始。










あいつがルフィに惚れるなんてのは、
どう考えても普通だし、
それが当然のような気もしていた。













 「お前まだあいつのこと狙ってんのか」

 「何だよ、悪ぃか」

 「別に」




いつだったか、深夜のキッチンで、
どういう流れからかコックと2人で酒を飲む機会があった。

意外に普通に話がはずみ、
口が滑ってつい聞いてしまった。




 「もう一押しなんだけどなぁ」

 「どこが」

 「うるせぇ!何だお前突っかかってきやがって」

 「いや、見込みもねぇのに頑張るなぁと」

 「・・・・・・まさか、お前とナミさん・・・」

 「・・・・・・違ぇよ」



見当違いなコックの発言にイラついて、グラスに残っていた酒を一気に飲み干した。





 「じゃあ何が言いたいんだよお前」

 「・・・・ルフィと張り合って、勝てるか?」

 「・・・・・・・・・・って、クソゴムと、ナミさんが・・・・?」

 「・・・・・ルフィはどうだかな、でもナミの方は・・・多分、な」

 「嘘だろ?おれにはそうは見えねぇけどな・・・」

 「見てりゃ分かる」




目を丸くしているコックにまたイラついて、素っ気無く言った。
それを聞いたコックは、何やらニヤニヤとし始めた。




 「へぇ、そんなにお前、ナミさんのこと見てんだ」

 「・・・・っっ、別にそういうわけじゃねぇ!!」

 「ムキになんなよ、何だ何だお前も人並みに青春してんじゃねぇか」

 「うるせぇ!」

 「でもなぁ、らしくねぇな」

 「・・・何が」




嫌な笑いをやめ、コックは真面目な顔になった。




 「お前、ルフィに勝てねぇって考えてんだ?」

 「・・・・・あいつにゃ勝てる気がしねぇ」

 「何だ、剣ってのは弱いのか」

 「そうじゃなくて、あいつと本気で女取り合ったら・・・多分誰も勝てねぇよ」

 「・・・てめぇらしくねぇ弱気っぷりだな」

 「言っとくが、お前もあいつにゃ勝てねぇぞ」

 「・・・・・ま、分からないでもないがな」













アーロンをぶっ倒した後から、
あいつがルフィへ寄せる信頼は、傍目にも分かる確かなものになっていた。

その以前は、
もちろんあいつ個人の状況もあったから、
おれたちとは常に一歩距離を置いていたようだった。

だが正式に仲間となって村を出て以来の航海では、
ルフィとの距離はほとんど無いように見えた。

あんな助け方をされちゃ、まぁそこらの女なら簡単に惚れちまうだろう。
ナミも、例外じゃなかったってことだ。






ルフィの隣にはナミがいる。

それは船上における船長と航海士、という立場を抜きに考えても、
最も自然な位置だった。

この2人がいれば、この船は決して道を迷うことはないだろう。
そう思って、おれはその2人の姿を見ていた。



自分の中に潜んでいた感情に

気付くまでは。


























高い空の、さらに高い場所で、鐘が鳴り響く。


やっぱり、ルフィだな。

あの2人は、あのへんの雲の上で、
一緒に鐘の音を聞いただろう。









スカイピアの住民も、シャンディアも、
何の区別もなく、ただ命を謳って踊る。

傷の痛みも忘れ、踊り、笑い、歌う。









ゲリラの連中とひとしきり酒を酌み交わしたあと、
少し離れて腰を落ち着ける。

大きな火のまわりでは、ルフィやウソップ、チョッパーが踊りまわっていた。
コックもとりあえずは『女』と踊っていた。
ロビンはさすがに踊ってはいなかったが、
なにやら楽しそうに皆の様子を見ていた。


