変。







寝返りをうつ。

ゾロは身をよじって向きを変え、隣にあるナミの肩を引き寄せた。







 (・・・・・・・?)





 (何だ・・・・?)









いつもと違う感触に、ゾロは目を開けた。

肩の位置や肌触りが、全く違う。





 (おかしい)





まだぼんやりとする目をこすり、ゾロは隣に眠る人物の顔を覗いた。













 (・・・・・・・・・・は?)






そこには、確かに見覚えのある顔。







ただし、鏡の中で。






 (・・・・・・・どういうことだ?)











目の前で眠っている顔は、確かに自分の顔だった。



 (何でおれが、おれの隣で寝てるんだ?)



そして、伸ばした腕がやたらに細いことに気づいた。
ゾロはゆっくりと頭をさげ、自分の胸を見てみた。

そこには、あるはずのないものが、あった。




 (・・・・・・・何てこった)




とりあえず、揉んでみた。
触っている感触も、触られている感触もある。







どうやら、自分は今ナミの体になっているらしい。



ゾロはそう判断し、
毛布がずり落ちるのも構わず上体を起こして、ボリボリと頭を掻いた。



 「どうしたもんか・・・・」



おぉ、声もナミだ、と
ゾロは冷静ながらも妙なところに感心していた。





















素肌が外気にさらされて、ナミは軽く身震いをして目を覚ました。



 (・・・・ゾロ?)




ゆっくりと目を開けたナミは、隣に座っている人物の顔を見て、固まった。




 「よぉ、ナミ」




自分の顔が、自分の声で、自分に向かって挨拶してきた。



ナミはがばりと起き上がり、そして自分の体の異変に気が付いた。










 「・・・・・・キャーーーーーーーーーー!!!!!!!」








 「声でけぇぞ、てかおれの声でキャーとか言うな・・・」

 「ななななな!?何!これ!?何でゾロ!!?」

 「何か、入れ替わったみたいだなぁ」

 「そ、そんなあっさりとアンタ!!」



















 「何ですか今の声は!ナミさん何か!?」




サンジが、女部屋からの奇声に気づき、扉を勢いよく開けて飛び込んできた。







 「・・っぶはぁ!ナミさん!!何て艶かしい御姿で!!!!
  つーか何でマリモがそこに居る!?何でてめぇも裸なんだコラァ!!!」



裸の上半身を丸出しでベッドの上に座っているナミの姿を見て、
サンジは鼻血を噴出しながらも、その隣に居るゾロに抗議するのを忘れない。





 「サンジくーん!」



ナミは泣きそうな声で言った。
だが・・・。





 「・・・・っっっ!!気持ち悪ぃ声出してんじゃねぇマリモ野郎!!」





確かに言ったのはナミだが、その体も声も、『ゾロ』である。



 「ひどい!サンジくん!!」

 「やめろ!嫌がらせか!?」



『ゾロ』の声と体で、ナミは泣きながらサンジに訴えるが、
サンジは全身に鳥肌を立て、わーわー言いながら耳を塞いでいる。



 「落ち着けよ2人とも」



サンジにこれ以上『ナミ』の裸を見せるわけにはいかないので、
ゾロは毛布を胸元まで引っぱりあげながら言った。


 「どうやらおれとナミ、体が入れ替わったみてぇなんだ」

 「・・・・は・・・・・?」

















というわけで、一同はキッチン兼会議室に集まった。


 「原因分かるか?チョッパー」

 「うーん、2人とも、血液検査の結果も異常ないし・・・、
  性ホルモンのバランスが前よりちょっとズレてはいるけど別に・・・・
  本当に精神だけが入れ替わってるみたいだな・・・」

