触。
昼下がり。
気温もちょうどいいし、日差しもさほど強くない。
パラソルの下でデッキチェアに寝転ぶと、ナミはすぐに睡魔に襲われた。
(こんなにゆっくりできるの久しぶり・・・)
(お願いだから今面倒起こさないでよルフィ・・・)
胸の中で呟きながら、体の力が抜けていくのを感じた。
足音がした。
浅い眠りだったからか、ナミはそれに気付いた。
それでも目を開けるのは億劫だったので、そのまま目を閉じて動かなかった。
すぐにまた眠気がきて、またうとうとと意識が遠ざかっていく。
先程の足音が近づいてきて、すぐ近くで止まった。
(何よ・・・・)
体は眠りたがっているので、
やはり目を開けることも身動きする事もできない。
誰かがチェアの隣に立って、自分を見下ろしているのは分かるのだが、
それが誰なのか確認するのも面倒だった。
とにかく、眠い。
(あ)
その誰かが、自分の髪を撫でている。
時折指を通して、さらさらと髪を流していく。
(気持ちいい・・・・)
昔から、髪を触られるのは嫌いではなかった。。
ベルメールさんやノジコに髪を切ってもらったり、梳いてもらったりしたのを思い出す。
ナミはその手に抵抗もせず、その心地良さを味わっていた。
ふと、顔に影がかかるのを感じ、人の気配をすぐ近くで感じた。
そして、唇に何かが触れる。
(・・・・・え?)
温かさを感じたのもつかの間、すぐにそれは離れて、同時に髪に触れていた手も影もなくなり、
足音ともに人の気配は消えた。
(なに・・・・?)
すぐに起きて、誰の仕業か確認するべきなのだろうが、
結局睡魔には勝てず、ナミはそのまま寝てしまった。
夕食前に目が覚めたナミは、
ぼんやりする頭で、先程のことを考えていた。
「夢・・・じゃなかったわよね確か・・・」
あれは一体誰だったのか。
優しく自分の髪を撫でていたのは、まぁ許そう。
気持ちよかったから。
でもその後の粗相はいただけない。
「勝手にあんなマネをして・・・寝込み襲うなんて最低よっ」
起き上がり、チェアに腰掛けて考える。
(普通に考えたら男よね・・・ロビンじゃないわね、・・・・多分)
髪に触れたあの手の感じは、女ではなかった気がするし、
やはりこの船の男子メンバーの誰かが、犯人ということになる。
(ウソップじゃないわ・・鼻が。)
(毛の感じはしなかったから・・チョッパーでもないし・・・)
ということは、残るはルフィ・サンジ・ゾロ、の3人。
(まぁ一番可能性があるのはサンジくんだけど・・・・・)
(でも、あいつだわ)
夕食を食べながら、ナミは視線を感じていた。
「何、塩?」
「・・・あぁ」
素っ気無くそう言うゾロに塩を取って渡す。
「何、まだ何かあるの」
「・・・いや」
やっぱりビンゴね、とナミは心中で思った。
夜になり、ナミは甲板でトレーニング後の酒をあおっていたゾロのところに行った。
「何でキスしたの」
まわりくどく言っても通用しそうにないので、ナミは直球で聞いた。
「・・・何のことだ」
「昼間私が寝てるとき、キスしたでしょ」
「何でそれがおれなんだよ」
「あんたしかいないわ」
瓶を傾けながらこっちを見てくるゾロを、ナミはまっすぐ見返して堂々と言ってやった。
「何で」
「ルフィの匂いもしなかったし、サンジくんの煙草の匂いもしなかった。あんたの匂いだったわ」
「匂いって、犬かお前は」
「で、何でなの」
「・・・さぁなー」
ゾロは否定しなかった。
やはり犯人はこいつだった。
ナミはゾロに詰め寄る。
「さぁなって、あんた寝込み襲ったのよ?犯罪よ?」
「キスごときで」
「それでも!」
へっ、と笑いながら言ったゾロに、ナミは顔を赤らめて抗議した。
「したかったから」
「え、」
「したかったから、した。それだけだ」
あっさりと言われて、ナミはしばらく固まっていた。
それだけの理由でされたのでは、たまったものではない。
「・・・あんたは、キスしたかったら、誰にでもするの?」
「いや」
「じゃあ何でよ」
自分は何を聞きたいのか、どんな言葉を聞きたいのか。
ただ一発殴って反省させれば済むだけで、ここまで追求する必要はないだろうに、
一体何を聞こうとしているのか。
それでもナミは、何故だかゾロを詰め寄らずにはいられなかった。
「お前だから」
「・・・・っ」
「お前だから、した」
「・・・・・・・・・・・」
「じゃあな、おれ風呂入るわ」
固まるナミの横を通り過ぎるとき、
ゾロはナミの頭にポンと手を置いて、軽く撫でてから去った。
「・・・・・何よそれ」
(何よそれ何よそれ何よそれ)
ナミは涙が溜まっていくのを感じた。
自分が、ゾロのどんな言葉を期待していたのかに、気付いてしまった。
(ちゃんと、言葉にしてくれないと分からないわよ)
(ちゃんと言ってよ、バカゾロ)
零れる前に涙を拭って、
今度同じ事をやりかえしてやろうと、ナミは決めた。
ナミ誕リク。
「キスする話」
この話では、ゾロ→ナミでナミさんは自分の気持ちに自覚前です。
6月19日に拍手でリクくれたアナタ、
すごいあっさりなちゅーになってしまいましたが・・・ダメ?
書いてて照れるんです(純情ぶるな)。
結局またナミさんの寝込みを襲う話になりました・・・。
2005/07/18
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