導。





    ふとした拍子に、ゾロと目が合う。

    最近、こんな瞬間が多かった。
    おかげで自惚れていた。

    もしかして、ゾロも、と。


    それなのに。













ゾロはここ最近、妙な視線を感じていた。
女が男へ送る『視線』。
秘めているとはいえ、
自分へ向けられたその視線の意味は、ゾロは充分感じていた。





 「さて、どうしたもんか・・・・」













夕食時、キッチンに集まった一同は、いつもの勢いで食事をしていた。
ゾロもいつものようにナミの隣に座り、
船長に皿を奪われないように警戒しつつ、食事をする。



 「おいコック、それ寄越せ」

 「今忙しい!」



自分と反対の端にあるドレッシングを指しながらそう言ったゾロの言葉を、
サンジは忙しく立ち回りながら一蹴に伏した。



 「ちっ」

 「あ、ゾロ、私取るわよ」



ナミがそう言ったときには、ゾロはもう立ち上がり手を伸ばしていた。
ゾロは左腕を伸ばして、ドレッシングの瓶を取った。
結果、ゾロの右隣に座っているナミの目の前にはゾロの腕が伸び、
顔のあたりにはゾロの上半身が覆いかぶさるような状況となった。



 「っ!」

 「あ、悪ぃ」



大袈裟なほど動揺したナミが、フォークを手から落とした。





 「はいナミさん!新しいの」


すかさずサンジが新しいフォークを差し出す。




 「あ、ありがとう、ごめんね」

 「ナミさん、・・・顔赤いよ?まさか熱でも!?風邪引いた!?」

 「え?あ、うん、そうかも、」


耳まで赤くしたナミは、フォークを受け取っても食事を再開はしなかった。


 「大丈夫ですか?食べれます?」

 「う、うん、・・ちょっと、部屋で寝てこようかな・・」



そう言ってナミはヨロヨロと立ち上がった。


 「あとで何か軽いもの持って行きますね」

 「ありがとう」



ナミは赤い顔のまま、そのまま部屋へと戻った。





 「・・・・・・・・」

 「どうしたんだゾロー?ナミが心配か?」

 「いや・・・・煮えきらねぇなーと・・・」

 「何だとコラ!!ちゃんと火ィ通ってるだろが!!」

 「料理じゃねぇよバカ」


猛然と抗議するサンジに面倒な視線を送りつつ、ゾロは片肘をついて考え込む。


 「じゃあ何だよ」

 「別に、勝手におれがイラついてるだけだ、気にすんな」

 「訳分かんねぇぞーゾロ」

 「どーすっかな・・・」

 「だから訳分かんねぇってーゾロ」
















次の日、予定通りに島についた。
船長らはナミから小遣いを、サンジやチョッパーも必要経費をもらって、
皆は意気揚々と上陸していった。




 「おいナミ、おれにもくれよ」

 「あらゾロ、あんたも出るの?珍しい」

 「あぁ、暇なんでな。どうせ船番はロビンだし」


ゾロの口から出た(仲間とはいえ)女の名前に、ナミは少し胸の痛みを覚える。


 「・・お小遣いなんて、あんた何に使うの?ルフィたちみたく何か欲しいものでもあるの?」



ゾロは基本的には物欲がないのに、今日は小遣いが欲しいと言う。
ナミはゾロが欲しがるものが何なのか気になったので、聞いたのだが、


 「女でも買うかな」

 「・・・・っ」



思いもよらなかった返答に、ナミは言葉に詰まった。



 「何だ、ダメか?」

 「・・・・・別に、・・あんたも、男だもんね・・・・」


ナミは恥ずかしがっているのか、怒っているのか、泣きそうなのか、
複雑な表情のまま俯いてしまった。



 「ダメならやめるぜ」



ゾロはニヤリと笑って言った。




 「・・・・・・」

 「お前がダメってんなら、やめとく」

 「・・・・・・・・・、ダメ」



ナミは俯いたまま、聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。




 「じゃあやめとくか。船で昼寝でもするか・・・」

 「・・・・」

 「暇だしな」

 「・・・・・・・じゃあ、・・私の買い物、付き合ってよ」




いつもなら、面倒くさい、と即却下されてしまう。
ナミは今回もそれを覚悟した上で、俯いたまま言ってみた。



 「あぁ、いいぜ」

 「・・・・・・・・ほんとに?」



まさかこんな快諾されるとは思わず、ナミはガバリと顔を上げる。


 「暇だしな」


















その夜、やたら上機嫌なナミは、
ルフィが気味悪がるほどにニコニコしながら夕食を食べていた。



 「何だナミ、嬉しそうだなー?」

 「べーつーにーーー?」

 「・・・・・・・」



嬉しそうなナミを、ゾロはただ見つめていた。




 「ごちそうさま」

 「ロビンちゃーーんvvあとでお夜食持ってくからねぇ〜vvv」


見張り番のロビンは、皆より一足先に席を立つ。






 「おいロビン」


ゾロの後ろを通り過ぎようとしたロビンを、ゾロは呼び止めた。


 「なあに」

 「ちょっと」


そう言ってゾロはロビンの腕を取り、座っている自分の方へグイと引っぱった。
その勢いで倒れかけたロビンを抱きとめながら、
