縛。
「あいつら、ナメた真似しやがって!!」
「少しは落ち着けハチ」
「でもアーロンさん、偽物掴ませようとしやがったんですよ!?」
「まぁあいつらもあの世で後悔してるだろうよ。どっちにしろ、あそことの取引はもう中止だな」
「別の線を探さねぇといけませんね」
「そうだな・・・・、っと」
アーロンは手下のハチを連れて、
密貿易で使う隠れ港から町に戻るところだった。
いまだ怒りの収まらぬハチに苦笑しながら歩いていると、足に何かがぶつかった。
見下ろすと、そこには橙色の頭をした少女が立っていた。
鼻を押さえながら、少女はアーロンを見上げてくる。
「ご、ごめんなさい」
「ガキ、邪魔だ」
「・・・・手、けがしてるの?」
「あぁ?」
睨みつけても少女は怯える様子も見せず、アーロンの手をじっと見つめていた。
言われて自分の手を見てみると、そこには返り血がついていた。
ハチもアーロンの手を横から覗き込む。
「アーロンさん、さっきの奴らのじゃないですか?」
「だな、汚ねぇな・・・・」
「けがじゃないの?」
「違う」
少女は凶悪面のアーロンに、にっこりと笑いかける。
「よかった!」
「・・・・あ?」
「けがしてなくて、よかった!」
「・・・・・」
そう言って少女はパタパタと走って行った。
「ナミーー、早く来ないとあんたの夕御飯食べちゃうよ!」
「待ってよーー!」
アーロンは無言でその少女の背中を目で追う。
母親と思われる女と手を繋ぎ、先程と同じようににこにこと笑いながら歩いていく。
「あのガキ、将来美人になりますねぇ」
「・・・・おい、あの女を調べろ」
「へ? 母親ですか?」
「あの家族だ」
「はぁ、でも何でまた」
「言う通りにしろ」
ギロリと睨まれてハチは首をすくめ、母子を尾行するため追って行った。
アーロンは微動だにせず、少女の消えた方向を見つめていた。
「ナミ」
「アーロンさん!」
店に戻ってきたアーロンに、ナミは駆け寄った。
「おかえりなさい!」
「ただいま。そら、お土産だ」
そう言ってアーロンはナミと目線を合わせてかがみこみ、懐からかんざしを取り出した。
キラキラと輝く丸いガラス玉の付いたかんざしを、ナミは嬉しそうに受け取った。
陽にかざすと、光を反射し色が変わってとても綺麗だった。
「きれい・・・・」
「気に入ったか?」
「うん!! ありがとうアーロンさん!!」
6歳のナミがこの遊女屋に来て、三月が経っていた。
最初は寂しさからか落ち込んでいたナミだったが、
ノジコやロビンが優しくしたこともあり、最近ではよく笑うようになった。
アーロンも、外から帰るたびにナミにお土産を与えていた。
優しく接するアーロンに、ナミは懐いていた。
ロビンの禿とはいえ、借金返済になるような仕事をナミは少しもしていない。
それどころか食事や衣服も、全てアーロンが買い与えてくれていた。
加えて先程のような土産も、ナミにいつもくれていた。
ナミは自分がどうしてここにいるのかは、ちゃんと理解していた。
遊女として働いて、叔母さんたちの借金を返す。
それなのに、自分はむしろ金をかけてここで育ててもらっている。
ナミは、ある日アーロンに聞いた。
「アーロンさん、私、仕事しなくていいの?」
「・・・・・・お前はまだ子供だ、気にしなくていいんだよ」
アーロンはそう言って笑い、ナミの頭を撫でた。
ナミはまだ気にしつつも、そのときはそのままアーロンの部屋から出て行った。
残ったアーロンは、ナミの出て行ったあとの障子をしばらく見つめて、
それからくっくっと笑った。
「まだ、子供なんだよお前は・・・・・」
ペロリと唇を舌で舐め、アーロンは呟いた。
かわいいナミ。
私のナミ。
お前が女になったときは、その時はその体も、私のものだ。
遊女になったお前はおそらく、大金を店に落としてくれるだろう。
それでも、女としてお前を抱くのはおれだけだ。
他の誰にも渡すものか。
かわいいナミ。
私のナミ。
お前は一生
私のものだ。
ナミの世界が一変したのは、それから5年後のことだった。
アーロンに犯されながら、ナミはぼんやりと考えていた。
気付いていたはずだった。
アーロンの、自分を見る目の意味に。
自分がそのような目で見られていたことに。
このまま平和に暮らせると本気で信じていたのか、と
ナミは自嘲気味に笑った。
自分を犯し続けるアーロンがナミ、ナミ、とひたすらに呟く、
その声が遠ざかるのを感じながら、
ナミは自分が深い闇の底にいることを悟った。
かわいいナミ
私のナミ
永遠にお前を
離すものか
2006/01/28 UP
アーロンは歪んでますが、ナミさんのこと愛してるんです。
方向間違ってるけど、愛してるんです。
裏テーマは『純愛』ですから。
ピュアですよ、ピュア(笑)。
所詮はただのロリコンですけど(爆)、それでも彼にはそれが愛だったんです。
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