盗。
「もういいわよ!バカ!!」
「・・・剣士さん、今度は何したの?」
「・・・別に。・・・盗み聞きとは悪趣味だな」
「聞こえただけじゃない。彼女、泣いてたわよ?」
甲板でナミがゾロに怒鳴って、女部屋へと走っていったすぐ後、
そのまま立っていたゾロの元に、ロビンがいつもの笑顔でやってきた。
「・・・・・、明日街に出ようっつーから、断っただけだ」
ゾロはぶすっとした顔で答えた。
「明日?」
「おれは船番だから、無理なんだよ」
「誰かに代わってもらえばいいじゃない。だって明日は彼女の・・・」
不思議そうな顔のロビンの言葉を、ゾロは遮る。
「前の島が海軍だらけで、ロクに上陸してねぇんだ。他のヤツらも下りてぇだろ」
足元のダンベルを持ち上げながらそう言ったゾロは、ロビンから離れてトレーニングを始める。
「・・・・ちゃんと航海士さんに、そう言った?」
「・・・・」
「言ってないのね?」
「言ったところでどうなる」
ロビンは溜息をつく。
「貴方らしいと言えば貴方らしいけど。でも明日は・・・」
「うるせぇな、てめぇにゃ関係ねぇだろ」
ゾロはこれ以上その話をしたくないのか、冷たく言った。
その口調に、ロビンは顔をしかめる。
「あらなぁに、その態度」
「あぁ?」
「貴方達のことを考えてるから言ってるのに、ひどいわ」
「余計なお世話だ」
「貴方が航海士さんにそんな態度のままでいるなら・・・」
「何だよ・・・」
訝しげなゾロに、ロビンはにっこりと微笑む。
「私がとっちゃうわよ?」
「・・・・は?」
「傷ついた女性を慰める、これは絶好のチャンスよね」
「・・・何のチャンスだコラ」
「貴方には言えないわ」
トレーニングを止めて、ゾロはロビンに一歩近づく。
「ナミに何する気だお前」
「今言ったでしょ?貴方から盗るの」
凶悪な目つきで睨んでくるゾロに、ロビンは少しも退かずに笑って答えた。
「てめぇ・・・・・、本気か?」
「本気よ?前にも言ったでしょ?私、彼女のこと好きだもの」
「・・・・・・」
ゾロは無言でロビンを睨みつける。
しかしロビンは微笑んで、くるりと向きを変える。
「それじゃ、今日から早速行動に移させてもらうわね?」
そう言って、ロビンは甲板から去った。
「・・・・くそ!」
夕食時、ロビンはナミの隣に座った。
そこは暗黙の了解で、ゾロの指定席のはずだった。
ゾロはまたも無言でロビンを睨みつけるが、
ロビンはそれをあっさりと無視して、ナミの方を向いている。
ナミも未だに怒っているのか、キッチンに入ってきたゾロを同じように無視して、ロビンと話している。
しばらく入り口に立っていたゾロだったが、仕方なくナミとロビンの正面に座った。
「航海士さん、明日は一緒にお買い物に行かない?」
ゾロが座ったのを見て、ロビンはそうナミに言った。
「え、・・・明日・・?」
「そう。剣士さんは船番なんでしょ?」
「う、うん・・・・」
ナミはゾロを見る。
相変わらず2人を睨みつけていたゾロと視線が合ったが、ゾロはすぐに逸らしてしまった。
それが気に食わなくて、ナミはまた機嫌が悪くなる。
「そうね、2人で行こうか?ロビン」
ナミはゾロから顔を背け、ロビンに笑って言った。
「本当に?嬉しいわ」
そう笑ったロビンはさりげなく、テーブルの上のナミの手に、自分の手を重ねた。
「貴女の手って、とってもキレイよね」
「え?タコとかいっぱいあるわよ?」
「指の長さのバランスもいいし、肌触りとか、すごく気持ちいいわ」
「ロ、ロビン・・・・」
ロビンはナミの手の指や甲に、自分の指を滑らせる。
ナミは思わず頬を染めて手を引っ込めようとするが、ロビンの手がそれを許さなかった。
「明日、指輪かブレスレット、買ってあげましょうか?選ばせてね?」
「あ、ありがとう・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ロビンが手に触れてきたあたりから、ナミはかなりの視線を感じていた。
