれはそういうヤツらに会いてぇ!!」

 「へぇ・・・それにはまず、外国語の勉強だな」



目を輝かせて何だか遠くを見ているルフィに、ゾロはわざと意地悪な発言をする。



 「・・・・心意気で何とかなる!!」

 「オイオイ」

 「あ、そーだゾロ。赤髪海賊団って知ってるか?」



唐突に話題を変えるルフィだが、ゾロも慣れたもので平然と対応する。



 「あぁ、有名だな」

 「昔ここにも来たらしいぞ!!」

 「へぇ・・・」




赤髪海賊団は、その名の通り赤髪の男を頭とする大海賊団である。
賊とはいっても、街を襲って略奪をするわけではない。
海賊相手には容赦は無いが。

停泊すると、町の商売人も歓迎する。
違う町から持ち込んだ珍しい物を見せてくれるし、金も落としてくれるいい客なのだ。

最近ではこの国だけでなく、外国へも船で停泊したりしているらしい。




 「おれらが生まれる前くらいに、この町に泊まってたんだってさ」

 「へぇー」

 「茶屋のオッサンが言ってたんだけどな、おれくらいのガキがいるかもなーだと!」

 「赤髪のガキが?」

 「あぁ、有り得なくはねぇだろ? もしいたら・・・おれと同じくらいかなー?」

 「お前18だっけ?」

 「あぁ!」

 「ふーん・・・・」




18ねぇ・・・・とゾロは思った。

まさかな。






 「なぁ、ゾロも船見に行こうぜーー」

 「だから用があるっつってんだろ」



腕にしがみついてくるルフィを引きずったまま、ゾロは門へ向かって歩き出した。



 「どこ行くんだよーー」

 「ネフェルタリの屋敷」

 「あーー? とうとう結納でもすんのか?」

 「違ぇよ。・・・・・逆だ」

 「逆?」




顔を覗き込んでくるルフィに、思わずゾロは目をそらした。
ルフィの目はいつもまっすぐ刺さってきて、
普段は何てことないのだが、今日は妙に居心地が悪い。




 「何しに行くんだよ」

 「・・・・ちょっと、男として最低なことやってくる」

 「何ぃ!? そりゃ最低だ!!!」

 「まだ何やるか言ってねぇだろ」

 「あぁそっか。まぁいいや、自分で分かってるなら」



ルフィはさらっとそう言って、ゾロから離れた。






 「後悔無いよう生きろよーゾロ!」



ゾロは一瞬目を見開いて、それから苦笑する。





 「年下が偉そうな口叩くな」

 「1コしか違わねぇだろ! じゃあな! おーいチョッパー!!」



ししし、と笑ってルフィは向きを変え、船を見たくてウズウズしていたチョッパーの元に戻った。










 「後悔か・・・」




後悔など、するものか。







チョッパーと一緒に今度はきちんと門から出て行く2人の姿を見送って、
ゾロは 『おしっ!!』 と気合を入れて、同じように門をくぐった。





2006/01/26 UP

婚約解消直前、みたいな。
ルフィとチョパをとりあえず出してみる。
本編には大して関係の無い2人(笑)。
タイトルがさっぱり浮かびません(爆)。
何気に出てくる赤髪さん。。。
ていうかコレ、オチが無くない?・・・・・あは!


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