憶。









山を登っていくと、突然視界が開けた。



そこは草原になっていて、見渡す限り一面の緑。
そして眼前には、青い空と、海。












 「・・・・・すごい!!」

 「だな・・・・」

 「上陸してみてよかったねー!明日は皆でお弁当持って来ようか?」




ナミは嬉しそうにはしゃいでいる。




 「こんないい景色久しぶりに見ちゃった!!」

 「おれの村にも似たような景色があったな・・」




まわりの景色を満足げに見渡しながら、ゾロはポツリと呟いた。




 「そうなの?」

 「あぁ、山の上じゃなかったが・・・こんな感じの景色だった・・」

 「じゃあ、懐かしいでしょ」

 「あぁ」





答えた瞬間、昔の記憶がよぎる。




こんなふうな草原を、走った。



いつ、誰と?



これはいつの記憶だ?





海から吹き上げてくる風に、ゾロの刀がカチャと音を鳴らす。












     ゾロ










懐かしい声を聞いた気がして、ゾロは振り返る。







     忘れちゃったの、ゾロ?













ナミはゾロよりも前に立って、
海を見下ろしながら緑と潮の匂いを楽しんでいた。



 「さすがに風は強いわねー」



ナミの言葉に何も返さないゾロを振り返ると、
目に飛び込んできたのは、蒼白なゾロの横顔だった。



 「ゾロ、どうしたの!?」



倒れる、と瞬間的に思ったナミはゾロに駆け寄り、
案の定崩れたその体を支えた。




 「ゾロ!?」




抱きとめはしたものの、さすがに重さに耐えられずそのまま地面に一緒に座り込む。




 「ゾロ!!」















     忘れちゃったの、ゾロ?









あぁそうだ


あれからもう、10年か。

















 「ゾロ、どうしたの?大丈夫?」



膝の上にゾロの頭を乗せ、ナミは心配そうに見下ろす。



 「あいつが死んで10年なんだ」

 「・・・・そう」



ポツリと呟いたゾロの言葉に、ナミは驚くでもなく返事をする。
あいつ、というのが誰なのか、
聞かなくてもナミには分かった。
ゾロにこんな顔で、話をさせるのは、あの少女しかいないのだ。

どうして急にそんな話をするのかは分からなかったが、
ナミは静かにゾロが話し出すのを待った。




 「あいつはあんなに早く死んだのに、
  どうしておれは生きてるのか、と時々思う・・・」

 「・・・・・・」

 「おれよりも強かったあいつは、あんなに簡単に」





  あいつが死んだとき、
  おれの中は
  あいつと、あいつとの約束の、ただそれだけしかなかった。

  でも今はおれの中にいろんなモノがあって、
  どんどんあいつの占める場所が
  少なくなっていく気がする。

  今日があいつの命日だってことを、おれはさっきまで忘れてた。

  強くなるというただそれだけで、
  あいつとの約束だってことを
  おれはいつか忘れてしまうんじゃないか

  あいつの意思を一緒に背負ったはずなのに、おれは。






 「ゾロ」

 「おれは・・・・」

 「ゾロ、大丈夫よ」



今にも泣き出すんじゃないかという程、悲壮な顔をしたゾロに、
ナミは優しく微笑む。



 「・・・・」

 「ゾロはくいなさんのこと、忘れたりしないわ」

 「・・・・・」




ゾロの髪を撫でながら、ナミは続ける。




 「ゾロは今こうして生きてるから、
  これからまだまだいろんな人に会って、いろんなことをして、
  記憶も思い出もどんどん増えていく。
  でもそれは、くいなさんのことが消えていくわけじゃないから」




母親のように微笑むナミの瞳を、ゾロはまっすぐに見上げた。




 「ゾロの中にちゃんと、くいなさんは居る。
  今までと同じように、ちゃんとそこに居るから。
  忘れることなんて、絶対にない。

  覚えていてほしいのは、命日なんかじゃない。
  そんなものに何の意味があるの?
  忘れないでいてほしいのは、自分自身のことよ。
  一緒に過ごした時間とか、一緒に持った思いとか。

  それを時折思い出して、笑ったり泣いたりすればいい。
  それだけで充分なのよ。
  縛られる必要なんかないわ。

  ゾロの中に、くいなさんの『それ』は、
  いつまでもちゃんとあるから」







ナミの頭に、大きく笑うあの人の笑顔が浮かぶ。

昔は、あの人のことを考えると、
あの夏のような笑顔よりも、
血に濡れて横たわる姿のほうが、浮かんでいた。


でも今は違う。


思い出すのは、優しい笑顔。

思い出すのは、楽しい会話。

思い出すのは、大切な時間。







 「いつまでも・・・・ちゃんと、あるのよ」

 「ナミ・・・・」

 「・・・くいなさんが、怒ってるとでも思ったの?」

 「・・・・いや・・・」

 「そんな顔してたら、本当に怒られるわよ? ゾロの弱虫!って」

 「・・・だな」




ナミの言葉に、ゾロもつられて笑った。




 「ね、船に戻ろ?皆に教えてあげようよ、ここ」

 「あぁ」




2人は立ち上がり、手を繋いで歩き出す。

一度、ゾロは振り返った。

一瞬、くいなの姿を見た気がしたが、すぐに風に消されてしまった。











   忘れないで、ゾロ

   私の笑顔を

   あなたの笑顔を







「くいな絡みのゾロナミ、シリアス」
10/3に拍手でリクくれた方。
くいな、これ絡んでますかね??
拍手のネタと微妙にカブってる。。。。
まいっか!
つーか自分の表現力の無さにウンザリです。
ここはひとつ、皆さんの想像力で補ってください(人任せ)。

ゾロもそんな、記憶障害みたいな心配しなくてもいいのにねぇ。
最初にゾロが聞いた声は、ゾロが勝手に想像したものです。
思い込みで聞こえてます。
くいなはそんなこと言いません。

2005/10/23

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