9500ゲッター・みどりサマへ愛をこめて。

夢。









夢をみた。




ゆっくりと流れる川を見下ろしながら、2人で夕暮れの土手を歩く。
手を繋いで、何も喋らずに、ただ歩いている。
少し前を歩くゾロのピアスが、
夕日を浴びて時折キラ、と光る。

綺麗だな、と思う。
その後姿を見るのが好きだった。
光るピアスが揺れるのをただ見ているだけで、幸せな気持ちになれた。
その視線に気づいて振り向いたゾロが、私に笑いかけてくれる。














目が覚めて、バカらしくて笑えてきた。
『叶わぬ夢』を、本当に夢にみるなんて。
笑って、それから泣いた。






















大学で一つ上の先輩であるロビンが、ゾロと付き合っていると知ったときには、
もうゾロを好きになっていた。
2年になるという2人の関係に、私は単なる共通の友人として傍にいることしかできなかった。

私はロビンのことを、先輩として友人として、大好きだった。
優しくて聡明で綺麗で、完璧なロビンは、
私だけでなく同級生や後輩にとって憧れの対象であり、誰からも慕われていた。



好きになった人がそんな女性の恋人だなんて、
これほど叶わぬ恋はない。











4年になったロビンが研究で忙しくなると、私とゾロは遊びに出かけることがよくあった。
もちろん2人きりではなかったけれど。
友人数人と一緒だった。
仲のいい同級生たちと遊びに行く、
単なるそれだけのことだった。

何度かそうして出かけたあと、私はゾロを誘った。
2人で出かけよう、と。

ゾロは少し迷っていたが、OKしてくれた。
それからは、2人で遊びに行くことが多くなった。
私はそのときは何も深くは考えず、
ただゾロと一緒にいられることが嬉しくて、楽しくて仕方がなかった。





何度目かに、2人で海を見に行った。
泳ぐにはもう遅すぎる時期で、
2人で砂浜を歩いたり、流れ着いたものを拾ったり、
特に何をするでもなく、ただそうしながら喋っていた。
会話の内容も取り留めのないもので、大学で友人たちを喋るのと大して変わらなかった。
でも、私はやっぱり嬉しくて、
ずっとこんな時間が続けばいいと思っていた。


日が沈む頃になると、砂浜に座って話した。
ゾロは2人で遊びに行くようになってからは、私にロビンの話をしなくなった。
このときも、ロビンの話題は出なかった。
だから私も、ゾロにロビンという彼女がいることを、
この瞬間も忘れていた。







ふと目が合って、キスをした。
どちらからしたのかは分からない。
でもどちらも、そうしたいと思っていたのは確かだと思う。



唇が離れて、ゾロに抱き寄せられたとき、
嬉しくて嬉しくて、思わずゾロに、好きだと言ってしまった。
ゾロはそれを聞いて微笑んで、そしてもう一度キスをした。



幸せだと、そう思った。




直後に、思い出した。








ロビン








ゾロには、ロビンがいる。
それなのに私は。
私は、ロビンを裏切った。









そう思った瞬間、ゾロの腕を振り払って立ち上がり、そのまま走ってゾロの元から去った。
残されたゾロがどんな顔をしていたかなんて、見る余裕はなかった。















それから数日は、ゾロのことを避けた。
ロビンの顔も、見れなかった。

罪悪感。



あのキスから1週間たったころ、大学の門で待ち伏せていたゾロに見つかり、
無理矢理教室へと連れて行かれた。

残っている学生はいなかった。
ゾロと私の2人だけが、しんとした教室に立っていた。







 「何故避ける」

 「・・・・」

 「・・嫌だったのか?」

 「・・・・そうじゃない」

 「じゃあ何だ」

 「・・・・ロビン・・に、申し訳なくて」





ゾロの顔を見れなかった。
ゾロの視線は痛いほど感じているのに、それを見返すことができない。
ずっと自分に向けて欲しいと思っていた視線が、
今は苦しかった。

ゾロから離れようと無意識に足が下がるが、
結局それは、壁際に追い詰められてゾロから逃げられなくなる結果になった。




 「お前は、その程度の気持ちでおれに好きだと言ったのか」

 「・・・っそんなことない!」

 「じゃあ堂々としてろ」



壁とゾロに挟まれて、逃げ場がなくなって俯く私を見下ろしながら、ゾロは言った。



 「でも」

 「ロビンからおれを取る覚悟で、好きだと言ったんじゃないのか?」

 「・・・・」

 「違うのか?」

 「・・・違わない、けど、でも」



ロビンを裏切るつもりなんて、なかった。

でもゾロが欲しいと思っていた。
それがロビンへの裏切り行為だと、
分かっていたのに私はただ気付かないフリをしていただけだ。





 「おれもお前が好きだ」

 「・・・・・・え、」

 「ナミ、お前が好きだ」

 「・・・・だって、ロビンは、」

 「・・・・・あいつとは、もう終ってる」





私はこの瞬間を待っていたのだろう。
ロビンからゾロを奪う、この瞬間を。

それでも、結局私はゾロを突き飛ばしてその場から逃げてしまった。
















翌日、授業を終えて帰ろうとした私を、外でロビンが呼び止めた。


 「ロビン・・・」

 「ナミちゃん、今時間ある?」

 「う・・うん・・・」












 「久しぶりね、こうして話すの」

 「・・・そう、ね」


ベンチに座ってそう言いながら、ロビンは体を伸ばした。


 「ずっと篭ってるから、外の風はやっぱり気持ちいいわね・・」

 「・・・順調?」

 「えぇ」

 「そう、よかった・・」

 「・・ねぇ、何か悩んでること、あるの?」

 「え・・・・」



ぎこちなく笑う私を覗き込みながら、ロビンが言った。



 「私に言いたいこととか、聞きたいこと、あるんでしょう?」








ロビンのその口調は、決して責めるようなものではなかった。
優しく微笑んで、ロビンは言った。




だけど私は、恐かった。

もし私が、ゾロとのことを打ち明けて、
もしロビンから罵声を浴びせられたりしたら。
ロビンはきっとそんなことは言わないと思う。
でもきっと、ロビンは傷ついてしまう。

