護。





















   お前は何も守れない





















 これは夢だ

 最近よく見る、夢だ







サンジは顔をしかめながら思った。
キッチンで夕食後の皿洗いを終えて、ついテーブルでうたた寝をしてしまったのだ。



 これは夢だ

 あのサカナ野郎はブッ殺したはずだ



そう理解しているのに、
夢だと分かっているのに、
頭の奥を殴られたような、全身が総毛立つ感覚に襲われる。














   何も、守れない






 そんなことはない

 おれは






   いつも誰かに助けてもらっている
   お前を助けるために、偉大な男はその海賊としての未来を絶たれたではないか?







 違う

 事実だが、違うんだ






   いつも守られていたような人間に、他の誰かを守るような力があると思うのか?






 違う

 違う

 違う






















 「サンジくん!!」




 「・・・ナミ、さん・・?」








テーブルに突っ伏していたサンジを、ナミは揺り起こした。
サンジはうっすらと目を開ける。




 「うなされてたわ、どうしたの?泣いてるの?」



ナミはサンジの肩に触れたまま、その顔を覗き込む。



 「おれは・・・・」

 「うん」

 「おれは、誰も、守れない」

 「え?」




顔を上げたサンジの目は、ナミを見ていない。
ぼんやりとした意識のままで、サンジは呟く。



 「誰一人守れない、誰一人救えない・・・・」

 「どうしたの?何でいきなりそんなこと・・・」



普段のサンジとは違う、弱気な口調と発言。



 「夢で・・・思い出して・・・」

 「誰かに言われたの?」

 「・・・・前に・・・」



徐々に意識がはっきりしてきたサンジは、体をゆっくり起こし背もたれに体重をかけた。



 「バカね、そんなの気にすることないでしょ」

 「でも事実だ、おれは・・・」

 「気にする理由が無いわ」



ナミは隣の椅子に座り、サンジの方に向き直る。



 「サンジくんが誰も守れないですって?
  この船のクルーは皆サンジくんに守られてるのに?」



ナミはサンジの目をまっすぐに見て、肩をすくめながら言った。





 「みんな・・・・・?」

 「サンジくんがいなきゃ、皆飢え死にしてるわ」

 「・・・ルフィはそうかもしれませんね」



サンジはぎこちなく微笑む。



 「私たち皆、サンジくんが居ないときっと生きていけない
  それって私たちを守ってくれてるってことよ」

 「・・・・」

 「それに、あなたが今までどれだけの命を救ってきたと思ってるの?
  コックとしてあのレストランで、そしてアーロンパークで、ドラムで、アラバスタで、空島で・・・他にもたくさん。
  数え上げたら両手両足の指使っても足りないんじゃない?」




ナミはサンジの右手を取り、自分の両手で包み込んだ。




 「あなたはこの手で皆を救って、皆を守ってる」


包んだ手を、祈るようにナミは自分の胸元に引き寄せる。





 「だから、そんな夢なんかで泣く必要なんて無いでしょう?」


上目遣いで、ナミはにっこりと微笑んだ。





 「・・・おれは、守れるかな」

 「えぇ」



 ナミは手をほどいて、サンジの手をテーブルの上に戻した。



 「私もルフィもゾロも、他の皆も、みーんなサンジくんに守られてるってこと、知ってるわよ?
  気づいてないのは当の本人だけだったみたいね」
















『なぁクソマリモ』

『返事するとでも思うか?』


ある夜に、キッチンで2人になったサンジはゾロに声をかけた


『お前さぁ、おれが誰かを守ったり救ったりできると思うか?』

『はぁ?』

『おれは誰も守れねぇか?』

『何アホ言ってんだ』

『おれは真面目に聞いてんだぞ』

『だからそれがアホだっつってんだよ』


ゾロは取った酒を、そのままあおって飲む。


『どういう意味だよ』

『今更って意味だ』

『何だそれ』

『さぁな』


ニヤリと笑って、ゾロは再び酒をあおる。


『もういい、てめぇに聞いたおれが馬鹿だった。
オラ、酒取ったんならさっさと出て行きやがれ。
それとも皿洗い手伝うか?』

『じゃーな』

『ちっ。労働しやがれ』















 あぁ、あれはそういう意味か

 はっきり言いやがれクソマリモ















 「落ち着いた?」

 「ハイ、ありがとうナミさん」

 「どういたしまして」




サンジの笑顔を見て、ナミは立ち上がる。




 「ナミさんもロビンちゃんも、あとついでに野郎どもも、守るから」

 「うん」

 「だからちょっと抱きしめていい?」

 「『だから』って文章おかしいわよ。却下」

 「つれない貴女もステキです〜〜」



弱気サンジくんです。
ムリヤリでもゾロを絡めます(笑)。

2005/06/04

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