ゾロだ。
殺気まがいの視線をナミに送っている。
ナミはチラっと横目で見ると、凶悪面がこちらを睨んでいた。
(な、何怒ってんのよアイツ・・・)
訳の分からないゾロの視線と、ロビンの行動に、ナミは混乱していた。
相変わらずロビンはナミの手を撫で、さらにもう片方の手は太腿の上に乗っていた。
「えと、あのー、ロビン?」
「なぁに?」
たまらず声を出したナミだが、にっこりと無邪気な笑みを返され、続く言葉が出なかった。
「・・・・・オイ」
殺気のオーラを漂わせて、ついにゾロが口を開いた。
「いい加減やめとけてめぇ・・・」
「あら、どうしたの剣士さん?」
低く呟くような声だが、かなりの迫力のゾロの口調に、ロビンは少しも動じずに返事をする。
「その手ぇどけろっつってんだよ・・・・」
「どうして貴方にそんなこと言われなきゃいけないのかしら?」
「さっきから目障りなんだよ・・・・」
「私が航海士さんと仲良くしちゃダメなの?」
「てめぇの触り方が気に食わねぇ」
「こんな程度で怒るなんて・・・・、今夜どうしましょう」
「てめぇ!夜に何する気だコラァ!!!」
大きな音を立てて、ゾロは思わず立ちあがった。
「女部屋で何をしようが、女の勝手よ」
ロビンに素っ気無く言われて、ゾロの額に血管が数本浮かぶ。
「・・おいナミ!!!!お前今日外で寝ろ!!!!」
「な!何よ!?何で私が外で寝なきゃなんないの!?」
突然ゾロに命令されて、ナミも思わず大声で抗議する。
「うるせぇ!!元はといえばお前、大人しく触られてんじゃねぇぞ!!」
「男の嫉妬は見苦しいわね」
「何だとコラ!!!」
その単語に、思わずナミは反応する。
「嫉妬って・・・?」
「!!っっうるせぇ!」
ナミの言葉に、思わずゾロは顔を赤くする。
「航海士さん、今日も私と一緒に寝ましょうね?」
一人興奮しているゾロを尻目に、ロビンは再びナミに向き直り、話しかける。
「今日も!?何やってんだてめぇら毎晩!!!!」
「へ、変な言い方しないでよロビン!!」
ゾロはさっきまで座っていた椅子を邪魔だとばかりに足で蹴飛ばし、正面のナミの傍へドカドカと移動した。
「ナミ!外で寝ろ!!!」
ナミを見下ろして、ゾロは言った。
「嫌よ、夜は冷えるのよ!風邪ひくじゃない!」
「じゃあおれと寝たらいいだろ!!とにかく外だ!!!」
「なっ・・・・・!!!」
自分の発した言葉にも、真っ赤になっているナミにも気づかず、
ゾロは今度はロビンを睨んでいる。
「そんなに警戒しなくてもいいじゃない」
「てめぇはマジで何するか分かんねぇんだよ!!」
「貴方がするような凄いことはしないわよ」
「なっ・・・」
一瞬ゾロがたじろぎ、ナミがまた一段と真っ赤になった。
「とにかく!!こいつに妙な真似すんな!!行くぞナミ!!」
「え、ちょっと、まだゴハン途中・・・・」
ゾロはナミの腕を掴んで、無理矢理立ち上がらせた。
「どうしていけないの?」
「こいつはてめぇのオンナでも何でもねぇだろ!!」
「そう言うなら、じゃあ誰のオンナなの?」
「おれのだ!!!!」
そう言い残して、ゾロはナミを引っぱってキッチンから出て行った。
ナミは頬を染めてゾロを見つめながら、ゴハンも忘れてそのまま素直についていった。
「フラれちゃったわ」
ロビンは笑いながらそう言った。
『・・・お前ら、頼むからそういう喧嘩は違うトコでやってくれ・・・』
ゾロの殺気にあてられながら黙々と食事を続けていたクルーは、一斉に溜息をついた。
ナミ誕リクとしていただきました。
「ロビン→ナミ←ゾロで、ロビンとゾロでナミの取り合い」。
6月7日に拍手にてリクくれた方、こんな感じになりました。
ゾロナミ前提ですが。
いかがでしょ・・・?
誕生日前日の話になったので、UP祭り1発目となりました。
2005/06/26
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