熱。








「・・・・・・・・・」












いやだ

いやだ



こんなのは、いやだ











体中の血液が急速に冷えていって、それが全身を駆け巡る。

体温が1度も2度も下がったように感じた次の瞬間には、
生ぬるい汗が一斉に溢れ出た。




いやだ


こんなのは








そして、
横たわったその頭越しに寄越される視線と目が合ったとき、
体温が一気に上昇した。



この、バカゾロ!!!







ナミはゾロの横までフラフラと近づくと、
そのままペタンと座り込んだ、


 「どうした」


若干掠れてはいるが、それでもはっきりとゾロは言った。



 「腰でも抜けたか?」

 「・・・・うるさい・・・・」

 「おい、お前の方はどうなった」

 「・・・・勝ったわよ・・・・」

 「上等。おし、じゃ行くか」

 「・・・・・動けるの・・・?」



依然横になったままのゾロを見下ろしながら聞く。



 「動かねぇと始まんねぇだろ、とりあえず」

 「・・・だって、血が、」



ナミの目に映るのは、血で赤く染まったシャツと、
切り裂かされたその間から見える、新しい傷口。
傷口からはまだ血が溢れ、さらにシャツを染めていく。



 「あぁ?かすり傷だ、問題ない」

 「・・・・・・・」

 「何だよ、いやに大人しいな。足見せてみろ」




ゾロは少し顔をしかめつつ起き上がり、ナミの横に胡坐をかいて座った。

ナミは促されるままに、座り込んでいた姿勢から足を投げ出すように動いて、
ゾロの太腿の上に左足を乗せた。
痛みが全身に走る。

その細い足首を掴んで、ゾロはナミの傷口に顔を近づける。


 「結構イッてんな。指の感覚は?ちゃんと動くか?」

 「うん」

 「じゃ神経は大丈夫だろ」

 「・・・・アンタの方がヤバイんじゃないの」

 「あ?」


ゾロの胸の傷に軽く手をやりながら、ナミは泣きそうな顔で呟く。


 「平気?」

 「さっきも言ったろ、問題ない」



ナミはそのままゾロに擦り寄って、ぎゅっとしがみついた。



 「何だ」

 「・・・ビビらせないでよ、バカ」



ゾロはナミをあやすように、ポンポンとその頭に触れる。



 「おれが死んだと思ったか?」

 「・・・・・・・」

 「不安にさせたか?」

 「・・・・・・・・・・・」

 「ま、安心しろ。二度と敗けねぇって誓ったしな、あいつに」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・」






 「おい、もう行くぞ。お前案内しろよ」

 「・・・・このまま」

 「あぁ?」

 「このまま、抱っこしてって」



ナミはゾロの胸に顔を埋めたままで呟いた。






 「てめ、お前抱いたまま走れっつーのか!?アホ言うな!!」

 「じゃ、おんぶ」



ナミは顔を上げて、ゾロの目をまっすぐ見ながら言う。



 「・・・っ、さっきまでのしおらしさはドコに・・・」

 「だって足痛いんだもん」

 「おれの傷はどうなんだよ」

 「さっき平気って言ったじゃない」

 「ぐ・・・・」

 「平気なんでしょ。じゃおんぶ」



そういってナミはさらにゾロにしがみつく。



 「〜〜〜くそ!!ちゃんと道案内しろよ!」



ゾロは乱暴な口調だが、そっとナミの足を自分の足の上からおろし、
ナミに背中を見せるように向きを変える。



 「誰にモノ言ってんのよ」

 「へぇへぇ」



ナミはその背中にしがみついて、しっかりと首に手を巻きつけた。
それを確認して、ゾロは立ち上がる。
その拍子にまた傷口から新たな血が溢れたが、構わず走り出す。



 「そうと決まれば早く行かなくちゃ!ゾロ!!全力疾走よ!!」

 「だからおれも怪我してんだぞコラ!!!」

 「私は立てないの!」

 「あーークソ!!落ちても拾わねぇからな!!」

 「首絞める勢いで捕まっとくわ」

 「締めるな!!!」










ナミの案内でただひたすらにゾロは走り続ける。
そのたびにドクドクと傷口からは血が流れていくが、ゾロがスピードを緩めることはない。

ナミはそれを見下ろしながら、さらにゾロにしがみつく。


 「本気で首絞めんなよコラ」


ゾロは大袈裟に「ぐえっ」と声を出す。



 「・・・・私の見てない所で死ぬなんて、許さないんだから」

 「あぁ?死んでねぇだろ」

 「もしそんなことになったら、借金倍額なんだから」

 「死人にまで取り立てする気かお前」

 「当たり前よ。地獄の底まで追いかけて取り立ててやるわ」

 「こわ」

 「覚悟してなさいよ」

 「へぇへぇ」

 「分かってんの」

 「おれはまだ死なねぇよ」



ゾロはまっすぐ前を見たままで答える。



 「お前の居ない所で死んだりしねぇ」





ゾロの言葉にナミは何も返さず、またしっかりとゾロにしがみつく。



 「・・・そこ左」

 「あいよ」












ゾロ

あんたの言葉はいつも

優しくて

リアルで

絶対で


それなのに




どうしてこんなにも







私は不安になるの


















血が足りないせいだわ、
ナミはそう自分に言い訳をした。











とりあえず、こいつの背中は熱いから


今のところは大丈夫







今さらですがアラバスタおんぶ編。
時代を遡るmariko。
よーし次はアーロン編だな!!!(笑)。

2005/04/21

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