食。









 「ロロノアくん!見積もりは!?まだなの!!」

 「あ、はい、できてます」

 「できてるなら早く持ってきなさい!」

 「・・・はい」










 「今日の室長、一段と機嫌悪いな」

 「彼氏とケンカしたんじゃねぇの?」




室長のデスクから自席に戻る途中、
コソコソと話す同僚たちの会話が聞こえる。




 「うそ、室長彼氏いんの?」

 「さぁ、いるんじゃねぇの。独身で、あれだけの美人だぜ?1人や2人はいるだろ」

 「まぁなー、機嫌いいときは本当、完璧だもんなー」

 「機嫌いいときはな・・・・」




 「そこ!無駄話してる暇あったら仕事しなさい!!」

 「「はいぃ!!」」




うちの室長は地獄耳だということを、失念していたらしい。













 「おいゾロ、今日も八つ当たりされてんなー」



椅子に座った途端、隣に座るサンジが声をかけてきた。
この距離ではさすがに聞こえてはいないだろうが、
ヒソヒソと声を落として話しかけてくる。



 「・・・まぁな」

 「機嫌悪ぃときって、何かいっつもお前当たられてるよな」

 「・・・ま、当たりやすいんだろうよ」

 「みたいだな、まぁ頑張れ」

 「応援どうも」




パソコンに向き直り、キーボードを2,3度叩いただけで、
サンジはまたこっちを向いて話しかけてくる。
仕事しろよてめぇ。



 「でもあんな美人に叱られるんならいいよなぁ」

 「・・・・・Mか、お前?」

 「うるせ!だってよー、本当美人だぜうちの室長は・・・多分社内でも1,2を争うな、うん」

 「・・・・・・まぁ、な」




チラリと室長席に目をやる。
我らが室長・ナミは先程渡した書類を、眼鏡をかけて読んでいる。
その姿は確かに美人だし、いかにも『デキる女』だった。



 「美人で仕事もできて、性格も・・・・まぁ機嫌いいときは優しいし!」

 「・・・・」

 「なんつーかこう、セレブな感じだよな!」

 「そりゃ何か違うだろ、セレブって何だよアホ」

 「まぁお前は怒られまくってるから、ビビんのも分かるがな」

 「別にビビってねぇ」




サンジが脇腹を小突いてくる。
だからいい加減仕事しろてめぇ。




 「だってお前、室長に素っ気無ぇじゃん、美人系にゃ興味無いのか?」

 「普通だ」

 「そうかー?あーでも本当、いい女だよ・・・本気でアプローチかけるかな・・
  急にナミさんvvvとか呼んだら、ちょっとグラっときたりしねぇかな」

 「・・・・・・怒鳴られんじゃねぇの」

 「・・・・・・だな」












サンジ。
お前は知らないんだ。

おれがあの女の八つ当たりの対象になっている理由も、
あの女の本当の姿も。















昨夜の話。





 「ゾロのバカーーーーー!!!!」

 「いてっ、いて!本投げるなコラ!!」

 「うるさい!私のぷっちんぷりん(大)返せ!!」




ソファの前に仁王立ちになり、クッションを投げつくしたあとは、
テーブルに置いていた雑誌や小説をボンボンと投げてくる。

風呂上りのパジャマの格好で、おれに向かって怒鳴り散らしているこの女が、
社内で才色兼備と謳われている『室長』と、同一人物だとは思えない。
まぁ思えなくても、実際同じ女だ。






おれたちが付き合っていることは、
職場でも誰も知らない。

同棲しているわけではないが、
おれはほぼ毎日ナミの家に居るため、半同棲に近い。

職場では関係を悟られぬよう、お互い素っ気無い態度ではあるが、
いったん仕事を離れると、ナミの態度は豹変する。
一気に精神年齢が低下するのだ。

今まさに、その状態。








 「そんなに怒るなよ!明日買ってきてやるから・・・」

 「今!!今食べたいの!!お風呂上りにアレ食べるの楽しみに今日仕事頑張ったんだもん!」

 「・・・・・プリンごときで・・・・」

 「・・・あんた!私がどれだけぷっちんぷりんが好きか、
  今さら知らないなんて言わせないわよ!!」




ボソリと呟いた一言を、相変わらずの地獄耳で聞きつけて
ナミは顔を真っ赤にして更に声を張り上げ叫んだ。




 「私のぷっちんぷりーーーん!!!!」

 「わかったわかった!悪かったよ!!」



ここで退いておかないと、次は何が飛んでくるか分からない。
両手を顔の前で合わせて、頭をさげつつチラリとナミの顔を盗み見た。





 「買って来てよ!今すぐに!!!」



ナミは頬を膨らませてぷいっと横を向き、言った。



 「つってもあそこのコンビニにゃ置いてねぇ・・・・」

 「じゃあ反対側のトコまで行ってきて!!!」

 「はぁ!?もう0時まわってんぞ!?あんなトコまで行けってか!?」

 「もーーーー!!!ゾロのバカーーー!!!帰れもう!!!」

 「いてっ!いてぇ!!分かったから投げるなって!!」








で、今日に至る。



ナミのぷっちんぷりん(大)をおれが食ってしまったがために、
あいつの機嫌はすこぶる最悪。

事情を知らぬ者には八つ当たりでも、
あいつからすればおれは至極当然な怒りの対象なのだった。



















サンジと昼飯を食いに出て、会社へ戻る途中で足を止める。



 「どした」

 「悪ぃ、おれちょっと寄るとこあるから」

 「ん?わかった、じゃあ先戻っとくわ」

 「おう」
















サンジより10分ほど遅れて社に戻ってから、
誰も見ていない隙を狙って、ナミの机の上に買ってきたモノを素早く置く。


ぷっちんぷりん(大)を。





そのまま、何事も無かったかのように自分のデスクに戻る。



 「何の用だったんだ?」

 「金、下ろしただけ」

 「あぁ、コンビニか。煙草頼めばよかった」

 「自分で行け」





数分後、同じく昼から戻ったナミは、
自分の机の上のモノに気付いた。








 「あれ、室長が何か食ってる」

 「・・・・」

 「・・・プリン、だ」



目をやると、嬉しそうにぷっちんぷりん(大)を頬張っている。






 「かわいーなーvv ああいう庶民なモノ食ったりするんだー」




あいつの大好物なんだよ。
それこそ自分の男を、夜中に家から追い出すほどの。


そう言うのをこらえて、そうだな、と返事をする。









満面の笑みのナミの顔に苦笑しつつ、
とりあえず今日の予定は決まった。


仕事終わったら、ぷっちんぷりん(大)まとめ買いして帰らねぇと。





「ナミ上司、ゾロ部下のパラレル」
上司・・上司ってどんなモノ・・・・?
ぎゃふん。
多分このとき私、プリンが食べたかったんだと思います。
ついつい『大』を取ってしまいます。
そして『・・・うぇっ』てなるんです(自業自得)。

10/6にメルフォでリクくれた真牙さま!
ナミ誕でのこっそりリク(笑)に続いて、ありがとうございました♪
何かむしろ『ぷっちんぷりん』がメインになってしまいましたが。
あれだ、うん、やっぱパラレルは真牙サマにおまかせします(逃)(笑)

2005/10/26

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