祝。







 「・・・・・何が起きたんだこりゃ・・・」







ゾロが街から戻ってくると、キッチンの扉からモクモクと煙が立っていた。

急いで中に入ると、エプロンをつけたロビンが、
ケホケホと涙目でムセていた。




 「・・・・何やってんだお前・・・?」

 「・・・あら、剣士さん・・・お帰りなさい」

 「いやだから何やってんだお前」

 「ちょっと、・・・ケーキを作ろうと思って」




そう言ってまたロビンはケホケホと咳をした。



一体どうしてケーキを作ろうとして、この惨状になるのか。




オーブンからは相変わらず煙が立ち、
テーブルに取り出されているケーキらしき黒い物体からも、
どす黒い煙が出ていた。

シンクには、皿やボウルが乱雑に積み上げられ、
ロビンの顔にもケーキの生地やススが付き、髪も乱れ、
いつもの冷静沈着なロビンからは想像もできない状況になっていた。








 「・・・てめぇでも、できないことってあんだな」




ゾロは盆で扇ぎ室内の煙を外に出しながら、苦笑した。




 「あら、料理はできるわよ私」

 「でもケーキはだめか」

 「だって、ケーキは作れなくても生きていけたわ」





ロビンも手で煙を追い出しながら、言った。





 「生き抜くための料理はできるから問題ないもの。
  それに、今は作ってくれる人がいるのだし」

 「で?何でケーキなんざ作ろうとしてたんだてめぇは?」





ようやくキッチンの空気が正常になって、
ゾロはテーブルの上のケーキを見ながら聞いた。




 「船番で暇だし、本も読み終えてしまったから。明日降りたら買わないといけないわ・・・」

 「じゃあ普通に昼飯でも作ってりゃよかったじゃねぇか」

 「コックさんが準備してくれてるわ、お昼は」

 「だからってケーキかよ」

 「だって」

 「だって、何だ」




歯切れの悪いロビンの態度に、ゾロは呆れ気味に顔を上げてロビンを見た。







 「貴方の誕生日が・・・近いでしょう」

 「・・・・」





ロビンは、言いにくそうに呟いた。



 「だからちょっと練習しておきたくて。
  でもダメね、私にはムリみたい」




皿の上の黒い塊を見つめつつ、ロビンは自嘲気味に笑う。



 「コックさんに分けてもらった材料も、無くなっちゃったわ・・・」

 「・・・・で?できたのか」

 「えぇスポンジは。真っ黒だけど」



ロビンは皿を持ち上げてゾロに見せつつ、笑う。






 「食わせろよ」

 「え?」

 「おれの誕生日用なんだろ?食わせろ」

 「でも・・、あ・・・」





ロビンが驚いている隙に、
ゾロはロビンの手から皿を奪い取った。






そのまま手でちぎって、口に運ぶ。






 「・・・・・・」

 「無理しないほうがいいわ」




モグモグと無言で口を動かすゾロに、
ロビンは心配そうに声をかける。







 「・・・・いや、奇跡的に美味いぞ・・・」

 「・・・・・本当に?」




ゾロの言葉に、ロビンは思わず目を丸くする。





 「あぁ、この見た目からは想像できねぇけどな、美味い」






そう言ってゾロは、どんどんと黒いケーキを口に運んでいく。







 「・・・・・ありがとう、剣士さん・・・」

 「誕生日のケーキなら、そりゃおれのセリフだろ」

 「でもまだ練習だもの、それに誕生日はまだでしょう」

 「早いけど、もらっとくよ。ありがとう」




ゾロは口いっぱいにケーキを頬張って、
ロビンにニヤリと笑いかける。






 「・・・・・・」

 「どうした」

 「・・・・誰かに、誕生日のケーキを作って、
  そのうえお礼まで言ってもらえる日が来るなんて、前は想像もしてなかったわ」

 「ふぅん」




何故か嬉しそうに笑っているロビンを、ゾロは珍しそうに見つめる。




 「練習したら、ちゃんと上手くなるかしら」

 「次の誕生日はチョッパーだろ?その頃には上達してるだろ」

 「船医さん、もらってくれるかしら・・・」

 「てめぇの手作りなら、あいつは泣いて喜ぶぞ」




不安そうなロビンに、ゾロは笑いながら答える。




 「チョッパーの次が・・・この船の上なら、自分は抜くとして・・・、コックだな」




ゾロは思い出すように宙を仰ぎながら、言った。




 「3月だったわね」

 「で、ウソップで・・・ルフィがきて、ナミだな」

 「そうね・・・」

 「来年のおれんときは、すげぇの作れそうだな、てめぇなら」




ははっと笑うゾロに、ロビンは複雑な表情を返す。




 「・・・・皆に、作ってあげられるかしら・・・」

 「何だよ、もう作んねぇのか」

 「そうじゃなくて・・・、これからも皆の誕生日を、私は一緒に祝えるかしら」




俯くロビンに、ゾロは素っ気無く返事をする。




 「お前にその気がありゃ、できるだろ・・・」

 「・・・・そうね・・・・」

 「・・・お前にその気がなくても、祝えるさ」

 「・・・・・・」

 「この船のヤツらは宴会好きのうえに、しつこいからな」

 「・・・・・・」

 「なかなか抜けらんねぇぞ?」



冗談ぽくゾロはそう言った。




 「・・・・・ふふ、そうね」

 「あぁ、だからちゃんと祝ってやれよ、全員」

 「・・・えぇ、・・・もっと練習しないといけないわね」

 「だな、味はいいけど見た目がこれじゃあな」

 「さすがに私も反論できないわね・・」



ロビンの言葉にゾロも笑い、
残り既に四分の一となったケーキを、2人で食べた。



フライング気味にゾロ誕ネタ。
本当はゾロ誕中にUPしようと思ってたんですが・・・。
なんかリクもゾロナミまみれだし、
そんな中でゾロロビはどうかな、と。
それならばさっさとUPしてしまおう作戦です。
でも別にゾロ×ロビンじゃないですよ?
ゾロとロビン。
ゾロ誕中はラブいゾロナミ率が高いです。
ふふふー。

2005/10/29

ほのぼの小話/NOVEL/海賊TOP

日付別一覧

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送