ゾロはロビンの肩へ手を寄せた。


 「ゴミだ」

 「・・・・・あら、ありがとう」


ロビンの肩についていたらしい小さな糸くずを、ゾロはひょいと持ち上げ、床に落とした。


 「この野蛮人がぁ!!もっと普通に取れねぇのか!!ロビンちゃんに触るなーー!!」

 「うるせぇな、ちょっと引っぱっただけだろ」

 「強引な剣士さんも素敵よ」

 「あぁそうかよ」

 「ロビンちゃぁーーーん!!!!!!!!!」




 「・・・・・・・」




隣のその様子を、ナミは目を見開いて見つめていた。
さっきまでの嬉しそうな表情は消え、蒼白とまではいかないまでも、ショックを受けた顔だった。








    想いが通じていると

    お互い想いあっていると思ったのは、

    本当にただの自惚れだったのか。








 「ごちそうさま!!」


ナミは勢いよく立ち上がり、誰とも目を合わさずに俯いてそのままキッチンから出て行った。


 「ナミー!!!残ったの食っていいかーー!?」

 「どうしたんだナミさん・・・・」

 「・・・・・・・・・・」






















 「ナミ、顔色悪ぃぜ」

 「・・・・・別に、



食事を終えたゾロが甲板に足を運ぶと、
海面を覗き込むようにナミは立っていた。



 「コックがお前にまた何か用意してるぜ」

 「・・・・いらない」

 「メシの途中だったろ」

 「・・・・・・いらない!」



不機嫌な顔で振り向いたナミに、ゾロは呆れたように言った。



 「言いたいことあるなら言えよ」

 「・・・・・別に、無いわよ」

 「腹にためとくのはよくないぞ?」

 「・・・・・・・」



ナミは睨みつけていた視線を外し、俯いて自分のつま先を見つめる。




 「言えよ」

 「・・・・・・・・・・」

 「あーーーもう、しょうがねぇ、じゃあおれが言ってやろうか」

 「・・・・・何を」




何を言うのかと、ナミが顔を上げた瞬間、ゾロはナミを見ながらニヤリと笑った。




 「お前、おれに惚れてんだろ」

 「・・・・・・・・・・・・・・な」



突然のゾロの言葉に、ナミは呆けたように固まった。


 「言えよ」

 「・・・・・・ななななななななな」



ニヤニヤと笑うゾロの前で、ナミは一気に真っ赤になって、まともな言葉が出てこなかった。



 「違うのか?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・違、わ、ない」

 「よし」



湯気が出るかというほどに全身真っ赤になって俯いているナミに、ゾロは笑って近づく。
そしてそのままナミの頭をよしよしと撫でた。



 「よくできました」

 「・・・っ子供扱いしないで!何よ!」

 「はは」



ムキになってゾロの腕をバシバシ叩くナミを、ゾロは楽しそうに笑いながら見下ろした。



 「時間かかったな」

 「・・・・・時間?」

 「お前見てばっかりで、ウジウジいつまでたっても言わねぇから」

 「・・・・・まさか、今日一日、」

 「おれとしちゃ、決心固めるきっかけ作ってやったつもりなんだが」

 「・・・・決心って、動揺ばっかりよ!!」



やれやれ、と言った顔で溜息をつくゾロを見て、ナミは目を吊り上げて抗議した。



 「はっきりしねぇお前が悪い」

 「何でよ!」

 「ま、お互い様か」

 「え?」



そう呟いたゾロが、優しく微笑んでナミを見る。
その顔に思わずナミは見惚れてしまった。



 「おれもはっきり言ってねぇからな」

 「・・・・・・」

 「おれもお前に惚れてる」

 「・・・・・・・・・・」

 「おい、聞こえたか?」

 「・・・・・・・・・知ってたわよ、バカ・・・」

 「じゃあなおさらお互い様だな」

 「・・・・そうね」



ゾロは微笑んで、泣きそうなナミを抱き寄せた。


 「これですっきりだ」

 「・・・・・・・そうね」



この後、『動揺させた罰』として鉄拳制裁が下されることなど、ゾロが知る由もなかった。



ナミ誕リク。
「ゾロの策略にきりきり舞いのナミ、最後は甘く」
策略:自分の目的を達成するために相手をおとしいれるはかりごと。
きりきり舞い:慌ただしく立ち働くこと。また、あわてふためくこと。てんてこ舞い。

・・・・・ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン。
策略ってレベルじゃねぇよゾロ。
私の知能レベルの低さがうかがい知れます。
きりきり舞いナミさん、何か慌てるというか、むしろ胃とか胸がキリキリしている。。。
とりあえず、告白話になりました。
『触』の2人とは別物ということで・・・。
しかもこれじゃ、この2人がデキたのって、少なくとも空島以降ってことだね・・。
・・まいっか。

7月19日に拍手にてリクくれた方、どうでしょ?
え?ダメ?マジで?

2005/07/21

生誕'05/NOVEL/海賊TOP

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