疑。





 「何、お前プレゼント用意してねぇの?」

 「バカだなーゾロ、ちゃんと2,3日前に島着いてただろー?」

 「・・・金が無ぇ」





この船の大事な航海士の誕生日。
(本人が計算したのか)ちゃんとその数日前には島に着いて、
ウソップたちはそこできちんとプレゼントを用意していた。
ルフィまでもが、チョッパーと一緒に買い物をしてきたというのに
ゾロは何一つ用意していないと、前夜になって皆に白状した。





 「ナミに借りればよかったじゃねぇか」

 「本人に借りるっておかしくねぇか?」

 「まぁな」

 「借りてまで何かやる気は無ぇよ」

 「ナミさんの誕生日に何も贈らないつもりかよてめぇは」

 「だから、金が無ぇ」



振り出しに戻る、なゾロの発言に、サンジは盛大な溜息をついた。



 「ちっ・・・しゃーねーな。ここは愛の伝道師・コックのサンジさんが協力してやろう」

 「結構だ」

 「・・・・・おれだっててめぇなんぞに協力したかねぇが、
  ナミさんがバースデーに哀しむところは見たくねぇんだよ」

 「あぁ?」



サンジはゾロにびしっと指を突きつける。






 「てめぇ、ケーキ作れ」

 「・・・・・・・・・・はぁっ!!??」





 「心配すんな、何も一人で作れなんて言わねぇよ。
  第一そんな怪しげなモン、ナミさんに食べさせられるか」

 「失礼だな」

 「ちゃんとおれも手伝ってやるよ。やっぱ初心者のバースデーなら無難にショートケーキか・・・」

 「ショート・・・・・」

 「・・イチゴと生クリーム」

 「あー」

 「ついでに料理も手伝えよ。野菜切るぐらいできんだろ」

 「あぁ・・・・」



さすがにゾロも、何もプレゼントをあげなかったらナミからどんな仕置きが待っているのかと想像すると、
ここはサンジの提案にすがるしかない、というのが現状だった。

『1週間お預け』ならまだしも、下手すりゃ『1ヶ月お預け』など食らわされかねない。
男ロロノア19歳には、なかなか厳しい仕置きが待っていることになる。
























そして翌日。




 「よし、スープはこんなもんか」


小皿に移したスープをすすり、サンジは満足げにうなずく。


 「・・・よくゼロからこんなもんできるよな・・・」

 「お、何だ、今更この船の一流コックの素晴らしさに気づいたか」

 「一流だかどうだか知らねぇが、すげぇな」




ゾロは今まで、サンジが料理しているのをこんなに近くで、しかもイチからずっと見たことはなかった。
第一ゾロがキッチンにいると、料理中のサンジは邪魔だと追い返してしまう。
おかげで、今日初めて間近でコックの腕を見せつけられて、
ゾロはある種の感動に近いものを感じていた。

そんなゾロに素直に褒められて、サンジはちょっと赤くなる。





 「ま、まぁ、何だ。お前も味見するか?」


サンジが差し出した小皿を、ゾロは受け取らずにそのまますすった。


 「ラクすんなよ」

 「ん」

 「美味いとか何とか言えコラ」

 「いちいち言う必要無ぇだろ」

 「・・・・まぁ、マズいわけねぇよな」

 「まぁな」









料理の方は、ゾロが手伝うようなことは実際そうはなかった。
せいぜい野菜を切ったり、『鍋混ぜとけ』と言われてひたすら混ぜている程度だった。







そして、ケーキに移る。

スポンジを作る段階では、
サンジの怒号が飛び交う中、『微妙に膨らんだ・・』程度の出来となった。



 「・・・・お前、念のためもう一個作れよ・・・」

 「いや、味は悪くねぇんだ。このまま行け、ゾロ!」

 「大丈夫かこれで・・・」













 「お前なぁ、作ってる最中に顔触ったりすんなよ」



絞り袋にいれた生クリームで、ゾロはやたら縮こまってケーキにデコレートしている。
握り方や力加減が分からず、時折上から生クリームが飛び出してきている。
おかげで袋やゾロの手はやたらと生クリームまみれになっているが、
ケーキの方は、意外と何とか見られるものになりつつある。