 「何か悪いモン食ったんじゃねぇの?」

 「おれが出してる料理にンなもん入ってるわけねぇだろが!!」






 「ゾロとナミだけが関係する何か・・・・2人とも、昨日は交尾したか?」


チョッパーがしばらく悩んでいたが、急に的を得たような顔になり、そう言った。





 「・・・・なっ、チョッパー!!何言い出すんだお前!!」




一瞬固まっていた一同だが、ウソップがようやく正気を取り戻して何とか言葉を出せた。



 「だ、だって、この船でこの2人だけ違うのって・・・」

 「「・・・・・・」」

 「否定はしないんだなお前ら・・・」

 「「・・・・・・」」

 「ナミサーーーーーーン!!!!!」


ゾロとナミがクルーから目を逸らしあらぬ方向に視線をやるのを見て、
サンジは泣きながら崩れ落ちた。





 「あ、じゃあ、酒とかは?サンジが買ってきたの以外、飲んだか?」


サンジのことは全員があっさりと無視し、話は進んでいく。


 「酒・・・、あぁ・・・飲んだな」

 「うん、ゾロが前の島で買ってきたお酒・・・・」





乱暴な『ナミ』の声と、
妙にしおらしい『ゾロ』の声。

さすがにクルーもすぐに慣れることはなかった。
男勝りな『ナミ』はまだマシだが、
女っぽい『ゾロ』はどうも受け入れがたい。

ただそれを先程ルフィが口にして、『ゾロ』の体のナミが大泣きしてしまい、
『泣くゾロ』という余計に気味が悪い光景になってしまったので、禁句となっている。




 「その酒、まだ残ってるか?見てみるから、取ってきてもいいか?」

 「おぉ、カウンターの上にある」

 「わかった!」



そう言ってチョッパーはぴょんと椅子から飛び降り、キッチンから出て行った。








 「・・・もう!ゾロのせいで大迷惑よ!!!」

 「何だよ、飲みたいっつったのお前じゃねぇか」

 「買ってきたのはアンタじゃない!!」



そう叫んで、ナミはまた泣き始めた。





泣きたいのは、ゾロも同じだった。
ナミほどのショックを受けたわけではないし、
当事者のわりにかなり冷静に事態を受け止めているが。

ただ、目の前で『自分』が、
女の喋り方でわんわん泣いているのを見ると、
その不似合いっぷりに自分の体ながら、吐き気がした。
『ナミ』の体のゾロは、眉間に皺をよせ盛大な溜息をつくしかなかった。















 「お、チョッパー、どうだった?」


しばらくして、チョッパーが酒瓶を抱えて戻ってきた。



 「ここじゃあ原因の成分の特定はできないけど・・・・でもおれ、この酒知ってる」

 「知ってる?」

 「前の町で聞いたんだけど、いろんな『悪魔の実』の成分を抽出・改良して、
  それを入れてる酒があるらしいって・・・」

 「悪魔の実ぃ!?」

 「うん、でも効果は無いはずなんだ、そんな成分くらいじゃ」



まさかナミとゾロまで能力者になってしまったのか、と一同はざわめく。



 「効果は無いっつったって、現にこの2人、体入れ替わってんだぞ?
  何かしらの悪魔の実のせいなんじゃねぇのか?」

 「確かに、今のところ一番アヤシイ原因はコレなんだよね・・」


チョッパーは酒瓶を見つめて唸る。






 「まさか・・・一生このまま・・?」


ナミの不安げな声に、チョッパーは慌てて否定する。


 「そ、それは無いと思うよ!悪魔の実のせいだとしても、本来は効果の無いはずのものなんだから・・・・
  多分、一過性・・・・多分・・・・」



非常に不安なチョッパーの返答に、ナミはまた泣きそうになる。



 「と、とにかく、この成分調べてみるよ」

 「お願いね、チョッパー」

 「・・う、うん・・」



『ゾロ』の声で『お願いね』などと言われて、
チョッパーは少し青ざめながら再びキッチンから出て行った。








 「何とかなるって!ゾロ!じゃねぇ、ナミ!」

 「うん・・・」

 「夜はどうしましょう?」

 「え?」

 「寝るところよ」

 「・・・・あー・・」




体は『ゾロ』だが、中身はナミである。
男部屋で一緒に寝てもいいものか。
さらに体は『ナミ』だが、中身はゾロ。
女部屋でロビンと2人きりにさせてもいいものか。
外身に従うにしろ、また中身に従うにしろ、色々と問題はある。





 「ゾロとロビンちゃんを同じ部屋になんかさせるかーーー!!!!」

 「男部屋はイヤ!!!」

 「とりあえずこの場合は見た目の問題なんじゃねぇのか?」

 「おれはどっちでもいいぞー」







ギャーギャーと騒ぎ出すクルーたちを、ロビンとゾロは無言で見ていた。

そして、互いにちらりと視線を交わす。




 「今日は見張りじゃねぇんだよな・・・」

 「えぇ」

 「ふーん・・・・」

 「でも、私は構わないわよ?気にしないわ」

 「・・・・・・・」

 「それでいいんじゃない?」




ロビンはゾロを見つめ、にっこりと微笑んだ。




 「悪ぃな」

 「いいえ」




ゾロは立ち上がり、騒いでいるクルーの間に割って入った。



 「解決策が見つかったぜ」

 「え?」



言い切るゾロを、一同は見つめる。





 「おれとナミで、ナミのベッド使えばいいだけの話だ」

 「なっ・・・・」

 「私は気にしないから」



ロビンはにっこり笑いながらゾロの言葉に付け足した。



 「自分と寝るなんて何かイヤーーーー!!!」

 「別にヤるとは言ってねぇだろ。ロビンいるしな」

 「してもいいわよ?」

 「するわけないでしょバカーーー!!!!!」








2人の体が元に戻るまでの数日、女部屋で、
小さく丸まった『ゾロ』を『ナミ』が抱きしめながら眠る、という光景を
ロビンは優しく見守っていた。


ナミ誕リク。
「入れ替え、ゾロがナミに、ナミがゾロに」
6月18日に拍手でリクくれた方、・・・・ダメ?
ごめんなさい、ベタに悪魔の実です。ぐはー。
38巻のSBSを読んで、ちょっとアセりました(笑)。

ラストはぱっと見ナミゾロな感じで。
ていうか別の考えてたネタと微妙にカブるなぁ・・・・・。
でも悔しいからどっちもUPしてやるぅ!!!
そのうち。

2005/07/10

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