宣。









 「ゾロ、好きよ・・・」

 「・・あぁ」

 「・・・・・・あぁ、じゃなくて」

 「何だよ・・」




ナミはムっとした顔で、ゾロの胸に手をやり押しのけた。




 「こう、ね?相手の目を見て『好き』って言ってんのよ?せめてさ、『おれも』くらいは返せないの?」

 「今さら・・・」



ゾロはうんざりした顔で溜息をついた。



 「こういうのに今さらも何もないわ」

 「何で急にそんなこと言い出すんだよ」

 「別に急じゃないわ、ずっと思ってたのよ・・・・・・・・あんた、本当に私のこと好きなの?」

 「・・・言わなきゃ分からねぇか?」

 「言って欲しい言葉もあるのよ」

 「面倒臭ぇな」



ゾロはナミから目をそらし、舌打ちをした。



 「・・・・・・・何よ・・・・・・・分かった」

 「あ?」

 「皆に宣言してくれないと、あんたとのお付き合いはオシマイよ」

 「あぁ?」






 「一人一人にね、『おれはナミが好きだー!』って言って回って」






 「・・・・・・・・・はぁ???」

 「してくれないと、あんたと別れてサンジくんとお付き合いするわ」



ナミは澄ました顔でそう言って、ゾロがいつもするようにニヤリと笑った。



 「ちょっと待てコラ」

 「サンジくんはたくさん言ってくれるもの」

 「・・・・本気か?」

 「本気よ。この目が冗談言ってる目に見える?」

 「・・・・・・ちっ」

 「さぁ行ってらっしゃい!!」

 「って、今からか!?寸止めかよ!?」

 「善は急げ、よ。ホラ服着て」

 「ふざけんな!!あーーーもう!!!」





















女部屋を追い出されたゾロは、背中を丸めて渋々と後甲板へと向かった。







そして第一クルー、発見。










 「お?ゾロ。珍しいな昼寝してないなんて」

 「あ、あぁ。ちょっとな、話があるんだが・・・」



座り込んで道具を広げ、新星の開発をしていたウソップのところに、
ゾロは頭をガリガリ掻きながら近づいていった。



 「何だ、改まって・・・真面目な話なのか?」



神妙というか何というか、微妙な表情のゾロを見て、
ウソップは心持ち姿勢を正してゾロに向き直った。
ゾロはその前に立って、あらぬ方向を見ながら呟いた。





 「・・・・おれな、」

 「おう」




 「ナミが、好きだ」




 「・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・」




 「・・・・・あ、そ、そうか、うん、分かった」

 「・・・・・・・・・じゃ、そゆことで・・・・」






拍子抜けしたウソップが何とかそう返すと、
ゾロは眉間にシワを寄せながらも顔を赤くして、そそくさとウソップの前から立ち去った。

その背後を嬉しそうに見つめる、いつの間にやらミカンの木の影に隠れていたナミの姿を発見したウソップは、
何となく話を理解した。



 「・・・・今さら宣言してもなぁ・・・分かりきってるだろうに・・・」


















 「おいコック」

 「何だクソマリモ、酒はやらん」



後甲板からゾロはそのままキッチンへと入った。



 「・・・・・酒じゃねぇ、話聞け」



キッチンの入り口に立って、ゾロはサンジに声をかけた。



 「何だよ、お前と違っておれは今夕飯の準備で忙しいんだ」

 「すぐ済む。2秒くらいで済む」

 「2秒で済む話って何だよ」



妙にアセったゾロの言葉に苦笑しながら、サンジは振り返る。









 「おれ、ナミが好きだ、じゃあな」

 「・・・・・は?」




それだけ言って、きっかり2秒でさっさとキッチンから出て行ったゾロを、サンジは呆然と見送った。




 「・・・・・は?」




怒ればいいのか、からかえばいいのか、何をしていいやら分からず、
サンジはただ突っ立っていた。


 「・・・・・は?」

















階段を下りようとしたゾロは、チョッパーが後甲板へと走っているのに気づいた。



 「チョッパー!」



声をかけると、チョッパーは立ち止まってこちらに向かってきた。
ウソップの新星開発の助手でもしているらしく、手には何やら訳の分からないモノを抱えていた。



 「何だゾロ?怪我したのか?」



チョッパーはとてとてと駆け寄ってきて、心配そうにゾロを見上げた。



 「いや、怪我はしてねぇ」

 「そうか!よかった!じゃあ何だ?」



ゾロはチョッパーの前にしゃがみこみ、小さな声で言った。







 「あのな」

 「うん」

 「おれナミが好きなんだ」






ゾロは何やら吹っ切れたらしく、あっさりと言ってのけた。