耐えられない、と思った。
私のせいで、ロビンが傷つくなんて。
ロビンに嫌われたくない。

私はロビンが好きだ。




でも







それ以上に、ゾロが。











 「・・・ゾロが、好きなの」

 「・・・・・」

 「この前、ゾロと・・・キスした」

 「・・・・・」


私が泣いていいはずはないのに、涙が溢れてきた。


 「ごめん、ごめんなさいロビン・・っ」




私の言葉に、ロビンは何も返さなかった。
顔を上げてロビンがどんな顔をしているのか、確かめるのが恐かった。

怒っているのか、泣いているのか。




俯いたままの顔の前に、ハンカチが差し出された。

思わず顔を上げると、ロビンは怒って泣いてもいなかった。
困ったように笑いながら、ロビンは言った。



 「ナミちゃん、いいのよ」

 「え・・・?」

 「私ね、アメリカに行くの」

 「・・・アメリカ・・?」


ハンカチを受け取らない私にかわって、ロビンが私の涙を拭いてくれた。




 「遺跡発掘のチームにね、父の友人の紹介で加わることになったの」

 「アメリカって、いつ・・・?」

 「今の論文が終われば、来月からでも。
  大学は休学して、しばらくは帰らないわ」

 「ゾロは・・・」

 「知ってるわ」






突然のロビンの言葉に、私の涙はもう止まっていた。
ロビンは私から視線をはずし、前を向いて話し出した。



 「もう私たちはね、終ってたの。ただ惰性でずるずる付き合ってただけ。
  私のアメリカ行きがいい機会なのよ。
  あなたが告白しなくても、私たちは別れてたわ」

 「・・・・・」

 「貴女がゾロのことを好きなのも分かってたし、
  最近のゾロが貴女に惹かれてるのも気付いてた。
  私が早く別れましょうってゾロに言えばよかったのよね。
  ごめんなさい、ナミちゃん」

 「ロビンが謝る事なんて、全然ない・・っ!!」



ロビンが笑ってそう言うから、また涙が溢れてきた。



 「泣かないでナミちゃん、私貴女の笑った顔、大好きなのよ?
  すごく元気が出るの。だから泣かないで」

 「ロビン・・・っ」





ロビンにそんな顔をさせたくなんてないのに。

ロビンはまだ、ゾロの事が好きだ。
それなのに、笑ってくれる。
笑って、私に泣かないでと言ってくれる。

私は一体どれだけこの人を傷つけているか。





それでも、私は、ゾロを欲している。
















ひとしきり泣いてようやく私が落ち着いた頃、ロビンは研究室へと戻っていった。
そのあとも私は一人で、しばらくただぼんやりと座っていた。
ふと影が差し、顔を上げると目の前にゾロが立っていた。


 「ロビンから聞いたか」

 「・・・アメリカに行くって、・・結局別れてたって・・」

 「そうか」



しばらくゾロは何も言わなかったが、
ふっと息を吐き、隣に座った。




 「・・・おれたちは、もう終ってた。
  あいつからアメリカに行くと聞いたとき、
  おれは寂しいだのと思うよりも、単純におめでとう、と思ったんだ。
  あいつの男としての感情より、友人としての感情の方が出たんだ」


独り言のようにそう呟いたゾロが、私の肩を引き寄せた。
私は抵抗もせず、そのままゾロの肩に顔を埋めるようにして、また泣いた。






















その日の夜も、夢をみた。




ゾロと2人で歩いている。
私もゾロも幸せそうに笑って、手を繋いで、土手を歩いている。

そのとき、ロビンとすれ違った。
ロビンよりも背の高い、碧眼の男と一緒だった。

すれ違いざま、ロビンが私たちに微笑みかける。
私もゾロも、同じように笑顔をかえす。




そんな都合のいい、夢をみた。





えーと、9500キリリクです。
「現代風ゾロナミ、甘くて、切ないもアリ、ゾロの性格はストレート」。
・・・甘い?これ甘い?これ切ない?
むしろイタイな。
・・・・・・力不足ですんません。。
ゾロの性格云々は、なんつーかゾロ自体あんまり性格出てないというお粗末さ。
ふんがー!
ナミさんがやたらにピュアっ子ですが気になさらずに。。。
ロビンちゃんもゾロもお互いまだ好きなんですよ・・・。
(おかげで余計イタイお話に・・。てかゾロが酷い。)

・・と、とりあえず、
みどりサマに、愛を一緒にぐるぐる巻きにして捧げます。
甘くないけど。イタイけど。
とぅぎゃざー・うぃず・らぶ!!
え?返品?しかも着払い?(爆)

2005/07/17

番号/NOVEL/海賊TOP

日付別一覧

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送