剣士に似合わぬ作業姿に苦笑しつつ、サンジはゾロに注意する。




 「痒ぃもんは痒ぃんだ・・・」



生クリームまみれの手で、ゾロがまた自分の頬を掻く。



 「だーから触るなって。クリームついてんぞ」

 「あぁ?今どうでもいい・・・」



ゾロはプルプルと腕を震わせつつ、ケーキを睨みつけながら作業を続けている。



 「手間かかる野郎だな」



笑いをこらえつつ、サンジは手を伸ばしてゾロの頬のクリームを指で掬い取った。
そのままその指をペロリと舐める。


 「やっぱ味はヨシだ。問題は飾りつけだぞーー頑張れよー」

 「今やってる・・・・」






 「終ったらイチゴ乗せんぞー」

 「まだあんのかよ・・・」

 「上にも乗せねぇと寂しいだろが」


サンジがイチゴを乗せた皿をテーブルに置く。


 「こんなに乗せんのか?」

 「何だよ」

 「多くねぇ?」

 「足りなくなるよりマシだろ。残ったって他に使い道はいくらでもある」



クリームのデコレーションを終え、ゾロは息を吐いて絞り袋を机に放る。



 「ちょっと食わせろ」

 「あ?」

 「腹減った。何か食いてぇ」

 「・・・・・・じゃ、イチゴ何個か食っていいぞ」

 「お、いいのか」


ゾロが嬉しそうにイチゴに手を伸ばすが、サンジがその腕を掴んで止める。


 「何だよ、いいっつったのてめぇだろ」

 「クリームまみれで触んな。ほれ、口開けろ」



生クリームまみれの自分の手を見て納得したゾロは、素直に口をぱかっと開けた。


その中にサンジはイチゴを放り込む。



 「うめぇな」

 「当たり前だ。ナミさんのための最高級イチゴだぞ」

 「もいっこくれ」

 「バカバカ食うんじゃねぇよ。さっさと手ぇ洗って飾れ」



そうは言いながら、サンジは言われるがままゾロの口にイチゴを放り込んだ。
















 「・・・で、さっきから何見てんだウソップ」



ようやくゾロがイチゴの飾り付けに取り掛かったころ、
サンジがキッチンの窓に向かって声をかけた。


 「いいいいいや、オモシロそうだから様子見てたんだが・・・邪魔したか・・・?」



一瞬隠れたウソップだったが、観念して扉から顔を出した。



 「は?」

 「いや別に邪魔じゃねぇよ」

 「いやいやいや・・・邪魔モンだよおれは・・・」


ウソップは苦笑しつつ頭を振る。


 「何言ってんだこの長っ鼻は・・」

 「さぁ」

 「つーかてめぇも準備あんだろ。見てねぇで自分の仕事しろよ」

 「おう・・」









扉から頭をひっこめたウソップは、
自分と同じように壁にはりついて窓から覗いていたナミに声をかける。



 「・・ナミ、あのー、落ち着けよ?」

 「私は充分落ち着いてるわよ・・・」



ナミは、パーティーの時のお楽しみのためサンジからキッチンに入っちゃダメ、と言われていた。
しかしやはりゾロの料理姿が見てみたくて、こうして窓からこっそり見ていたのだが。




 「いやその、何か妙なオーラ出てるぞ・・・・」

 「出てないわよ・・・あの2人は私のために仲良く料理してくれてるんでしょ・・嬉しいことじゃないの・・・」

 「いやだからセリフと雰囲気があってないというか・・・」



確かにナミは、最初こそ目の前の光景が楽しくて嬉しくて、ウソップとこっそり笑いながら見ていた。

喧嘩ばかりのあの2人が、自分のために、キッチンに並んで一緒に料理している。
ぎゃーぎゃー言いながらも揃って頑張っている2人を見て、
微笑ましいというか何というか、