 「・・・・・うん?知ってるよ?」

 「・・・・そう、か」



チョッパーはニコニコ笑ったまま、同じくあっさりと返した。



 「オスとして好きってことだろ?」

 「・・・・・雄・・・・・。まぁ、そうだ」

 「そんなの、ずっと前から知ってるよ!」

 「そ、か」



相変わらず無邪気な笑顔でそう言われて、ゾロは何故か慌ててチョッパーと別れた。

















 「あら剣士さん、顔が赤いわ」

 「あぁ?」



ちょうど見張り台から下りてきたロビンはゾロと出くわして、そう言った。



 「どうしたの?」

 「別に。ちょうどいい、ちょっと話があんだ」

 「なぁに?」





 「おれはナミが好きだ」





 「・・・・・・そう、素敵ね。でも私じゃなくて航海士さんに言ってあげなさい?」



ロビンは笑い出したいのをこらえて、微笑んでそう言った。



 「あいつが皆に言えっつったんだよ・・・」

 「皆・・・?」

 「一人一人に宣言してこい、だと」



ぶすっとした顔でそう愚痴るゾロを見て、ロビンはまた笑い出しそうになった。



 「・・・ふふっ、航海士さんも相変わらず可愛いったら・・・」

 「あいつ急にトチ狂いやがって・・・・。じゃあな、話は終わりだ。まだルフィに言ってねぇんだ」

 「航海士さんにもちゃんと言ってね」

 「うるせぇ」



ズボンのポケットに手を突っ込んで、ガラ悪く船首へと歩くゾロを見送りつつ、
ロビンは一人微笑んだ。



 「文句言いながらも、律儀よね剣士さん・・・・」

















 「ルフィ」

 「おっ!ゾロ!寝てないのか!!遊ぼうぜ!!」



船首に逆さにぶら下がっていたルフィは、くるりと回転してメリーの上に座り、
ゾロを見つけて嬉しそうに叫んだ。



 「いや、話があんだ」

 「おれにか?何だ?」






 「あのな、おれナミが好きだ」




 「そうだなー、お前ナミのこと、めちゃくちゃ好きだよなー」






大口を開けて笑ってそう言ったルフィに、思わずゾロは固まった。



 「・・・何だと?」

 「だってすっげーナミのこと見てるし、ナミと一緒にいるときはお前、空気違うぞ?」

 「・・・・・・・」

 「あいつがサンジと仲良くしてたらすげー睨んでるし。たまにおれのことも睨んでるだろーお前!知ってんだぞ!」

 「・・・・そう、・・か?」

 「あぁ!ほんっとお前、ベタ惚れだもんな!!」



にししっ、と笑うルフィを、ゾロは妙な汗をかきながら見上げた。
マストの影に隠れたナミは、ルフィの言葉に嬉しそうに笑っていた。






 「・・・・・じゃあ、な。話はそれだけだ」



これ以上余計なことを言われないよう、ゾロは無理矢理話を終らせた。



 「えー!遊ぼうぜーー!!」

 「あとでな」



ゾロよりも一足先に、ナミは女部屋へと戻っていた。
それを追うように、ゾロもそちらへ足を向ける。






 「ゾロー!」

 「だから遊ばねぇって・・・」



 「ナミもお前にベタ惚れだぞ!」

 「・・・・・知ってる」

 「だな!」



ニヤリと笑って、ゾロは部屋へと戻った。




















 「おかえり、ちゃんと言ってきた?」



わざとらしくそう言うナミを、ゾロはジロリと睨む。



 「見てたろ全部」

 「うん、見てた。おつかれさまっ」



ペロっと舌を出して、ナミは笑った。



 「全く・・・妙な汗かきまくったぜ・・・」



ゾロはベッドに腰掛けているナミの横に行き、そのままシーツの上にどさっと寝転んだ。



 「ふふ、見ててすごく面白かったわ」

 「てめぇ、やっぱ面白がってたか・・・」



うつぶせに寝転んだまま、ゾロは顔をナミへ向けて睨みつけた。





 「それに、すごく嬉しかったわ」

 「・・・・・・・」

 「ありがと、ゾロ」



本当に嬉しそうに笑ってナミは、ゾロの頭をよしよしと撫でた。



 「・・・・ナミ」

 「ん?」



ゾロはむくりと起き上がり、ベッドの上に座ってナミをまっすぐに見つめる。










 「好きだ」



 「・・・・・・・・・」





 「・・これで全員終わりだな?」

 「・・・・・・・・・・うん」


 「満足か?」

 「・・・うん、合格よゾロ。ご褒美・・欲しい?」

 「当然」















 「困ったわ・・・本を取りたいのに・・・・」


この後の数時間、ロビンは女部屋へと入れなかった。




どうだ!!!
ラブいゾロナミだ!!!!
え?ラブいよね?ラブいでしょ?でしょ?

2005/09/06

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