ナミの姿が見当たらず、首を回してみるが、いない。





 「・・・どこ行った?」




 「誰が?」


 「うぉっ!何だお前!」



突然背中から声がして、思わず大声を出す。



 「剣士が背後取られてんじゃないわよー?飲みすぎ?」

 「そんなに飲んでねぇよ」

 「あらー、勿体無い」




ナミはおれの隣に腰を下ろし、
同じようにキャンプファイヤーの火を見つめる。





 「皆、楽しそうよね」

 「あぁ」

 「こんな風に踊るのって、いいよね」

 「ならルフィと一緒に踊ってこいよ」

 「いやぁよ、あいつと踊ると放り投げられるんだもん」

 「ははっ、あいつ加減知らねぇからな」



胸に若干の違和感を感じつつ、おれは笑った。
わざわざ自分からルフィの話題を出さなくてもいいだろうに。





 「じゃあゾロ、踊る?」

 「は?」

 「いいじゃない!宴よ!皆踊ってるんだから!!」

 「だからルフィと・・・」

 「ゾロ、・・・踊ろ?」



立ち上がり、おれに手を伸ばしてナミは微笑む。

火を背後に立つナミの姿は、暗くなってよく見えない。
それでも、その笑顔がどんなものか、おれは苦しいほどに分かっている。
逆らうことなど、できはしない。

吸い込まれるようにその手を取り、立ち上がる。





大分酒も入っていたし、周りも酔っ払っている連中ばかりだった。
踊ると言っても、別にダンスの披露をするわけではない。
ただ手を取り合って火を囲み、グルグルと皆で回るだけの話だ。



両手を握り合って、ナミは大きな口を開けて笑っている。
それを見て、おれもつい頬が緩む。

自分の前で、そうしてナミが笑っているのを見るのが、
ただ嬉しかった。





 「わっ」



途中で他のヤツとぶつかって、ナミがおれの胸に倒れこんできた。



 「おい、大丈夫か?」

 「あははー!みんな酔っ払ってフラフラね!」



そう言うナミの足もともおぼつかなく、胸に寄りかかったまま笑っている。



思わず、その体を抱き寄せる。







 「・・・・・ゾロ?」




 「好きだ」








はっとして、そのナミの体を引き剥がした。




 「ゾロ?」

 「・・・・・悪ぃ」




それだけ言って、ナミを残してその場から逃げるように森へ走った。



 「ゾロ!!!」












木々の隙間から、キャンプの火がチラチラと遠くに見える。
ようやく足を止めて、
木に手を当てズルズルとしゃがみこむ。





 「〜〜〜〜〜アホかおれは・・・・・・」




とんでもないことを口走ってしまった。

これはかなりヤバイ。



周りのやかましさで聞こえていなければいいのだが、
あの時のあいつの表情は、確実に聞こえていたと判断したほうがいいだろう。

そりゃそうだ。
思いっきり耳元で言ってしまった。




 「あーーーーーーークソ!!!!」




 「何やってんの」

 「うおぉ!」





頭をガシガシと掻き毟って、一人で悶絶していると
またもやすぐ後ろで問題のナミの声がして、飛び上がる。




 「ななななな何だお前!」

 「だから、あんたが何やってんの」




みっともなく尻餅をついてしまったが、
そのまま後ろ手に座って足を投げ出し平静を装う。
そのおれの前にナミはしゃがみこみ、顔を覗き込んでくる。
目が合わせられず、急いで顔を背ける。




