対。













 「あいつに妙な気起こすんじゃねぇよ」





キッチンでサンジが皿洗いをしているところへ、
ゾロは入ってくるなりそう言った。





 「何だ、いきなり」






サンジが振り返ると、ゾロはむすっとした表情で酒を選んでいた。




 「言葉通りだ」

 「・・・あぁ、昼間のことか?てか酒盗んな」






















今日の昼間、脚立に上ってナミはミカンの木を手入れしていた。
ゾロは甲板で寝転んで、ぼんやりとそれを眺めていた。
そこへサンジが、おそらくはおやつ用のミカンを貰うために、ナミの傍へとやってきた。
サンジが声をかけた拍子、振り返ったナミがバランスを崩した。

 『きゃ・・・・・!』


思わずゾロはガバリと身を起こす。
この距離で間に合うわけは無いが、反射的に助けようと動いた。




が。




落ちたナミを抱きとめたのは、当然、すぐ下にいたサンジだった。


 『あ、ありがとう、サンジくん』

 『いえ、大丈夫ですか?ケガは?』

 『大丈夫。・・・・あの、下ろしてくれる?』


”お姫様抱っこ”の状態でナミを抱えているサンジは、
その手の中の感触を少しでも長く味わいたいのか、なかなかナミを下ろさなかった。


 『・・もーすこし・・・・』

 『下ろして』

 『はーい・・・・』


きっぱり言われて、残念そうにナミを地面にそっと立たせたサンジは、
ここに来た目的であるミカンを幾つかもらい、キッチンへと戻った。




ナミが甲板へと目を向けたとき、既にゾロの姿はそこにはなかった。
























 「は、何だお前、嫉妬か?」

 「・・・何だと?」


サンジは手を休めゾロに向き直り、シンクに寄りかかる。
ゾロはその言葉に酒を選ぶ動きを止め、凶悪面でサンジを睨みつける。


 「マリモ野郎でも人並みに嫉妬なんてするんだなぁ?」

 「・・・・まぁでもそもそも、グル眉コックごとき相手に嫉妬する必要なんてねぇよな?」

 「・・・・ナミさんってよくキッチンで日誌とか書くよなぁ、”おれ”しか、いない時」

 「・・・・男として見られてないってのも辛いもんがあるだろなぁ」

 「・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・」


互いに無言で相手を睨みつける。












 「何だこの冷戦は・・・・・・」

 「何だぁ?今日は静かだなー2人とも」

 「ルフィ、間に入るなよ!ビームで焼かれるぞ!!」

 「何ぃ!!ビーム出せるのかあいつら!!!」

 「あぁ、バシバシ出してるぜ・・・」

 「すげーーーーーーーーー!!!!!」





扉の外でこっそりと中を覗いていたウソップとルフィは、
2人が暴れ出して巻き添えをくらうと困るので、
中に入らずに2人の様子を見守ることにした。









 「・・・・ナミさんよくてめぇの文句言ってるぜ?おれに」

 「・・・・所詮相談相手止まりってことに気付かねぇか?」

 「・・・・そっから始まるってものアリじゃねぇの?これからどうなるか分かんねぇぞ?」





   バチバチバチバチ





 「おぉ、ビームだ!」

 「あぁ、ビームだな」

 「すんげーーーーーーー!!」



2人の静かな戦いを、ルフィは目をキラキラさせて見ている。










 「あーーー喉渇いた。ちょっと邪魔よあんたら、何してんの?」

 「お、ビームの源が来た」



ウソップとルフィの背後に、ナミが立つ。



 「え、何?ビーム?」

 「いやいや何でもない。それよりナミ、今はキッチン入らない方がいいかもしれねぇぞ」

 「何でよ、喉渇いてるの」

 「あーーーーー・・・・・」



ウソップの助言も空しく、ルフィを押しのけてナミはキッチンへと入っていった。







 「サンジくーーん、何か飲み物ちょうだい」