とにかく、最初は嬉しかったのだ。

最初は。















 「うわっ」

 「お前、強く握りすぎだ!いい加減慣れろよ。あーあー勿体ねー」


イチゴを乗せた後、ラストの仕上げでゾロは再び生クリームと格闘していた。


絞り袋から飛び出したクリームがもろにゾロの顔にかかり、
サンジがタオルでそれをゴシゴシと拭いてやる。


 「ガキかお前は」

 「うるせぇ、おれの領分じゃねぇんだよ」



今回も両手がクリームまみれで塞がっているゾロは、
サンジに素直に顔を拭いてもらっている。


 「オラこっち向け。反対にもついてる」

 「ん」










 「・・・・・・・・・」

 「ナ、ナミ、あいつらはな、お前のためにな、」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「ナミ、ナ、・・・・あー・・・・・」








 「イチャコラしてんじゃないわよーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」








 「!」

 「!!」




突然の大魔神・ナミの乱入に、
サンジはゾロの頬に手を添えて顔を拭いている格好のまま固まり、
ゾロもサンジの方に顔を向けたままで固まった。




 「・・ナ、ナミさん!?来ちゃダメだって言ったじゃないですかー!」

 「ちっ・・」

 「来ちゃダメって何よ!!私に内緒で何する気だったのよアンタたちーー!!」

 「何って、・・・もうバレバレですけど、こいつが料理を・・・」

 「・・・・・」


パーティの準備を主役のナミに見られて、サンジはあわあわと挙動不審になり、
ゾロはバツが悪そうにナミから目をそむけた。

だが実際ナミは準備云々よりも、目の前の2人のいちゃつきっぷりしか目に入っていなかった。



 「うるさいうるさいうるさぁーい!!こっそりイチャイチャしちゃってさ!!!!何よ何よ!!」

 「・・・・イ、イチャイチャ・・?」

 「そうよ!!そこのバカ2人!!ふんだ、もういいわ!!」



怒るだけ怒って、ナミは床板を踏み抜かんばかりの勢いでキッチンから出て行った。





 「・・・・?」

 「何だあれ・・・・」



キッチンに残された男2人は、訳も分からず呆けていた。





 「ウソップ・・・あいつどうしたんだ?」



八つ当たりを食わぬよう、扉に隠れてナミが過ぎるのを待っていたウソップに、ゾロが声をかける。



 「いやー・・・とりあえず、お前らが悪いような気がするぜおれは・・」

 「何で。おれらナミさんに何かしたか?はっっ、もしかしてショートケーキがお気に召さなかったとか・・・?」

 「そうじゃあないと思うがとにかく、お前ら2人、何かおかしかったぜ?」

 「おかしい?おれらが?」

 「何が?」

 「あのー、雰囲気が・・」

 「「はぁ?」」



ウソップが何とか崩した説明をしようとした言葉も、2人には全く理解できなかった。


 「訳分かんねぇこと言ってんじゃねぇよクソっ鼻」

 「まぁいい、とりあえずコイツ完成させねぇと」

 「だな」



ウソップを放って、ゾロとサンジは再びケーキに向き直った。



 「・・・ナミもいらぬ苦労させられてるなぁ・・・」



 「だからお前もさっさと準備しろよ!!」

 「はいはいぃ!」



ナミ誕リク。
「ナミの誕生日に2人で料理するサンジ・ゾロ。そのバカップルっぷりにキレるナミ。(ゾロナミで)」
詳しく頂いたリクにセリフを付けただけのSSになりました・・(爆)。
7月18日に掲示板にてリクくれたペクトさま!!
いかがでしょう・・・。
サンゾロ風味でお送りしました(笑)。
ところでイチゴの季節っていつかしら(marikoは料理しない人間です)。

ちなみにゾロもさすがに『ショートケーキ』て単語は知ってるよね、ごめんなさい。あは。

2005/07/24

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