 「う、うるせぇな、別に何もしてねぇよ・・」

 「唸ってたじゃない」



誤魔化そうとしても、どうやらしばらく覗いていたらしく、バレバレだった。



 「っっお前にゃ関係ねぇ!!」

 「関係ないの?」

 「うっ・・・・」



本人にそう言われると、思わず言葉に詰まる。
こっちの気も知らないで、
ナミは真正面からおれの目を捉え、問い詰める。





 「さっきのアレ、何よ」

 「・・・・・・・」

 「ねぇゾロ」

 「うるせぇな!さっさとルフィんとこ戻れよ!」



耐え切れずに出したその言葉に、ナミの顔に明らかに怒りの色が見えた。



 「うるさいって何よ!!ていうかさっきからルフィルフィって、何なの!?
  私とルフィが何だっていうのよ!」

 「・・・・・気ぃ遣ってやってんだよ!気付け!!」



何で自分でこんなことを言わなきゃなんねぇんだ、と
ヤケクソ気味に叫んだ。




ナミの顔色がまた変わる。
怒りに加えて、何故か傷ついたような顔をする。



 「・・・・・・・・気ぃ遣うって何よ!私がルフィのこと好きみたいに!」

 「あぁ!?」

 「好きだとか言って人喜ばせておいて、何なの!?」

 「・・・・・・・・・あぁ?」

 「もう知らない!!一人で唸ってなさい!バカ!!!」

 「・・・・・・ちょ、ちょっと待て!お前今何つった!?」




勢いよく立ち上がり、クルリと向きを変えて去ろうとするナミの腕を、
慌てて掴んだ。
聞き捨てならない言葉を、今聞いたような気がするが。




 「一人で唸ってなさい!」

 「じゃなくて、もう一つ前!」

 「・・・・・・・・・」



ナミはおれに腕を掴まれたまま、俯く。
座っているおれから、その顔は見えない。




 「・・・・・喜んだ・・・だと?」

 「・・・・・・・・・・そうよ」

 「何で」

 「・・・何でって、そんなの言わなくたって分かるでしょう!」




ようやくナミは少し顔を上げた。
その顔は、熱でもあるのかというほど真っ赤だった。
思わず、腕を掴む手に力が入る。





 「だってお前、ルフィを」

 「だから何であんたは勝手に決めてんの」

 「いや、見てたら・・・・」



無意識に答えた言葉に、ナミはピクリと反応した。




 「・・・・・・・・私を、見てたの?」


 「・・・・・あぁ」




今さら誤魔化しても何の意味も無い。
おれは素直に答えた。




 「いつ?」

 「・・・・・・・・・ずっと」

 「・・・・・」

 「・・・・・ずっと・・、お前を見てた」

 「・・・・・・・・・・・」



 「・・・・・あーーーーーーちくしょう!!」







素直に言ってみたはいいが、
さすがにかなり恥ずかしい。
手を離し、両手で頭をガリガリと掻く。

顔が、熱い。




 「・・・・・おかしいわね」

 「・・・・・・悪かったな」



言うんじゃなかった、と後悔しつつ俯いたまま呟いた。




 「どうして目が合わなかったのかしら」

 「・・・・・あ?」



その言葉に、顔を上げると、
にっこりと微笑んだナミと目が合った。





 「私もゾロを見てたのに」

 「・・・・・・ナミ・・」

 「ゾロ・・・」










 「ナミさんここにいたのかー、て2人で何やってんだコラァ!」



ナミを探し歩いてきたらしいコックが、
その姿を発見してクルクル回りながらやってきた。
いいところで、邪魔しやがって。



 「ちょっとねー」

 「・・・ナミさん、何か嬉しそうだね?」

 「ふふっ」

 「・・・・・・・・あー・・・・、なるほどねぇ・・・」



しゃがみこんだままで相変わらず顔の熱いおれと、
同じように頬を染めて嬉しそうなナミを代わる代わる見ながら、
コックはニヤニヤと笑った。




 「そゆこと」

 「やっとコイツ、気付いたわけだ」

 「・・・・・おい、やっとって何だよ。お前何か知ってたのか」



コックの言葉が引っかかり、ジロリと睨む。





 「つーかさ、気付かねぇお前がすげぇよ」

 「・・・・・・」



心底呆れたような顔で、コックはそう言った。



 「まぁ、ルフィとデキてるって思い込んでたもんなぁ」

 「みたいね、まったく」

 「・・・・・・・・うるせぇ」



クスクスと笑いあう2人にムカついて睨みつけるが、
多分おれの顔はまだ赤い。
何の迫力もないだろう。





 「まいーや、戻ろうぜナミさんvv」

 「・・・・・・おい、お前全部知ってたんなら、ここは気ぃ遣うとこだろ」

 「あぁ?」



ナミの肩を抱いて、皆の所に戻ろうとするコックに、声をかける。



 「あのなぁ、おれだってナミさんに惚れてんだ!ここは邪魔するとこだろーが!」



振り返ったコックは堂々とそう叫んだ。
ある意味羨ましい性格だ。



 「ねっ、ナミさんvvvv」

 「あらぁ、気付かなかったわ?」



ナミは肩の上のコックの手を、やんわりと外しながら、
魔女の笑顔でそう言った。



 「またツレナイ事を・・・vvv そんな貴女が大好きです!」

 「とりあえず行きましょ、ゾロ?宴会はまだ途中よ!ねっ、サンジくん?」

 「えぇ! とっとと来ねぇと酒無くなんぞクソ剣士!」





そう言って2人は、並んでキャンプファイヤーの火を目指して歩き始める。



 「・・・・・おいコラ、・・・・・ちょっと、待てよ・・」



仕方なく立ち上がり、2人の後を追った。





まぁ、いい。

旅はまだ、これからだ。





「ゾロがナミに告白」
オプションとしまして、ナミはルフィが好きだと思い込んでるゾロ、
片想いに悶々としてるゾロ、
みたいな。

10/5にメルフォでリクくれたモカさま。
ナミ誕に続いてのリク、ありがとうございます♪
こんな感じで告白させてみましたが。
いかがでしょう・・・?ダメ?

2005/10/25

生誕'05/NOVEL/海賊TOP

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