 「はいナミさーん!!!」


サンジはあっという間に表情を変えハートを飛ばしつつ、
ナミにアイスティを入れる。

そのまま放置されてしまったゾロは、
それでもなおサンジを睨んでいた。




 「ん、おいしい!さすがサンジくん!」

 「ありがとうございます!」





テーブルについたナミからのお褒めの言葉に、
サンジは体をくねらせる。




そしてナミの隣に跪き、その右手を取り、
キスをした。






 「貴女のためならいつ何時でもこの身を捧げますっっ!!」

 「あらありがと。今後もよろしくね」

 「はーい!」

 「・・・・・・・・・・・・」




外で見ていたウソップは、ゾロの視線に殺意が混じるのを見逃さなかった。






一方ナミは、サンジに(手の甲とはいえ)キスされたことに微塵の動揺も見せていない。
サンジはいまだナミの手を握ったまま、ゾロにチラっと視線を向け、
ニヤリと笑った。




 「・・・・・・・・・・・・」








 「え?ゾロ?」






黙ってただサンジを睨みつけていたゾロだったが、サンジの勝利(?)の笑みを見て
ツカツカとナミの元に歩み寄ってその手首を握り、サンジの手を乱暴に振り解いた。


 「何だクソマリモ、邪魔すんなよ」

 「何、ゾロ?」

 「・・・・・・・・・・・・・・」





ゾロはナミの手を握ったまま固まっている。
突然のゾロの行動にナミは戸惑いつつ、ゾロを見上げる。


しばらくゾロは無言でナミの手を見下ろしていたが、自分のシャツの裾を引っぱって、ナミの手の甲をゴシゴシと拭き始めた。




 「ちょ、ちょっと、ゾロ?」



   ゴシゴシゴシゴシ



 「そんなに強くしたら痛いってば」

 「失礼なヤツだなてめぇ!あ!!ナミさんの白い肌が赤くなっちまってるじゃねぇか!やめろコラ!!」



ナミの訴えも、立ち上がったサンジの抗議も無視して、ゾロはナミの手を拭き続ける。




   ゴシゴシゴシゴシ




ひとしきり拭いたあと満足したのか、ゾロはシャツの裾を戻した。






 「何なのよ全く」

 「・・・・・・・」



ゾロはサンジに目をやって、ニヤリと笑った。



 「な、何だよ」









そして、先程サンジがやったように、
握ったままのナミの片手を持ち上げ、その甲に、
キスをした。










 「「!!!!!!!!!!」」

 「!!!!!!!!!!!」

 「!!!!!!!!!!!」









キッチンの外の2人は、ゾロらしからぬ行動に唖然とし、
サンジは呆然と固まり、
そしてナミは、一気に顔を真っ赤にした。








 「・・・・・・!て、ててててててめぇ!!!!」



はっと我に返ったサンジは、ゾロに掴みかかろうとするが、
ゾロはまだ手に唇を寄せたままナミの目を見つめ、
そしてナミはうっとりとゾロを見つめ返している。








 「ゾロ・・・・・・・」

 「ナミ・・・・部屋行くか・・・・?」

 「・・・・行く・・・・・・」










頬を染めぼうっとしたままのナミの腰に手をやって、ゾロはキッチンを出て行く。


去り際にまたサンジに視線をやり、一言、言い残した。












 「・・・先は暗ぇな、ラブコック」


 「・・・・・・・・・・・・クソマリモ!!!!!」





どうあがいても、その叫びは敗者のものだった。




ナミ誕リクです。
「ナミとサンジに嫉妬するゾロ」。
6月2日にメルフォにてリクくれたモカさま。
こんなんで・・・・ダメっすか・・・。
最後ゾロの圧勝になりましたが・・。
ロビン相手のときより余裕です、ゾロ。
哀れサンジくん。
ちょっと哀れすぎですかね・・・(笑)。
てかナミさんが純粋ですなぁ。
手にちゅーでノックアウト(笑)。

2005/07/03

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